
営利企業であれば業績や会社の数字をしっかり把握することは経営層に限らず中間管理職や一般社員にとっても大切なことです。ただ、いくつものエクセルをつなぎ合わせたシートを使わなければならず数値を集計することが大変すぎる、KPIがたくさんありすぎてどれを意識して振り返ればいいかよくわからない、といったことはないでしょうか?業績管理は誤った方法で精緻化すると工数も跳ね上がりますし、数値だけが一人歩きして見ることに意味をなさなくなってしまうこともあります。そこで、今回の記事では業績管理をするときに陥りやすい注意点とその対策についてまとめました。経営企画部門の担当者や業績責任を追っている施設責任者などにとって参考になればと思います。
目次
ブライダル業界でよく見られる数字
まず、結婚式場運営企業でよく見られている指標を簡単にまとめます。以下の表はユーザーフローとそれに伴うKPIの表です。下記以外にも設定している会社もあるとは思いますが、一般的にはこのようなKPIをモニタリングしていることが多いのではないかなと思います。
反響数
- 媒体別
- 出稿プラン別
- 問合せ経路別
- 月別
- 四半期別
- 半期別
- 費用対効果
- 問合せ種別
来館数
- 媒体別
- 出稿プラン別
- 問合せ経路別
- 月別
- 四半期別
- 半期別
- アクション数
- 問合せ種別
- 来館予約担当者別
- 来館者
- 来館曜日
- 来館時間
成約率
- 担当者別
- 来館者別
- 媒体別
- 来館経路別
- 来館曜日別
- 来館時間別
- 月別
- 四半期別
- 半期別
- 来館者別
- 接客時間別
- 年齢別
- 見学件数別
- 披露宴会場別
組単価
- 担当者別
- 月別
- 四半期別
- 半期別
- 申込人数別
- 値引き額別
- アイテム別単価
- アイテム別受注率
- 人数アップ率
- 利益率
売上
- 担当者別
- 施行月別
- 四半期別
- 半期別
- 顧客満足度
- 受注~施行期間別
数字を見ることは目的?手段?
先ほどの表を見て、「ああ見てる見てる」という方も「え、こんなに見てるの?」という方も様々だとは思いますが、さて、
- 数字を見ているだけで満足していないでしょうか?
- または数字を見ても施策につながっていない、ということはないでしょうか?
当たり前ですが、数字を見ることは手段であって目的ではありません。ここが意外と勘違いしている(というか無意識のうちに数字を見ることが目的になってしまっている)方が多いところだと思っており、今回の記事では、目的になると何が起こるのか、なぜそうなってしまうのか、そうならないためにはどういうことが必要かをまとめていきます。
数字を見ることが目的化してしまったときによく起こること
数字を見ることが目的化してしまうと、とにかく数字を細かく見ていってしまいがちです。なぜを繰り返して問題解決を突き詰める、ということはよく言われていますが、間違ったなぜの繰り返し方は悲劇を招きます。
新規や打合せの担当が終わった後に振り返りを行うことは多いと思いますが、特に未達の時になぜダメだったのかを考えているときにKPIがどんどん細かくなっていきがちです。
- 今月の成約率はなぜ低かったの?
→新婦のみの接客が多くて… - それは何組だったの?
→3組くらいです - え、それだけ?
→あ、1時間で帰らなきゃいけないお客様もいました - それは何組いたの?
→えーっと、ちょっとわからないので調べます - 新婦のみと1時間のお客様は同じ人?違う人?
→それもぱっとわからないので日報調べます - 先月と比較しなきゃいけないから、過去3か月分も調べてからまた振り返りしよう
→はい…
こういった数字をデータベースなどから自在に出せるのであれば大きな問題にはならないと思いますが、ウェディングプランナーや営業の方はあまり数字の扱いが得意でない方も多いですし、いちいち細かな数字を求められると苦痛に感じる方も多いでしょう。また、企画部門やデータ分析部門などが独立して存在する会社であればそこに依頼することは可能ですが、基本的にコストセンターなのでそこまで人員強化することもないでしょうし、こういった課題解決のために時間を取られるのは会社としてももったいないはずです。
先ほどのやり取り例では、結局
- 新婦のみのお客様に対してどういう接客をするべきなのか
- 1時間で帰ってしまうお客様に対してどのような接客をすべきなのか
という重要なポイントにたどり着くまでに相当の時間を要すると思います。また、さらに「この数字を毎月見ていくことにします」みたいなルールができてしまうと毎月その数字を出さなければならず、業務量がどんどん増えていってしまいます。
このようなことが増えてくると、振り返りをするために集計していたはずの数字が、いつの間にか上司に報告するための取りまとめ作業になってしまい、数字を出すこと自体が目的化してしまうのです。
なぜ数字を見ることが目的化してしまうのか?
では、先ほどのようなことがなぜ起こってしまうのでしょうか。
見るべき数字と施策がセットになっていない
数字を見るときは、どの数字を見て何を判断するのか、どう考えるのかをあらかじめ決めておいてから見ることが重要です。ですが、目的もなく行き当たりばったりで数字を見ようとするとこのようなことになります。
先ほどの例でいえば、
- 新婦のみの成約率を見て、プランナー個人はレクチャーの成果を把握し、上司はアサインの序列を決める
というのが目的のはずです。数字を見て新婦のみの成約率が低いから新婦のみの来館を断る、というのは間違った目的です。
数字の判断基準が定まっていない
目的が決まっていても、基準値がないと無意味です。
- 新婦のみの成約率が先月は15%でした
この結果だけ見てパッと判断できる人はいないと思います。平均の40%と比べて低い、なのか、先月までの5%からすると上がっているのか、によって考えることが変わるからです。数字の基準は相対値でも絶対値でもいいですが、あらかじめ決めておくべきでしょう。
正しい業績管理フローを構築するためにに必要なこと
施策につながらない数字は見ないようにする
数字を見ても何かしらの施策につながらないもの、判断できないものは見ても意味がないので見ないようにしましょう。個人的には以下のような表になると思いますが、最終的に右側の施策につながらないKPIは見ても無意味です。捨てましょう。
成約率・組単価 |
|
来館数 |
|
KPIを設定するときは必ず判断基準と対応施策とセットにする
見るべきKPIが決まったら基準値も併せて決めましょう。成約率が〇%以上なら(以下なら)~~する、組単価が〇〇万円以上なら(以下なら)~~する、などです。でないと、見て一喜一憂して終わりになってしまいます。
判断につながらないN数しか取れない数字はみない
例えば、
- 新婦のみかつ1時間来館の成約率
のように、3か月に1回あるかないか、のような頻度でしか起こらないKPIは見ても意味ないです。施策までつながっていたとしてもその施策が効果を発揮して業績に貢献することがほぼ期待できないからです。設定した基準値の判断がつく程度のN数が確保できそうなことというのもKPI選定の条件とすべきだと思います。
まとめ
業績管理についてのポイントをまとめました。一番大切なことをまとめると
【見ても施策につながらない数字は見ない!無駄!】
です。集計することが目的になってしまって本業の時間が削られるのは本当にもったいないので、この記事をきっかけに、ぜひKPIの棚卸と断捨離を検討してみてはいかがでしょうか。
おわり