更新日 2020年04月07日

結婚式は誰のためのサービスになるのか?

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結婚したら結婚式をするのが当たり前という価値観はすでに崩壊し、なし婚(挙式披露宴を実施しないこと)層は50%に迫るとも言われています。文化は時代とともに変わっていくものではありますが、ここ20年くらいで結婚式を取り巻く環境は大きく変わってきたと思います。では、これから先の結婚式はどうなるのでしょうか?今回の記事では「結婚式の価格」という切り口から今後のウェディングについて考えてみます。※こちら記事は過去メルマガで配信して反響の多かった記事を一部加筆修正したものです。

結婚式の単価クイズ

今回の記事は突然ですがクイズからスタートします。次から5つの問題を出しますので、回答を考えながら読み進めてください。回答はこのセクションの下の方に書いてあります。
では、いきます。
【問題】
Q1.直近の国内結婚式の平均単価はいくらでしょう?
Q2.下記の上場企業5社の直近の平均単価はいくらでしょう?

  1. テイクアンドギヴ・ニーズ
  2. エスクリ
  3. ブラス
  4. AOKIホールディングス(アニヴェルセル)
  5. アイ・ケイ・ケイ

Q3.日本人の平均婚姻年齢は男性/女性でそれぞれ何歳でしょう?
Q4.平均婚姻年齢の男性/女性の平均年収はいくらでしょう?
Q5.平均婚姻年齢における手取りの平均はいくらでしょう?
 
 
 
少し考えてみてくださいね。
 
 
 
【答え】
A.1:354.9万円
※ゼクシィ 結婚トレンド調査2019調べ
A.2:下記の通り。

  1. テイクアンドギヴ・ニーズ:393.5万円
  2. エスクリ:374.8万円
  3. ブラス:385.4万円
  4. AOKIホールディングス(アニヴェルセル):437.8万円
  5. アイ・ケイ・ケイ:411.1万円

※各社IR資料より
A.3:男性:33.3歳/女性:31.1歳
※厚生労働省 平成 28 年度 人口動態統計特殊報告
A.4:男性:483万円/女性:375万円
※doda
A.5:男性:378万/女性:298万円
※は情報ソースです。
 
さて、どれくらい当たりましたか?
ちなみに、各問の回答を1つのグラフにまとめると次のようになります。
結婚式の平均単価と結婚平均年齢時の年収&手取り
 

結婚式単価と平均年収

上記の結果を見てどのように感じますか?全国平均の組単価は男性の年間手取り額とほぼ同額で、労働時間換算すると二人が約1000時間ずつ働いて稼いだ給料を一度の結婚式(約3時間)で使い切る計算になります。もちろんご祝儀や親からの援助もあることが多いので新郎新婦の全額負担ではないですが、単純に労働している時間の約700倍濃度の体験を結婚式で提供できて初めてコスパが合う計算になります。
抽象的な概念なので聞いてもピンと来ない方も多いと思いますが、なかなかにすごい比率だと思いませんか?

  • 仕事700時間の対価=結婚式の1時間の費用

これ、日本の平均年収の人でもこの時間換算比率なのです。そうかなるほど700倍か!とか考えて結婚式をするかどうかを決める人はまずいないですが、感覚的にこのお金があるならこんなことできるな…みたいなのはこれくらいの尺度で考えているはずです。
ブライダルの仕事をしていると見積りの金額も見慣れてしまってただの数字に感じてしまう方も多いとおもうのですが、結婚式の単価は今の社会環境と照らし合わせてもかなり高いと言えると思います。
 

結婚式場はこれから何を目指すのか?

ブライダル上場各社のIR資料にある単価に関する方針を見ると、おおむね高単価を「好調」と表現し、今後も商品力強化による単価アップを継続して目指す、のような内容となっています。投資家向けの資料なのでそう書くのが当たり前ですし、株主はもとより社員の生活のためにも企業としての業績向上と安定化は必須課題と言えるので、この方針自体が間違っているわけではありません。
一方、金銭的な面でこれだけユーザーの負担になっていることは現時点ですでに事実であり、もし各社の方針がうまくいってしまうと、金銭的な負担は今後もどんどん乖離していくでしょう。そうなると、もはや平均的な年収世帯のカップルであっても結婚式を挙げるために二人の年収合計の60%近くを費やさなければならず、平均年収カップルでさえ結婚式は挙げたいけど経済的に無理で…、という状況にそう遠くない将来なっていくと思います。
そうすると、さらになし婚が増えて平均年収以上の所得のカップルの獲得競争が激化し、さらに単価が上がり…、というサイクルが続いていくことになります。このサイクルが今からもう2周くらいすると、結婚式は完全に富裕層しかできない商品になるんじゃないかな。
「あの人、こないだレクサス買ったんだって」
「え、まじ、めっちゃ金持ちじゃん」
と同じく、
「あの人、今度結婚式挙げるだって」
「え、まじ、めっちゃ金持ちじゃん」
こんな会話が同じくらいの感覚でされるようになるのかな、と。
 

結婚式の高級商品化が招くご祝儀文化の崩壊

個人的な意見としては、こういった流れ自体は悪いものではないと思っています。
文化的な背景はあるものの、結婚式って挙げなくても生活に致命的なダメージを受けるものでも不便になるものでもないですし、個人の価値観の多様化が加速していくこれからの時代の中では、挙げる人も挙げない人もいてそれが普通だよね、くらいの感覚の方がマッチしているのかもしれません。
ただ一点、なし婚層が増えて結婚式を挙げる人と挙げない人の割合が逆転したときに最初に崩壊するだろうと思っているのが「ご祝儀文化」です。

  • もし自分が結婚しても経済的に結婚式を挙げられない
  • 結婚式を挙げる人は自分よりも富裕層(だと考えている)
  • 自分よりも金持ちに呼ばれるとさらにお金払わなければいけない

このような人が結婚式に呼ばれて、自分より富裕層に対して3万円という大金払ってまでお祝いしたいと思いますかね?私の心が狭いだけかもしれませんが…。
もちろん人にもよると思うのですが「呼んでくれるな」みたいな空気感も一定出てくるんじゃないかなと。で、欠席する→ご祝儀集まらない→今のブライダル業界の市場規模の7割はご祝儀でできているのでビジネスモデルが崩壊する→自己負担だけで開催できる超富裕層に限定される、というシナリオが現実味を帯びてくる。
となると生き残るのは超富裕層を相手にできる結婚式場やプロデュースチームだけ、他は残されたわずかな結婚式憧れ層を壮絶に奪い合う、みたいな構図になっていく…。ブライダル業界でお仕事させていただいているのにこんな未来予測なんて書くなよと思われても仕方ないですが、この先10年とか20年くらいのスパンで考えると起こっても不思議ではないかなと思っています。
 

今のブライダル業界に必要なはずなのに抜けている視点

もしこのような流れが少しずつ目に見えないくらいのスピードで進んで行ってしまうとしたら、その時にどう考えたらよいか?今のブライダル業界で多くは語られていない視点について最後に書いていきます。
単価アップや組単価について議論していると必ず出てくるのが「提供している商品の価値をもっと高めてしっかりお客様に伝えましょう」という話。要するに価格を下げるのではなく価値ある商品なんだよ結婚式は、っていうのをちゃんと伝えましょうという視点です。これはこれで大事な視点です。この視点がないとただのトークスクリプト丸暗記営業マンになってしまいますからね。
ただ私がもう1つ大事だと思っているのは「同じ金額・同じ付加価値の商品でも相手の年収が違えばその重さが違う」という点です。
例えば、70名施行で15,000円のコース料理から18,000円へ単価アップを図りたいときに(打合せプランナーならよくあることですよね)、

  • それぞれのコース内容にこのような違いがあり
  • その違いによってゲストがこういった満足をしてくれるから
  • 結婚式の満足度、引いてはゲストからお二人への満足度も上がるので
  • ぜひ18,000円のコースはいかがですか?

と、こんな感じで提案すると思います。商品の違いとそこから生まれる付加価値、結婚式での料理の大切さや会場のこだわりなどをプレゼンする。特に違和感はないと思います。
ここまではいいんです。
ただこれ、年収1,000万円の人に対してこの提案をする場合と、年収300万円の人にこの提案をする場合では相手が感じる重さが全然違いますよね?というところまで考えている方と出会ったことがありません。
見積り金額では同じ20万円の単価アップですが、年収1,000万円の人にとっては1週間分の給与相当なのに対し、年収300万円の人にとっての1ヶ月分の給与相当なので、重さが全然違いますよね?(もちろん、年収と金銭感覚は必ずしも比例するわけではないので人によって違いことは全然ありますが…)
つまり、15,000円から18,000円のコースに変更すると、目の前のお客様の一ヶ月分のお給料がそれにすべて使われることになります。フォアグラと牛フィレの入ったコースに変更すると1ヶ月分の給料が全部飛ぶんですよ。そりゃ美味しいし華やかになるしゲスト評価も高いでしょうが、本当にそれだけの価値があると思って売ってますか?
相手の立場になって考えるというか、結婚式で提供する価値が相手にとってどの程度の重さに相当するのか、この視点を持って考えることがこれからは経営も管理職もスタッフも大切になるんじゃないかなと思います。
 

結婚式は誰のためのサービスになるのかについての考えまとめ

フォトウェディングやスマ婚に代表される格安系ウェディングプロデュースをはじめ、小さな結婚式など業界全体で見れば商品バリエーションは増えてきているものの、まだまだこれまでのThe・結婚式が主流だと言えます。ブライダルの大手企業は既存事業と顧客を食い合うリスクがあるので低価格系サービスには手を出しにくく、ベンチャーや中小企業がその領域を攻めるもののスケールには時間がかかる、という状況だと思うのでこういった構造なので本当に多様化するにはまだ時間がかかりそうです。
業界も変わってきてはいますがユーザーも変わってきています。これからはこれまでの常識にとらわれない発想で事業を進めていくことが大事なのかな、と。極端な話、単価2,000万円以上の結婚式専門のプロデュースサービス、みたいなのがあってもいいと思うんですよね。振り切って。
という、とりとめもないまとめですみません。
 
おわり
 

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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