更新日 2022年04月07日

「即決」か「仮予約」か論争に終止符を打つ新しい営業スタイルを考えてみる

0513_「即決」か「仮予約」か論争に終止符を打つ新しい営業スタイルを考えてみる

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

即決新規はお客様想いじゃない!でも仮予約していたら即決会場に負けるよ?など、いまだに様々な意見や考え方がある新規営業スタイルどうする問題。今では即決している会場の方が多いんじゃないかなと思いますが、これが正解というものもないのでよく議論になるポイントだと思います。さて、今回の記事では「即決」か「仮予約」かのどちらかを選択するというのではなく、お客様も式場側もWin-Winになれるこんな方法はどうですか?という提案記事です。

 

結婚式場新規営業の即決と仮予約について

即決とは?

即決新規は結婚式場に始めて来館した日にそのまま契約を促す営業スタイル。一般的な新規接客は約3時間~5時間ほどなので、その短時間でお客様のマインドを高め成約まで持っていくためには高い営業力が必要です。また、「当日ご成約特典」のように今日決めてくれたらいくら割引します、という特典を使って促すケースも多いですね。

仮予約とは?

仮予約新規は結婚式場に始めて来館した日には成約を頂かず、一週間~二週間ほどの期間を設けてそれまでに最終回答を頂く営業スタイルです。仮予約からお客様の意思決定までの間は施行枠をブロックしておくのでその間に希望日時が埋まってしまったということは起こりません。

営業スタイルの違いとメリット・デメリット

①お客様へのやさしさ

即決新規はスキルの低い営業が接客すると強引に成約を迫ったり長時間拘束したり当日成約特典が100万円になったりいびつな状態になりがちです。それに対して仮予約の場合は当日リリースを前提としているのでそこまで強烈に結論を迫る会場はありませんので、一般的には即決は営業マインドが強く仮予約はお客様想いだ、と考えている人が多いです(個人的にはそんなことないんだけどな、と思いますけど)

②成約率とキャンセル率

あくまで一般論ですが即決会場の方が高いと言われています。もちろん営業力が高いこと(即決してもいいとお客様に思わせるだけの営業技術を持っていること)が前提ですが、

  • 先に即決会場に来館→即決して仮予約会場は来館キャンセル
  • 先に仮予約会場に来館して仮予約→その後比較したいから即決会場へ来館して即決→仮予約会場の仮予約をキャンセル

このように、お客様が両方会場を見て比較しようとするとどの順番で来館しても即決会場で決まってしまうからです。仮予約率と仮予約率からの戻り率の合算が成約率になりますね。

一方、キャンセル率は即決会場の方が高く10%を超えることも珍しくないでしょう。成約の取り方に無理があると改めて帰った後に考え直してやっぱりキャンセルで…、というケースが多いからです。

③施行枠の運用と販売機会損失

即決は成約した段階で施行枠をブロックするので枠運用上のロスは起こりません。一方仮予約は仮予約から成約(or解除)までの期間施行枠をブロックすることになるので、その間にその時間帯を希望する人に販売することができません。

そもそも枠の稼働率が50%を切っているような会場であればさほど問題にはなりませんが、枠稼働率の高い人気会場の場合、仮予約からの戻り率が低いとここの販売機会損失がけっこう業績に影響してきます。

④値引額

「当日ご成約特典」など即決を促す際に特典を付けることが多いので、即決の方が値引きが多くなりがちです。

513_【営業スタイル】即決と仮予約の違い

お客様に寄り添うなら仮予約、業績を重要視するなら即決、という考えがマジョリティな気がします。ただ、これってどちらかを選ばなければいけないとか、お互いのネガティブな面をアラ捜しして指摘しあうとかそういう論点ではないと思っているので、まずはそれぞれのスタイルのいい面と悪い面をしっかり理解することからスタートすることが重要かなと思います。

 

CRMとオンラインセールスの発展

さて、この2つの営業スタイルのどちらがブライダル業界にとって最適なのか?という答えのない論争に終止符を打つべく、今の時代に合った最適な営業スタイルを考えてみたい、というのが今回の記事の趣旨です。具体案の前に、後半出てくる技術やトレンドの考え方について簡単に触れておきます。

CRM

CRMとは「Customer Relationship Management」の略語で、簡単に言うと顧客との関係を管理するマネジメント手法のことです。これまでのように企業発信で一方的に売り込むのではなく、顧客接点での情報を統合管理し、顧客との長期的な関係性を構築、製品・サービスの継続的な利用を促すことで収益の拡大を図ります。

歴史的には1990年代前半に米国で誕生した考え方で、アンダーセン・コンサルティング(現在のアクセンチュア)によって1998年に出版された『CRM―顧客はそこにいる』によって広く知られるようになりました。近年では、システムを使った顧客情報一元管理、顧客の分析データの分析をもとにしたメルマガや架電などのアクション、を通じて顧客との関係を深めていく手法として注目を集めています。

オンラインセールス

オンラインセールスとは、これまでのような対面での営業ではなく、インターネット環境を用いてオンラインで商談ができる新しい営業スタイルです。資料準備は訪問時間などこれまでの営業の無駄をなくすことで効率的に営業することができます。最近ではベルフェイスやZOOMなどパソコン画面で資料共有ができたりカメラ機能でお互いの顔を映し出せるなど、訪問営業と近いレベルでのコミュニケーションも可能になってきています。

このようなオンラインセールスを行うメリットは

  • 商談の訪問時間を劇的に改善できる(特にブライダルの場合はお客様の移動負担)
  • 電話での連絡と比べて資料や画面を共有しがら商談を進めることができる
  • オンライン営業中にそのままでも画面などを見せられる

といった点が挙げられ、特にBtoB営業でKPIの改善事例も出てきています。

 

これからの時代にフィットする結婚式場営業のスタイル案

「結婚式場に初めて来館した日に契約をする」という点では即決ですが、お客様とのコンタクトから来館前のコミュニケーションを密に厚くする、というのが私の考えです。

513_現代の結婚式場の即決営業

現在の即決営業は上記のような流れです。媒体やホームページなどから来館予約をし、実際に来館してからヒアリング、会場案内、アイテム紹介、試食、見積り説明までを行い合意が取れれば約款説明、申込金の受領となり、晴れて成約となります。来館してからここまで約3~4時間ほど。

来館前にほぼ0に近いテンションの状態から一気に情報を提供して100まで持っていき成約に結びつける、というフローですね。この即決スタイルの課題はお客様が短時間で処理しきれる情報量を超えていることと、結婚式場を見たある種の高揚感のある状態で判断を迫っていることだと思います。

この課題を解決するために、下記のようなフローはいかがでしょうか?

513_これからの結婚式場の即決営業

ポイントは5つ。

  • お客様とのコンタクトポイントを来館予約ではなくフォローなど軽くすることでリード獲得単価を下げる
  • チャットなどを用いて結婚式への希望条件などをヒアリングする
  • メルマガや動画配信で自社会場のコンテンツの紹介し、それを含む見積りの説明も行う
  • 実際に来館して行うのは会場案内と試食のみなど、「会場でしかできないこと」に絞る
  • クラウドサインなどを用いてオンライン決済&契約

このフローだとおそらく来館数は減るでしょうが、ウェディングコンテンツと見積りに納得した上で来館するので、成約率は80%くらいになるんじゃないかなと思います。

また、これまでの1顧客対1プランナーの構図から、来館までは1顧客対Nカスタマーサポート、という関係になるのでKPI次第ですがトータルで見れば人件費も下げることが可能だと思います。このように会場に来なければできないことを徹底的に突き詰め、それ以外のことを全部オンラインで完結させることで全体の業務効率化を図ることができると考えています。

このフローを可能にする背景には先ほどのCRMとオンラインセールスの2つ技術・考え方があり、実現までにオペレーション設計とコンテンツ制作に一定コストがかかるところが難しい点ですが、お客様にとっても式場探しの時間を短縮することができるので、Win-Winのスキームになるんじゃないかなと思っています。

 

結婚式場の新規営業のスタイルについてまとめ

ブライダルの営業は「お客様にとって」と「会社業績にとって」の2つの視点で最適な方法を考えなければいけませんが、絶対にこれが正解だ!というものがあるわけではなく、常に何がベストなのかを考え続けることが大切だと思います。今回の記事をきっかけに、これまでの常識にとらわれることなくよりよい営業スタイルを見つけていっていただけると嬉しいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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