更新日 2017年05月01日

営業~売上までの期間が長い業界で正確に業績予測する方法

業績管理ツール

ブライダル業界をはじめ、人材紹介業、不動産業界など、営業活動を行ってから売上が計上されるまでの期間が長い業界では、その期間をきちんと考慮した業績予測を行わないといけません。特に上場企業では年次予算を公表していますから、それに対する進捗はできるだけ正確に把握しておきたいものです。今回は、いつの営業活動の成果が、いつの売上となるのか、その関係性を考慮した業績の予測ツールについて、ブライダル業界を例に書いていきます。ちなみに、「結婚式場運営者」の視点での記事になります。

※営業活動から売上までの期間って?という方はこちらの記事をご覧ください。

ある1ヶ月間に成約するユーザーの挙式月はバラバラ

例えば、4月の1ヶ月間の成約が20組あったとして、その成約者リストを以下のようなエクセル、もしくはシステムで管理している式場は多いのではないでしょうか?。

【4月】成約者リスト
No 成約日 名前 挙式日
1 2017/4/1 A様 2017/10/8
2 2017/4/1 B様 2017/11/11
3 2017/4/2 C様 2017/12/9
4 2017/4/2 D様 2017/8/6
5 2017/4/8 E様 2017/9/3
6 2017/4/8 F様 2018/4/8
7 2017/4/9 G様 2018/3/10
8 2017/4/9 H様 2018/1/28
9 2017/4/15 I様 2017/11/25
10 2017/4/15 J様 2017/9/30
11 2017/4/16 K様 2017/10/15
12 2017/4/16 L様 2017/11/19
13 2017/4/22 M様 2017/12/2
14 2017/4/22 N様 2018/2/11
15 2017/4/23 O様 2017/12/10
16 2017/4/23 P様 2017/11/18
17 2017/4/29 Q様 2017/10/1
18 2017/4/29 R様 2018/1/27
19 2017/4/30 S様 2017/11/5
20 2017/4/30 T様 2017/12/9

このリストを棒グラフで表すと以下のようになり、見てわかるように同じ一ヶ月間に成約いただいた方でもその挙式月はバラバラであることがわかる。
1ヶ月の成約の挙式月にはばらつきがある
この分布は私が適当に割り振ったものですが、ある月に結婚式を検討しているユーザーがおおよそ何月での挙式を検討しているかは、自社のデータがきちんと取得できている式場や会社であれば、過去の実績データから予測することは可能です。5月であればこれくらいの分布に、6月であればこれくらいの分布に・・・、と12か月分のデータを取得できれば年間を通じて精度高く予測することができます。主観ですが、マクロなデータとしての分布は毎年大きくずれることはないと思いますし、東北や北海道のように冬は結婚式をほとんどしない地域や沖縄や軽井沢などのリゾートウエディングを除き地域差もあまりないと思います。ただし、会費婚や以前のすぐ婚(現ハナユメ)など、直近希望のユーザーを対象にした媒体や紹介サービスと契約した場合などは分布が前の方に偏ることがあります。

ある1ヶ月間に挙式をするユーザーの成約月はバラバラ

では一方、今度はある一ヶ月間の挙式について見てみます。

【6月】挙式者リスト
No 挙式日 名前 成約日
1 2018/6/3 A様 2018/1/10
2 2018/6/3 B様 2018/2/10
3 2018/6/3 C様 2017/12/9
4 2018/6/4 D様 2017/8/6
5 2018/6/4 E様 2017/9/3
6 2018/6/4 F様 2018/4/8
7 2018/6/10 G様 2018/3/10
8 2018/6/10 H様 2018/1/28
9 2018/6/10 I様 2018/1/20
10 2018/6/11 J様 2017/9/30
11 2018/6/11 K様 2017/10/15
12 2018/6/11 L様 2017/11/19
13 2018/6/17 M様 2017/12/2
14 2018/6/17 N様 2018/2/11
15 2018/6/17 O様 2018/2/1
16 2018/6/18 P様 2018/1/21
17 2018/6/18 Q様 2017/10/1
18 2018/6/18 R様 2018/1/27
19 2018/6/24 S様 2017/11/5
20 2018/6/24 T様 2018/1/28

成約者リスト同様、こういった形でエクセルやシステムで挙式者の一覧を管理している式場も多いと思います。このリストを棒グラフで表すと以下のようになり、やはり成約月にばらつきがあることがわかります。
挙式月ごとの成約月はばらつきがある
このデータも適当に割り振った分布ですが、過去データを元に分析をかけてもある程度は精度高く予測することが可能だと思います。ただし、結婚式の場合は式場のスタイルによっては天候の影響をかなり受けるので、ゲストハウスのように屋外を使った演出が多い式場の場合は梅雨時の6月や冬の1月などは挙式が入りにくかったりします。逆にビルインタイプの式場であればあまり天候の影響は受けにくいので、月によるばらつきはそんなに大きくはならないでしょう。

成約月と挙式月のつながりを一つにまとめたツール=階段表

ここまで「成約月ごとの挙式月の分布」と「挙式月ごとの成約月の分布」について書いてきましたが、この2つをまとめたものが階段表です。
階段表の仕組み
成約月ごとの分布を縦に並べ、挙式月の組数を縦に合計すると、その挙式月の合計挙式数になります。上記の図で言えば、11月の挙式数は4月の成約数と5月の成約数と6月の成約数と・・・の合計になる、ということです。
例えば今が3月末日だとして、11月の売上はいくらになるか予測せよ、と上司から指示を受けた場合であれば以下のように考えます。
①3月末日時点の11月の挙式数:5組
②4月の成約目標20組のうち11月挙式の数:3組
③5月の成約目標30組のうち11月挙式の数:5組
④6月の成約目標20組のうち11月挙式の数:4組
・・・
合計:①+②+③+④+・・・=28組
28組×(単価)350万円=9,800万円
②、③、④はそれぞれの月の成約目標と挙式月分布のデータがあれば予測することができますので、あとは11月のおおよその単価の見込みさえあれば売上予測を出すことができます。ここまではスライドを使って概念的な部分を中心に書いてきましたが実務ではエクセルもしくはカスタマイズしたBIツールなどを用いて予測を出すことになるでしょう。
階段表のエクセルイメージ
こちらはエクセルを使って実務で使うツールをイメージして作ったもので(数値は適当)、C列の成約数に挙式月ごとの分布割合を掛け合わせてD列~O列の数値を計算しており、17行目の「合計」はそれぞれの列の4行目~16行目の合計数になっています。このように簡易的なものであれば、「挙式月の分布割合のデータ」と「月別の成約目標数」さえあればすぐに作ることができます。
※本当はエクセルをダウンロードできるようにしたかったのですが、やりかたがよくわからなかったので今回はキャプチャで。。。

階段表を使って売上予測をする最大のメリット

ブライダル業界で式場を運営している会社の方とお話させていただいた機会はそれなりにありますが、「当月成約の進捗」に対する意識はどこも極めて高いものの、「未来の売上予測」まできちんと対策を講じているところはあまり多くないような印象を持っています。

  • そもそも業績管理の中の項目に売上予測が含まれていない
  • なんとなく売上予測をしているが、根拠となるロジックがなく担当者の勘に頼っていて精度が低い

など様々な理由はあると思いますが、目先の営業の数字だけを追っていてもきちんと売上に結びつく施策をクリティカルに講じていくことは難しいと思います。なぜかというと、気付いたときにはすでに手遅れであることがほとんどだからです。
結婚式の単価は契約時の見積りと最終見積りで平均して80万円~100万円ほど差がある(高くなる)のが普通ですから、実際の売上に近しい金額の予測をできるのは最終見積りが出てきてから、となります。見積りがその金額になるのはだいたいどの式場も3回目か4回目の打合せが終わった後ですから、挙式日の1ヶ月前くらいでしょう。このタイミングで、「あ、あと800万円目標に足りないぞ・・・」となっても、そもそも1ヵ月後に結婚式をしようとするユーザーはほとんどいませんから、組数を増やすことも無理、単価もすでに上がっていてこれから伸ばすことも無理、つまり打つ手がほとんどないのです。この状態になって初めて「あれ、成約(式場によっては受注とも言う)はよかったはずなのにおかしいな・・・。」と気付いても遅いのです。
こうならないために必要なのが正確な売上予測であり、正確な売上予測ができる最大のメリットは「早く手を打てる」ことなのです。先ほどのような状態になることをもし半年前に気付けていれば、

  • 売上が未達になりそうな月限定のキャンペーンを打って集客し、組数を増やす
  • 時期が特に決まっていないユーザーに対して積極的にその月へ誘導する営業をする
  • すでに成約済みのユーザーへの二次会の販売を積極的にかける

など、組数を増やすという観点でも、単価を上げるという観点でも施策はかなりあったはずです。それを見落とし、時すでに遅しの状態にならないためにも、階段表などを用いての売上予測は成約の進捗確認と同等もしくはそれ以上に重要な業績管理なのです。

ケーススタディ

最後に一つ、ケーススタディを書いてこの記事のまとめとします。
売上がショートした階段表
先ほどのエクセルに売上目標(20行目)と差異(21行目)を追加しました。この階段表を見ているのは2017年3月末日で変わらずです。K21セルにあるように、このままの予測では7ヵ月後の11月の売上が2,200万円未達になりそうです(ちょっと極端な例ですが、わかりやすくするために今回はご了承ください・・・)。
もしこの記事を読んでいるのが式場運営に携わっている支配人やマネージャ、リーダークラスの方であれば、読み進める前に少し考えてみてください。
 
さて、私ならこう考えます、というのを以下書いていきます。

1.方針を決める

まず、ショートしそうな2,200万円を埋めるための方針を考えます。
組数を増やして達成しようとするのであれば、平均単価は350万円なので、2,200万÷350万=6.26・・・となり、あと7組挙式組数を増やすことが必要です。一方、単価を上げて達成しようとするのであれば、この月の挙式組数は28組なる見込みなので、2,200万円÷28組=78.6万円・・・となり、1組あたり79万円の単価アップが必要です。その両方であれば、6組増やして単価を3万円上げる、でも売上目標に届きます。このようにあらゆるパターンをシミュレートし、式場の特性やスタッフの力量によってどの方針で行くか実現可能性の一番高いものを選択すべきと思いますが、今回は「組数を7組増やす」ことで売上達成を目指すことにします。

2.組数を7組増やすための施策を洗い出す

11月の挙式組数を6組増やすことが決まりました。ここでよく勘違いされる方が多いのですが、今から1ヶ月間(このケースで言えば2017年4月)の成約を+6組で達成しても11月の挙式組数が+6組にはなりません。しつこいですが、成約月ごとの実績と挙式月ごとの実績に直接的な相関はないのです。仮に2017年4月の成約目標を+6組で達成しても+6組分の挙式が2018年5月とかであれば会計年度も変わってしまいますし(3月末決算を想定)。
さて、これから11月の挙式組数を、通常獲得できるであろう成約にさらに6組増やさなければならないわけですが、成約を増やすためには「来館数を増やす」か「成約率を上げる」かしか方法はありません(詳細はこちらの記事参照)。
11月希望の来館数を増やすための方法としては以下のような案が考えられます。

  1. 11月限定のキャンペーンをゼクシィなどのメディアにプラン掲載する。
  2. 11月限定のキャンペーンLPを制作し、リスティングやSNS広告などで集客する、式場ホームページから期間限定でリンクをはる。
  3. 11月希望者向けの特別なフライヤーをつくりエージェントに訪問して周知する。
  4. 11月以降を検討しているが特に希望時期が固まっていないユーザーに積極的に11月の案内をする。
  5. 来店時のアンケートに11月専用フライヤーをはさんでおく

発想として、11月を検討している方の来館数を増やすというのと(1.~3.)と、来館してくれたユーザーの希望時期を11月に寄せる(4.~5.)という2つがあります。どれが最適化は正直やって見なければわからないですが、成果が出て売上予測が達成見込みになるまで全部やり続ける、という姿勢は大切かと思います。
一方、11月希望の成約率を上げるための方法としては以下のような案が考えられます。

  1. 11月限定のお得なキャンペーンを打つ
  2. 成約率の高いプランナーが接客に出るようにアサインを変える
  3. 式場内の装飾を秋仕様に変える(11月の挙式をイメージしやすくする)
  4. 11月の挙式事例集などの接客ツールを拡充する

根本的な解決策としてのプランナーの研修をする、などは時間がかかるので今回は割愛しています。上記1.~4.まで他の月の成約率が落ちるのでは?というリスクは若干ありますが、それでも何もしなければこのまま未達になってしまうので、優先順位をつけてでもやるべきことはまずやってみる、というのが大切です。

3.具体的な施策が見えたらとにかく実行

来館数を増やす、成約率を上げる、そのための施策を洗い出したらとにかく即実行です。特にお金がかからずリソースもかからない施策はすぐにやりましょう。式場の責任者である支配人のような立場であれば、有料施策はマーケティングや企画などの本部機能に依頼を出し、フライヤー等の制作物はすぐに自分たちで作る。式場で働くスタッフへは、なぜこの施策が必要なのかその背景と数字的根拠をきちんと示した上でタスクスケジュールを切って担当者の設定と納期の設定をすることが必須でしょう。
 
このように
数値の見通しを確認する→その改善のための施策を数値的根拠から導く→実行のためのスケジュールとタスク管理を行う→実行する→見通しをまた確認する
サイクルをきちんとまわしていくことで、式場の業績の安定を保っていくことが重要だと思います。そのためにもまずはきちんとした売上予測を立てられる状態にあることが最初なので、知見としてこの記事が少しでもお役に立てていればうれしいですね。
長くなりました。。
 
おわり。

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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