更新日 2020年03月23日

ブライダル業界の働き方改革、同一労働・同一賃金について具体的対応を考えてみる

42_同一労働・同一賃金について具体的対応を考えてみる

※寄稿記事です。

「働き方改革」は、一億総活躍社会の実現に向けて2019年から厚生労働省が主導となり進められています。少子高齢化による生産年齢人口の減少、働く人のニーズの多様化など、今の日本には多くの課題があります。この課題を解決すべく掲げられた働き方改革は、大企業や中小企業といった企業の規模や事業内容に関係なく、全ての企業に対応が求められます。そして、この改革の一環として、2020年4月1日より非正規社員の待遇を改善する同一労働・同一賃金が法制化されます。ブライダルの業界では、契約社員、アルバイト、パートタイム社員、派遣社員という様々な雇用形態のスタッフが働いています。同一労働・同一賃金について、既に対応されている企業も多いと思いますが、どのような対応が必要なのか考えてみました。少しでも参考になれば幸いです。

 

働き方改革の概要

「働き方改革」ではどのようなことが行われているか、まず簡単にまとめます。

  • 原則、月45時間かつ年360時間以内、繁忙期は月100時間未満、年720時間以内にする残業時間の罰則付きの上限設定(大企業2019/4~、中小企業2020/4~)
  • 年10日以上の有給休暇が発生している労働者への有給休暇5日の取得義務化(全企業2019/4~)
  • 勤務後から次の勤務までは少なくとも10時間(あるいは11時間等)勤務間インターバル制度の努力義務(全企業2020/4~)
  • 月に60時間を超えた残業時間の割増賃金の割増率を50%以上とする割増賃金率の中小企業猶予措置の廃止(大企業は適用済、中小企業2023/4~)
  • 従業員の健康管理に必要な情報の提供を義務づける産業医の機能を強化(全企業2019/4~)
  • 正規・非正規の不合理な格差をなくすための、同一労働・同一賃金の適用(大企業2020/4~、中小企業2021/4~)
  • 年収1,075万円以上で専門知識を持った職種の労働者を対象とした労働時間規制や割増賃金支払の対象外とする高度プロフェッショナル制度の創設(全企業2019/4~)
  • 最大で1ヶ月単位でしか適用できなかったフレックスタイム制の適用期間改定(全企業2019/4~)

ブライダル業界で働く私達にとって一番身近に感じるものは、有給5日間の取得義務化ではないでしょうか。勤務形態がシフト制のブライダル業界では、会社として有給取得奨励日を設けるなどして対応していることが多いでしょう。

同一労働・同一賃金とは?

同一労働・同一賃金の概要

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
厚生労働総HPより

この同一労働・同一賃金を元に2020年4月1日に、「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」が改正されます。(中小企業のパートタイム・有期雇用労働法は2021/4~)

正社員と同じ仕事をする非正規社員に正社員と同様の待遇を求めるものです。現時点で、正社員と契約社員やパート社員の待遇に格差があり、それが「同一労働同一賃金」のルールに違反すると判断される場合は、企業は契約社員やパート社員の待遇を見直すことが必要となります。

具体的な待遇の見直し

正社員以外に、契約社員・アルバイト・パートタイム社員といった雇用形態のスタッフがいれば、「パートタイム・有期雇用労働法」の改正に伴い対応が必要となります。具体的な対応手順は下記のようになると思います

  1. 現状を把握する
  2. 待遇差がある場合は、その待遇差を合理的に説明できるかを検証する
  3. 合理的に説明できない場合は待遇差を解消することが必要

現状を把握する

例えば、専門学校卒業・社会人経験が少ない・ブライダル未経験者といった理由で採用時の雇用形態を契約社員としている会場もあるでしょう。その場合、まずは会場に所属する全スタッフの雇用形態(正社員、契約社員、パート社員など)を確認します。そして、正社員と同じ業務を担う非正規社員がいる場合、正社員に支給されている賃金項目で非正規社員に支給されていない/支給額が異なる、待遇が違うものを確認します。例えば、賃金や手当でれば転勤手当、資格手当、インセンティブ、待遇面であれば慶弔休暇などがあげられます。

待遇差がある場合は、その待遇差を合理的に説明できるかを検証する

現状把握で待遇格差があるものがあった場合、合理的な説明ができるか確認します。例えば、正社員のプランナーは全国転勤があるが非正規社員のプランナーは転勤がない、などがそれにあたります。

合理的に説明できない場合は待遇差を解消する

合理的説明ができないようであれば、正社員と非正社員の業務内容や責任の有無を変更、就業規則の変更するなどして、正規社員と非正規社員の違いを明確にすること、それが難しいようであれば非正規社員を正規社員に登用することを考えることも必要となるでしょう。

 

ブライダル企業で今後考えられる影響

同一労働・同一賃金となるとどういった影響があるのでしょうか?

結婚式場運営への影響

  • 人件費の増加する為、人員や採用計画の見直しが必要になる
  • 正社員の手当・待遇等の廃止も検討しなければいけないかもしれない

正社員の手当や待遇等の廃止は、慎重な対応が必要です。特に正社員に不利益な変更は、従業員代表と話し合いを重ねるなど理解を求めることが必要な為、相当な労力を要します。また、人員数の見直しを行う場合はオペレーションの変更も考える必要が出てくるでしょう。

働く人への影響

  • 賃金が上がる
  • 雇用形態が変わる
  • 非正規社員として働いていた場合、雇用継続が危ぶまれる可能性もある

非正規社員で働いていた人にとってへはモチベーションが上がるといった反面、繁閑がはっきりしている会場では人員の見直しなど行われるかもしれません。そうなった場合、安定した雇用が見込めないこともあり得るでしょう。

 

同一労働・同一賃金についてのまとめ

・2020年4月1日に、「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」が改正される(中小企業のパートタイム・有期雇用労働法は2021/4~)
・法改正の前に下記を行う

  1. 現状把握
  2. 待遇差がある場合は、その待遇差を合理的に説明できるかを検証する
  3. 合理的に説明できない場合は待遇差を解消する為、就業規則等を変更する

・改正後の影響で、人件費増加に伴う人員数の見直しや採用方法の変更(自社の直接雇用)を検討する必要がある
この法改正に対して、準備が完了しているという企業は少なく、検討中/情報収集中という企業も多くあります。皆さんの参考になればと思い、対応策を考えてみました。ブライダル業界で働く人が少しでも働きやすい環境になることを願っています。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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