更新日 2023年05月24日

ウェディングプランナー経験者はなぜブライダル業界ではなく他業界に転職するのか?

0969_プランナー経験者はなぜブライダル業界ではなく他業界に転職するのか?

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

業界全体で人材不足が叫ばれて久しいですが、なぜ業界内転職ではなく他業界への転職が増えているのかについて考えてみます。

 

ブライダル業界の中途人材マーケット

Wedding Me Careerというブライダル業界特化の人材紹介事業を3年ほどやってまして、業務委託マッチング(Wedding Me Works)に限らず転職希望者の相談・支援も行っています。

この事業を運営する中で、昨年の後半あたりから明らかに感じていることが1つあって、「プランナー経験者の同業他社への転職希望が明らかに減ってきた」と思っています。

その一方、人材不足と婚礼需要回復の背景から企業側の経験者採用ニーズは高まっており、経験者の同業転職希望者は減り、採用したい企業は増えている、と言えます。

つまり中途経験者採用の難易度は格段に上がっている、これが今のブライダル業界の人材マーケットの市況感と見ています。※個人的な見解です。

この背景はなぜなのか?企業は採用するためにどういった取り組みが必要なのか?プランナー経験者のセカンドキャリアとしてはどんなことが考えられるのか?今回はこの辺りをテーマに書いてみます。

 

転職理由が解決しない転職はしない

プランナー経験者が転職を考える理由はある程度決まっていて、以下のような内容が代表的です。

  1. 土日休みがいい
  2. マネージャや支配人など管理職になることに魅力を感じない=キャリアの先が見えない
  3. 営業成果を出しても給料が上がらない
  4. 疲れた、体調崩した、倒れた
  5. 同じことの繰り返しで仕事に飽きた
  6. 倒産した、人間関係が非常に悪い、給料未払いなど現職の会社独自の理由

これらの理由で転職を考える場合、その理由が解決しないと転職しませんし転職先の候補にも挙がりません。それはそうですよね。

しかし、上記1~4の理由はブライダル業界のプランナー職だとほぼどこも解決しないんですよね。もちろん個社単位で見れば様々な対策や取り組みをしている企業もありますが、あまり知られていないので最初から選択肢に入らないことが多い。

そのため、

  • 土日休みの人材業界やIT業界にしようかな
  • プランナーの接客経験を活かしてプレーヤーとしてキャリアアップできる業界にいきたいな
  • 成果によって年収600万円以上を目指せる業界に行きたいな
  • 労働時間やシフトが安定した業界に行きたいな

こうした理由で転職時に他業界に行くことを考えることが多いんだと私は捉えています。実際に転職された人の話を聞いても、ほとんどはこれらの理由に当てはまりますね。

また同業界への転職が視野に入るケースのほどんどは5か6が理由で

  • システマチックな大手結婚式場は飽きたから小規模プロデュースで自由にやりたいな
  • ゲストハウスしか経験がないから他タイプ会場の経験も積みたくてフリーランスになろうかな
  • ブライダルの他職種(マーケや商品企画等)になりたいけど今の会社だとポジションがないからそういう募集探そうかな
  • 仕事自体は好きだけど今の会社がブラックすぎて続けるのは無理

このようなパターンであることが多いと思います。

***

これを踏まえると、企業が中途経験者を採用したい場合は「前職での転職理由がうちの会社だとなぜ解決できるのか?」をしっかりと設計した上で、それを様々な求人媒体やエージェントなどのチャネルでアピールすることが大事だと思います。

  • 仕事内容やスタイルの自由度の高さ
  • 時間やシフトなど働き方の柔軟さ
  • 給与の高さ、伸びしろの大きさ

これらの特徴がない会社は経験者の中途採用は今後もかなり難しくなっていくと思います。

 

優秀な若手ほど受け皿がない

あともう1つ個人的に感じていることがあって、それは「優秀な人材ほど早く業界に見切りをつける」という点。新卒で会社に入社して3年~5年で去っていく人が多いなと思ってます。

まぁ他の業界でも同じだろと言われればそうなんですが、ブライダル業界も例にもれず…って感じで。

優秀な人ほど見切りをつけやすい=転職を考えやすい理由は先ほどの例に加えて、

  • 成果が高いので給与上限に早く達しやすい→こんなに結果出してるのに他の人と給料変わらないと不満を感じやすい
  • 成果が高い人ほど新規/打合せマシーンになりやすく仕事に飽きやすい→会社側はハイパフォーマンスの人にたくさん接客出てほしいのでそういう人員配置をしがち
  • 成果が高い人ほど他の業界でも活躍しやすい→転職活動をしてもオファーをもらいやすい

こういった特徴があるからだと考えています。

抜群の新規実績を持つプランナー経験3年の25歳に年収600万円のオファーを出すブライダル企業を少なくとも僕は知りませんし、成約率70%のプランナー経験者だけどマーケ未経験の人に対してマーケポジションで現状給与据え置き(業界的には高額)のオファーを出す企業もないでしょう。

つまり、優秀な人ほど転職を考えるきっかけが起こりやすく、しかしながら業界内の他企業での解決(=同業界転職)が難しい状況だと言えます。

 

プランナーの仕事を3年で辞めるのはもったいない?

早い人なら新卒入社して約3年で在籍企業の新規や打合せはやり切ったレベルまで行くと思います。そして、先ほど書いたような理由で転職を考え始めるわけです。このような若手に対し、ベテランの方がよく言う返しの言葉が以下です。

「ブライダルの仕事をたった3年でやり切ったと思ってしまうなんてもったいない」

業界歴10年以上の人から見たら、ゲストハウスの新規だけをやり切っても担当・打合せの仕事もあるし、当日の現場を回すことも知った方がいいし、ホテルやレストランとか他のタイプは全然違うし、まだまだやり切ったなんて早いよ。要するにブライダルの仕事はもっと奥が深いし幅が広いものだよ、と。

まぁそうですね。分かります。

ただ一方で、個人にとってはそれらの経験は非連続であり、新しいことを始める割には幅が広がらず、またそれを極めた先に何があるのかが見えないんですよね。

  • あらゆるタイプの会場で新規ができるようになっても、都合のいい有能な駒にしかならないのでは?
  • 新規から打合せ、施行を全部を知っても企業の中でそれを全部一環でやるのは難しいよね?
  • 独立したとしても今重要なのは集客であってSNSってことですよね?新規~打合せまで全部できるようになる意味あります?

などと思ったときに、年収が今より100~200万円高くて土日休みでキラキラしている(ように見える)他業界に魅力に感じるのは、そりゃそうだよねって思いますね。

なので、引き止めたいならもっと別の訴求が必要だと言えるでしょう。伝わる人にだけ伝わればいいと割り切ってしまえばそれはそれでいいのかもしれないですが…。

 

プランナー経験を活かして業界・企業にも貢献する職種を考える

ここまでいろいろ書いてきましたが、現状の業界全体の課題感としては「優秀なプランナー経験者ほど人材流出しやすく、かつその解決策が業界内にほとんどない」ということです。

ブライダル業界で仕事を続けるまたは業界に戻ってくるためには以下の条件が揃う環境が必要です。

  • 抜群に面白い結婚式を提供している
  • 土日休みまたはフレックスでも働ける
  • 成果に応じて他業界並の報酬を実現できる
  • 職種経験や身につくスキルの幅が広がる
  • かつ業界全体で見たときの業績に貢献できる

これらを満たす職種と考えると、集客領域しかないのではないかと個人的には思っています

集客と言っても今のような媒体活用とかウェブマーケではなく、その経験がダイレクトに行かせる手法というイメージで、そこを担うポジションを創出する。

今後のBtoCマーケのキーワードを考えると、

  • 単純な製品機能だけではないブランドストーリーを
  • ショート動画やライブ配信を伝達コンテンツとして
  • 検索ではなくレコメンド(受動的に)で受け取る

というように変わっていくと思うので、そこを担える人材を作るイメージ。

今のゼクシィに払っているコストを考えればそれが個人に還元されれば高年収も期待できますし、プランナー経験者だからできることでもありますし。

理想的には結婚の予定も結婚式の予定もない人も会いに来たくなるウェディングプランナー、結婚式も紹介するし他業界からも稼いでこれるプランナー、とかだといいですよね。

万人に向いているとは思いませんが、今の業界内だと選択肢が少なすぎるので、こういう職種が生まれていくといいなと思ってます。

 

新卒採用の状況と組織体制

23卒の新卒採用は特に大手では採用数を増やしたと聞きます。直近2年の新卒採用を絞っていたことと直近の人材不足が理由で、24卒も相当数の新卒を採用すると噂です(特に大手は)

そうすると入社後は現場メンバーの負担がかなり上がります。通常の業務に加えていつもより多い数の新卒の教育・育成も担わなければならないからです。

そうなったときに、現場の中間レイヤーのメンバーが疲弊することが予想されるので、そこの離職が進まないような対策は今から考えておくことが必要でしょう。

そうしないと新卒入って頭数は増えたけど残ったベテラン勢が少人数とあとはほぼ新人、という組織になってしまいそうです…。

 

ブライダル業界経験者の転職状況についてのまとめ

プランナーをはじめとした業界経験者がなぜ他業界に転職してしまうのか、その理由と考えられる対策、そして新卒採用も含めた今後の体制の見通しについてまとめました。

個人的な意見としては、圧倒的な実績を残したプランナー経験者がそこら辺の人材会社のCA職とかSaaSのCS職とかにどんどん転職してしまっているのが、とてももったいないというか業界にとっての損失だと思っていて、そういう人材がやりたくなるような職種・ポジションを何とか作り出したいなと思っています。ブライダルはやりがいがあるよ!みたいなきれいごとでなくちゃんと納得できるような仕事を。

だから人が残る仕組みもそうだし、外部で活躍した人が入りたくなる仕組みもこれから作っていきたいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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