
昨今のコロナウィルスの影響もあり、不要不急の外出を避けることやテレワークの推奨など、各企業でこれまでとは異なる働き方を推進されるようになってきています。結婚式場の仕事はこれまで必ず式場に出社して対面して接客するものでしたが、こういった社会的な背景やテクノロジーの進化なども踏まえると今後はブライダルでもリモートワークの導入、対お客様のオンライン接客は人がっていくのではないかと思っています。そこで、今回の記事では結婚式場探しから結婚式準備までをネット完結することは可能かについて考えてみます。
目次
結婚式準備はネットで完結の時代になる?
上がり続ける組単価となし婚率
こちらのグラフは下記の数値を表したものです。
- 結婚資金年齢(男性33歳/女性31歳)の平均年収
- 上場しているブライダル各社のIRで公表されている平均単価
- ゼクシィ結婚トレンド調査2019の結婚式の平均単価
結婚式の平均単価はここ数年は高止まりしている印象はあるものの、長引く景気の停滞と格差拡大もあり経済的に新郎新婦の大きな負担となっていることは事実だと言えます。また、こういった理由もありなし婚率も年々上昇しており、多くの調査では約半数が挙式披露宴を挙げていないと言われています。
こういった経済的な理由からなし婚を選ぶカップルに結婚式を挙げてもらいたい、という思いから各社様々なサービスを企画・展開しているものの、まだ抜本的な改善には至っていません。
ライフネット生命の事例
ちょっと話は変わりますが、ライフネット生命をご存知でしょうか?2006年に創業した日本初のネット生保専業の会社で、それまで対面営業が主流だった保険業界においてネット販売を導入し、店舗費や人件費を大幅に減らすことで従来より大幅に安い保険料で保険商品を提供できるようになりました。
詳しい内容はこの記事では割愛しますが、ちょっとググればたくさん記事も出てくるので興味のある方は調べてみてください。
ウェディング領域でもこのモデルを取り入れることは可能か?
もし同じような理屈で「ウェディングネット」のようなサービスを作ることは可能なのでしょうか?原理的には下記のようなイメージになります。
結婚式場の場合はリアルの店舗を持たないという選択肢は取れないので店舗費が大幅に減ることはありません(それでも事務所やスタッフ用の付帯設備を用意しなくていい分多少は費用を抑えることはできるかもしれませんが…)。それに対し業務効率化をすることで人件費は大幅に減らすことができる可能性が高く、またその効率化がお客様にとってメリットがあればそれが集客につながることで広告宣伝費を抑制することもできる可能性があります。
では次から、このようなモデルを実現させるためには各接客フェーズでどのようなオペレーションを組めばよいか、どんな技術が必要になるのかについて考えていきます。ちなみに、簡単にこんなシステムが必要だろうなぁという想定は書きますが、実現可能性等はこの記事では深くは検討しないのでご了承ください。
式場への申込みまでのフローをオンライン化
結婚式場に申し込むタイミングで新郎新婦と式場側が契約を交わさなければいけないのは主に下記の項目です。
- 日取りと時間
- 使用する会場(チャペル、バンケット)
- 人数
- 選択商品
- 見積り金額及び割引確認書の申し込み時点での確定
- 規程についての確認
- 申込金決済
上記一連の流れを完結できるためのウェブサイトが必要です。その際のユーザー導線はサイト来訪後に
- 会場を選択する
- 日取り選択する
- 人数を決定する
- パッケージ化されたプランを選ぶ
- オプションアイテムの調整する(不要の場合はスキップ)
- 見積り金額を確認する(割引額含む)
- 契約内容を確認する
- 申込金決済
- 申し込み完了
こんな感じになると想定しています。これを全部ウェブ上(オンライン)で行えればOKですね。
ユーザーがほんとにこれで申し込むかどうかはさておき、機能的には作れそうな気がします。ネックになるのはやっぱり会場を見たい、試食したいニーズだと思いますが、STEP1の会場を選択ページでのコンテンツを充実させれば特定の属性に対しては意外となんとかなるんじゃないかなと思っています。現にリゾ婚サービスは現地を見ずに決めているわけなので。
これが実現すると新規プランナーはいなくてよくなりますね。その代わりにサイトの使い方や不明点をオンラインチャットで質問できる機能を用意し、その対応をするカスタマーサポート(ヘルプセンター)組織は必要になります。
申込後の結婚式準備フローをオンライン化
結婚式場に申し込んでから施行当日を迎えるまでに決まっていなければいけないのは主に下記の項目です。
- 進行を決める
- 人数を決める
- 席次と引出物を決める
- オプション含めたアイテムを全部決める(アイテムごとに期限有)
- 見積りを確認する
- 支払い期限と支払額、支払い方法を確認する
- お支払い
上記一連の流れを完結できるためのウェブサービスが必要です。これはマイページなど管理しないと難しいでしょう。
こんな感じでしょうか。この流れを全部ウェブ上(オンライン)で行えればOKですね。ポイントとしては
- マイページを発行
- ウェディングアイテムを動画でも紹介する
- 基本的にDIYで、カスタマーサポートと悩み相談はオンラインでいつでも可能
- 最新の見積りはマイページからいつでも確認可能
この辺りかなと。オペレーションの設計として「1顧客1プランナー制」を採用するか「1顧客対N人カスタマーサポート制度」を採用するかが大きな分岐点となりそうです。
スタッフがどのように動くかももちろん大事なのですが、このオペレーションを実現するためのシステム開発の要件定義が最も重要な気がします…。
もしこのオペレーションが実現したときのメリット
結婚式オペレーションをオンライン化する、ということは
- 申込までを完全オンラインでできる
- 結婚式準備を完全オンラインでできる
この2つに分けることができます。実現難易度は申し込みまでは何かできそう、結婚式準備(=打合せ)は裏側のシステムが必須なのでかなり時間かかるかも?将来的にはそれを担えるシステムを開発した企業が外販すればいいのでは?と考えられます。
先日バリューマネジメントがプレスリリースを出したように、昨今の状況を受けてオンライン化へ移行する企業は今後も増えそうです。もしこのようなオンライン化が実現すると
- 固定でかかっているコストをカットできるので、その分合理的な低価格を実現できる
- ウェディングプランナーの数を半分くらいにできるので、人件費を抑制できる
- 新郎新婦の移動負担が軽減されるので、めんどくさがりやカップルの集客につながる
- 会場やサービスのブランドが強ければ商圏拡大につながる
- 産休育休から復帰したいブライダル経験人材の活用にも活きる
個人的には、ゲストが多くないリゾ婚やフォト婚などの方がこのオペレーションは相性いいと思うんですよね。逆にオリジナルウェディングしたい!とか徹底的にこだわりたい!みたいなユーザー属性とはあんまり合わなそうだなと思います。
実際に作った場合のプロダクトビジョンなど
もしこのオペレーションが実現し、システム&オペレーションをパッケージ化した商品として業界内に販売する場合、
- 「経済的な理由で結婚式の夢をあきらめる人を0に」のような対カップル向けのビジョン
- 「ブライダル人材が長く幅広く働ける多様な環境を」のような対業界向けのビジョン
この2つを目指したプロダクトであるのような感じで出していくのかな、と思います。
ネット完結のウェディングサービスについての考察まとめ
仮にこういったサービスができたとして、カップル全員がこのサービスを使うとは思いません。ただライフネット生命が現在も一定層の支持を得ていることを考えると、目指すスケールを間違えなければ実現は可能だと思います。ただ、式場によってオペレーションが結構異なりますし、内製/外注でも仕様が変わってくるので、大手企業が自社サービスとして開発→実績が出る→他社式場へもライセンス提供、というのがもしできるとしたらこんな流れかなと思います。
おわり