更新日 2021年12月14日

ウェディングプランナーの生産性を上げるために必要なこと

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

一般的にブライダル業界(の特に現場)は激務だと言われていますが、働き方改革もあり昨今では長時間労働は少しずつですが改善されつつあります。ただ、労働時間が短くなったからと言って業務量が減るわけでもないので、新たな人材の採用がなければ今までより高い生産性で業務を遂行することが求められます。そこで、今回の記事ではウェディングプランナーの生産性を上げるために必要なことをまとめます。

 

そもそも「生産性」って何?

ここ最近、長時間労働への課題意識の高まりから、労働時間の短縮、業務効率化がより注目されるようになってきています。その中でよく聞かれるのが「生産性」という言葉です。生産性を全く意識していないという会社はないと思うので、ほとんどの方が多かれ少なかれ労働の生産性を意識していると思いますが、その定義や実施施策には会社によってかなり差があるようです。

例えば、残業抑制をするために平日の早帰りを推奨するというのも1つの施策であり、これは労働時間は減りますが1時間当たりの業務量が増えるかどうかはまた別の問題ですよね。

生産性の定義は

  • 労働生産性=生み出した付加価値÷会社が投下した人的リソース

であると言えます。ちょっとわかりにくいので簡略化すれば

  • 労働生産性=売上÷人件費

となり、1人当たりいくら稼いできたの?となります。

極端な例ですが、同じ業態同じような原価構造をしている場合に、

  • 社員1人当たり年間1,000万円の売上のA社
  • 社員1人当たり年間3,000万円の売上のB社

この2社であればB社の方が生産性は高いと言えるでしょう。結婚式場で例えるなら

  • プランナーが10人いて年間5億円の売上のA会場
  • プランナーが10人いて年間10億円の売上のB会場

ならB社の方が生産性が高い、というのと同じですね。

つまり「会社として生産性を高めなければいけない」という経営課題がある場合は、まず目標となる数値と定義をきちんと決めてから施策立案を始めることが重要です。社内プロジェクトとして立ち上げるにしろ外部のコンサルタントを活用するにしろ、まず最初のステップとして生産性を明確に定義してから始めるようにしましょう。途中で議論が散らかったときも「それって1人当たりの売上向上に繋がるんだっけ?」と根本に立ち戻ることができます。

※売上獲得だけが事業運営目的ではない!というご指摘もごもっともですが、今回の記事ではここにフォーカスします。

 

現状のウェディングプランナーの生産性課題

清算を先ほどの定義で考えた場合に、ウェディングプランナーの生産性を高めるために必要なことは、

  • 売上を生み出す活動・業務にできるだけ多くの時間を割り当てられていること

となります。具体的には

  • 新規プランナー=新規接客の時間(成約に結びつくから)
  • 打合せプランナー=打合せ(組単価に結びつくから)

この業務にどれだけの時間を当てられるかがポイントですね。

厳密な統計を取ったわけではないのです、新規接客は1組当たり約3時間なので、月間10接客している新規プランナーは30時間、20接客で60時間、30接客で90時間程度になるはずです。仮に一ヶ月の残業が30時間だとすると、月間労働時間は約200時間になるので、10接客の人は全労働時間の15%しか営業活動に時間をさけていないことになります。

229_新規プランナーが営業に費やしている時間の割合

これを多いと見るか少ないと見るかは個人の感覚によると思いますが、多くの新規プランナーが月間10~20接客程度であることを考えると、せいぜい20%前後くらいしか売上に繋がる業務をしていないということになります。打合せプランナーの業務範囲は会社によって差はあるものの、実際にお客様と打合せをしている時間と考えると同じような感じになるでしょう。

となると、接客以外の時間で何しているの?となるのですが、

  • 顧客情報の入力など事務作業
  • 数字の分析などの業務
  • フェア更新やプラン更新、ブログ書くなどの集客業務
  • ロープレや台本制作などの研修業務
  • 社内会議

といったことが多いのではないでしょうか。もちろん、これらの業務の中でも集客や研修など間接的に売上につながるものもありますが、その業務をしている時間に売上を生み出すことはありません。成果を上げるためには、一番成果に直結しやすいことに最も多くの時間を使う、また成果をあげやすい時間帯に関連した業務を行うことが大切です。

このように考えると、成果=売上に直結する業務により多くの時間を費やせているプランナーは生産性が高く、そうでないプランナーは生産性が低いと言えます。

229_ウェディングプランナーの生産性の違い

ただし、接客時間を増やすと言っても一般的な法人営業などとは違いブライダルは完全に受け営業(お客様が来ないと始まらない)なので、そもそもの集客数がなければ実現は難しいです。なのでそれも込みで、生産性を高めるために具体的にどういうことができるのかを次にまとめていきます。

プランナーの生産性向上のために必要なこと

最終的に1人あたりの売上を伸ばすこと、そのプロセスとして新規や打合せなどお客様と接している時間の割合を増やすことを目的としたときに、改善できる施策をいくつか挙げていきます。

プランナー個人の非生産的業務のリテラシーを向上させる

一番当たり前の話ですが、今まで10時間かかっていた事務作業を5時間でできるようになれば、単純にその分だけ生産性は上がります。

  • 文字入力のブラインドタッチの練習
  • エクセル、パワーポイントの練習
  • 社内システムの使い方の習得

など。地味なんですが、毎日10分でも続ければ1年でかなり早くなるはずです。毎日寝る前にちょっと10分だけストレッチすると1年後には体柔らかくなるのと同じです。直接売上につながるわけではないですが、セルフトレーニングとして早めに取り組んだ方がいいですね。マネージャや管理職であればそういうことに取り組む仕組みを検討してみてもいいでしょう。

簡単なことでも人間は毎日続けることが苦手なので、続けるだけで他のプランナーと差別化できます。やりましょう。

インフラや労働環境を整える

個人の事務作業リテラシーが上がったとしても、PCのスピードが遅い、顧客情報管理がシステムではなく手書き、パートナーとのやり取りが基本電話で抜け漏れが多い、などでオペレーション上に課題があれば生産性向上にも限界があります。例えばコミュニケーションツール1つとっても、FAXからメール、メールからチャットへ、というのが今のトレンドですし、今後も変わっていくと思いますので、業務効率につながるものは積極的に取り入れていくとおいいでしょう。

少し定義を広くとれば、TASCUT(タスカット)などのシステムを導入したいするのもありだと思いますし、接客がなくて家でもできるのであればリモートワークを部分的に許可するなどもありでしょう(顧客情報の扱いなどセキュリティ面の考慮は必須ですが)。

何事も、最初は抵抗があったり一時的に業務負荷が上がることもありますが、慣れれば落ち着くことの方が多いので積極的に取り入れていくといいでしょう。

絶対に社内でやらなければいけない業務でなければ、躊躇なく外部に依頼する

先ほど書いた事務作業やデータ入力などはプランナーがするもの、という固定概念を持っている方も多いですが、別にそんな決まりはないので、新規や打合せなど接客の時間(または接客の時間を最大効率化するための準備の時間)を確保するための業務整理は積極的に行いましょう。具体的な方法としては、

  • アウトソーシングする
  • 派遣社員を活用する
  • 事務用の人員を雇用する

などがあります。固定コストは上がるものの、その分プランナーのパフォーマンスが上がれば十分回収できる程度の上昇になるはずです。

新規来館、打合せの受け入れをMAX化する

これまで3つは非生産的な業務時間を以下に圧縮するかという視点ですが、売上のための時間を確保することも同時に行うことが大切です。

例えば、以下のようなことは起こっていないでしょうか?

  • 社内会議があるので新規枠をブロックしている
  • 新規来館時間や打合せの時間をお客様の希望通りに設定している
  • 打合せを基本土日だけで回している
  • 定休日が週2日あり、新規来館を断っている

など。率直にもったいないです。もちろん、お客様の希望や都合もあるので必ずこちら側の意図通りに新規来館や打合せの予定を組めるわけではないですが、

  • 可能性を最大限に広げて準備しておくこと、
  • できるだけ新規や打合せの時間を分散させて同じ人が幅広く接客できるようにすること

この2つを意識するだけで1人当たりの接客に当てられる時間は大幅に改善することができます(今特に何もしてない状態であればなおさら)。ぜひ、一度見直してみてください。

生産性のKPIを設定して定期的にモニタリングする

「労働生産性を改善するぞ!」と旗を振っても、その成果がどうなっているのかをきちんとモニタリングしていかなければモチベーション高く継続することは難しいです。キーエンスやエスエムエスのようにガチガチにルール化して統制を取るというのも1つの方法ですが、ブライダルだとあんまり合わないんじゃないかなぁと思います。

となると、キチンと可視化して、こんなによくなったよ!というのを見れる状態にして、もっと頑張りたい!と思わせるようなマネジメントや仕組みが必要なので、手当たり次第に始めるのではなく準備もしっかりしてから始めるといいでしょう。

 

ウェディングプランナーの生産性向上についてまとめ

SNS全盛の昨今、企業側が無理な労働を強いるとすぐに炎上してしまいますし、社会的にも長時間労働や強すぎるプレッシャーへの抵抗感が強くなってきています。ブライダルは以前からハードワークだと言われていますので、今後改善をしていきたいと考えている企業は多いでしょう。今回の記事をきっかけに、まずは1つずつ施策に取り組んでいってもらえると嬉しいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

CATEGORY同じカテゴリーの記事