更新日 2018年08月18日

ブライダル企業でよく見る、KPI設定のダメなパターン4つ

KPI(key performance indicator)とは、企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標のことで、ほとんどの企業で何かしらのKPIは設定されています。ただ「今の会社のKPI設定や業績管理方法は完璧だ!」と言い切れるような企業に私はこれまで出会ったことがなく、大なり小なり課題を抱えていることがほとんどだと思います。目標・KPIに何の数値を設定するかは、予算策定から日々の業績管理、さらには評価制度や人事にまでかかわる非常に重要な要素であるにもかかわらず、なぜうまく整わないのでしょうか。今回の記事では、これまで私が見てきた中で実際にあった「KPI設定の失敗パターン」について、その原因と対策をまとめました。

理想的なKPI設定とは


私の考える適切なKPI設定のポイントは以下の4つです。

  • KPIごとの関係性が整理されている(関係性を数式で表すことができる)
  • 定義が明確にされている
  • 数が多すぎず少なすぎない(最適な数は事業規模による)
  • 最上位(KGI)が売上(もしくは利益)につながっている

細かく書けばまだまだ抑えておくべきポイントはありますが、上記4点は最重要と言えるでしょう。逆にこれが満たされていないのであればそのKPIは事業運営上、正しく機能していないと疑ったほうが良いと思います。
では、次に上記ポイントを満たしていない、ダメなパターンについて詳しく書いていきます。
 

ダメなパターン①:異常に細かい、KPIの数が多い

このケースのダメなポイント

  • 数が多すぎるので集計にかかる工数が非常に大きくなりやすい(特にエクセル集計などをしている場合)
  • 数字を見ることが大変すぎるので、それを把握して仕事をした気になってしまいがち。改善のためのアクションまでたどりつきにくい
  • 細分化されすぎていて、責任の所在がわからなくなりやすい。

なぜこんなことになるのか

事業を始めていきなりKPIが細かすぎる、ということはほぼないでしょう。運営していく中で少しずつ増えていき、気づいたら膨大な数になっていた、というケースがほとんどだと思います。私が見てきたケースだと、結果の振り返りをきちんとやっていくと〇〇だからこうなりました、じゃあその数字も今後は見るようにしよう、次の結果の振り返りでも同じようなことを話してまたみる数字が増えて…、これを2年くらい繰り返すと、KPIは一方的に増えていくけど減ることはないので、気づいた時にはどれが重要でどれが不要なのかわからなくなっている、というパターンが多いです。

例えばブライダル業界だとどういうケース?

最初は成約率=成約数÷来館数で見ていたはずが、新婦のみの来館は成約率に明確に差があるから分けて見るべき、じゃあ通常の成約率と新婦のみ来館成約率を分けて見ましょう、その翌月に1時間で帰るお客様は成約率が悪くなるからそれも分けて見るべきだから、1時間接客成約率、さらにその翌月には「競合Aを見学済みのお客様は安い見積りを見ているから分けて見るべき」…、みたいなのを繰り返していって、気づいたら「●●成約率」なる指標が10個もあった…、といった感じです。

こうなってしまっている場合はどうしたらいいか

細かすぎること自体が悪、というよりは、それにかかる工数と見ている数字が小さすぎて議論がかみ合わない時間がもったいない、というところが悪なので、細かいけどBIツールを適切に導入していて集計工数がかからない、とか、数値を見る関係者が全員正しく同じ定義を理解している、という条件であれば、特に問題はないと思います。
もしそうでないのであれば今すぐ設定を見直したほうがいいでしょう。

方法①:見るべきKPIを徹底的に絞る

見ている数値が●●以上(もしくは●●以下)であればこの施策を実行する!というアクションに紐づいていない数値は集計して確認しても意味がありません。さっさと捨てましょう。

方法②:BIツールやslackなど、手間をかけずに数値が見られる環境を整える

DBから直接BIツールにつないでSlackの決まったチャンネルの決まった時間に自動で配信、といったフローであれば手間もかからないので、システム部門に相談してみましょう。
見る必要がない数字を見たがる人、本当に多いので
「施策に結びつかいないKPIは無意味(というか害)」
この基準でバシバシ捨てていきましょう。
 

ダメなKPI設定②:階層がおかしい

このケースのダメなポイント

  • 個別KPIの改善のほうが優先順位が高かったりするので、最上位目標が伸びないことがある
  • それぞれのKPIの関係性が矛盾しているので施策が誤っていることがある(個別最適化されすぎた施策しか出てこない)

なぜこんなことになるのか

私が見てきたケースだと、部署ごとに予算を作ったり業績管理をしている企業でこうなっていることが多かった印象です。営業、打合せ、コールセンター、マーケティング部門がそれぞれで作ると、それぞれの部門の最上位KPIが改善すると別部門のKPIに影響を及ぼすので、全体感がわからなくなるので。具体的に説明します。

例えばブライダル業界だとどういうケース?

営業は成約率、打合せは組単価、コールセンターは来館予約獲得率、マーケティング部はCPA、を最上位KPIと考え予算策定したとします。それぞれの関係性は

  • 成約率=成約数÷来館数
  • 組単価=値引き前組単価-値引額
  • 来館予約率=来館予約数÷問合せ数
  • CPA=広告予算÷問合せ数

となりますので、それぞれの部門の最上位KPIが別の部門のKPIの分母になっていることがわかります。具体的には、マーケティング部門が頑張って問合せ数が増えると予約率は下がります。そうなるとコールセンターは評価が下がるので見込みの薄そうなお客様も呼んでくるので、今度は営業の成約率にも影響が出てきます。営業も成約率が下がると評価されないので、見込みが薄そうなお客様の来館を断るようになったり、値引額を大きくして成約率を上げようとします。そうすると今度は組単価が下がって…、と続いていきます。
このように、細分化された部門同士の最上位KPIが他部門に影響を与える構造になっている場合、自部門の評価を上げるために他部門のKPIを下げるような動きが起こりやすくなります。そうすると、本来目指すべき会社(事業)の最上位KPIが上がらなくなってしまいますね。
スタートアップや数十人くらいの規模の会社だとあまりないですが、100名以上で組織が作られているそれなりの規模の会社だと結構あるケースではないかなと思います。

こうなってしまっている場合はどうしたらいいか

方法①:目標や評価は絶対数でするように変更する、率で評価しない

個人的にはこれかなり大事だと思っていますが、目標とか評価を「率(成約率や来館率、CPAなど)」で設定するのは本当にやめたほうがいいと思います。正しい努力は分子を伸ばすのはずなのに、気づいたら分母を多少なら減らしても大丈夫か、といったことが起こりやすいからです(先ほどの来館を飛ばしたり、アサイン勝手に変えたりするなど)。目標や評価は絶対数の達成度合いで行いましょう。

方法②:評価項目の中に事業の最上位KPI(=KGI)を一定割合組み込む

一般的には売上でしょうが、事業系のメンバーに営業、打合せ、コールセンター、マーケに一定割合で共通の目標を持たせるようにしてもいいでしょう。部門は違えど目指すところはそこだよ、という会社からのメッセージと共に発信することが重要です。
 

ダメなKPI設定③:人(または部署)によって微妙に定義が違う

このケースのダメなポイント

  • 同じ数字を見ているはずなのに、微妙に数値が違うので気持ちが悪い
  • 定義を正確に理解していない人同士が会話するとかみ合わない
  • 長年それを続けると過去の数字の積み上げの信ぴょう性がなくなる

なぜこんなことになるのか

部門ごとまたは個人ごとに数字のモニタリングをしている企業で起こりやすく、さらに、SalesforceなどのDBを使っていなかったりエクセルの手計算などを駆使して集計しているケースのほうが起こる確率は高いと思います。例えば、集計用のエクセルフォーマットのバージョン更新の共有が漏れていた、KPI定義の変更の共有が漏れていた(反映を忘れていた)などが積み重なってくるといつまでたっても数字が合わなくておかしいなぁ、といったことが日常的に起こるようになってしまいます。KPIの定義について確認する時間は、業務の中で一番時間の無駄だと思いますね。

こうなってしまっている場合はどうしたらいいか

数値の集計ツールと運用を1つの場所(部門)に集める、これに尽きるかなと思います。各拠点や担当者ごとに自分で集計して報告させるのではなく、システム部や企画部などでリテラシー高めの部門で集計作業等を一括して行いそこから配信、集計定義の変更などもすべてその部門起点で行うようにオペレーションフローを変更しましょう。集計している人数分だけ定義が存在するようになると言っても過言ではありません。
 

ダメなKPI設定④:設定数値のストレッチ度合いが異常

このケースのダメなポイント

  • 目標が現実離れしていて会社の雰囲気が悪くなる
  • 社員のモチベーションが上がらない

なぜこんなことになるのか

トップダウンで予算や目標が決定される組織の場合によく起こります。実際、私が昔いた会社もよくこうなっていました。ただ、会社や事業のフェーズによってはこういったトップダウンでの目標設定が必要なこともあると個人的には思っています。立ち上げたばかり事業は現実的な数字を達成したってたかが知れてますからね、あくまである程度の規模になってきた後にスタートアップやベンチャー時代のテンションで目標を決めると事故る可能性が高いと思います、っていう話ですね。

例えばブライダル業界だとどういうケース?

目標を立てるときのロジックが、「前年比110%成長で」とか「1バンケ当たり120組の施行目標で」とか「プランナーAさんが10成約、Bさんが5成約、Cさんが3成約だから、合計18成約で」といった人依存前提の予算など、マーケット環境やトレンドを考慮せず過去の成功体験をベースにした決め方をしている会社でよく起こるといえるでしょう。
心当たり、ないですか?

こうなってしまっている場合はどうしたらいいか

社長(もしくは予算の意思決定者)と直接話しましょう。それしかないです。
 

まとめ

4パターン見てきましたが、内容いかがでしたでしょうか?
KPIは業態や組織によって最適解が異なるので、一概にこうすればいい!という正解があるわけではないですが、少なくともここで挙げた4つに当てはまると業務効率を著しく落としている可能性が高いので、ドキッと思ったら一度見直しを検討されてみてはいかがでしょうか?
 
おわり

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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