更新日 2017年05月07日

【マーケティング】目標CPAを正しく設定するための3つのポイント

マーケティングの上限CPA

いきなりですが、事業会社でマーケティングを担当している方に質問です。目標とするCPAの数値をどのように決めていますか?

  • 上長から降りてきた数字をそのまま目指している?
  • 前年実績よりも●%改善するといった目標で決めている?
  • 競合他社が●●円らしいのでそれよりもいい数値を目指す?

多くの場合、これらのように”なんとなく決まっている”ことが多いのではないでしょうか?的確なマーケティング活動を進めていくためには、なぜこのCPAが目標数値として適しているのか、獲得したいCV数とCPAのバランスはどこか、広告投資のアクセルを踏む余力はどのくらいあるのか、などを正確に把握できた上で日々の運用を行っていくことが大切です。今回の記事ではブライダル業界と人材紹介業をモデルケースとして、どうやって目標を定めていくべきかを書いていきます。

はじめに一言・・・

私の経験してきた業界がブライダルと人材紹介業なのでこの2つの業界をケースとして扱いますが、広告投資から売上までの間に営業というフェーズがある業態でかつリピートがあまり発生しないライフイベントにかかる商材であれば、ある程度同じように当てはまる考え方だと思います。不動産や結婚紹介などもそうかもしれません。一方、オンラインで完結するアプリのマーケティングやリピート率が重要なKPIとなるECなどではだいぶ考え方やアプローチの仕方が異なるので、これから示す考え方は当てはまらないと思います。
そのため、どういった業界でマーケティングをされているのかによって読み取り方が変わってきますので、その点ご理解いただいた上で、お読みいただけると幸いです。

ポイント①:事業のオペレーションフローとKPIを可視化する

まず最初はマーケティングの前に事業そのものの構造の理解が必要という点です。的確な目標CPAを定め、いくらのCPAだった場合にどれくらいの利益が出るのか、CPAがいくらを超えると赤字になるのか、を知るためには広告投資から売上計上までのユーザーの流れとKPIをきちんと可視化しておかなければなりません。
※ちなみに、今回の記事ではCPAを定めるためにとしていますが、本当は目標CV数などマーケティング組織に求められるすべてのKPIに関わります。

ケース①:ブライダル業界(結婚式場のマーケティング)の場合

結婚式までの流れとKPI
ごく一般的な結婚式場探しは、情報収集→問合せ→見学予約→式場見学→式場決定→打合せ→結婚式、という流れで進みます。この各フェーズごとのKPIはそれぞれ、広告投資額/反響数/来館予約数/来館数/成約数/組単価、そして売上と表すことができます。また、各KPIは以下のような関係になっています。

  • 広告投資/CPA=反響数
  • 反響数×来館予約率=来館予約数
  • 来館予約数×来館率=来館数
  • 来館数×成約率=成約数
  • 成約数×組単価=売上

例えば、CPAが2倍になり他のKPIが一切変わらないとどうなるかというと、反響数が1/2になり、来館予約数が1/2になり、来館数が1/2になり、成約数が1/2になるので、最終的に売上も1/2になります。

ケース②:人材紹介業の場合

人材紹介業のフローとKPI
こちらも一般的な転職エージェントを利用する場合の転職までのフローですが、情報収集→問合せ→面談→面接設定→面接→内定→転職、という流れで進みます。この各フェーズごとのKPIはそれぞれ、広告投資額/登録数/面談実施数/面接設定数/面接実施数/内定数/報酬単価、そして売上と表すことができます。また、各KPIは以下のような関係になっています。

  • 広告投資/CPA=登録数
  • 登録数×面談実施率=面談実施数
  • 面談実施数×面接設定率=面接設定数
  • 面接設定数×面接実施率=面接実施数
  • 面接実施数×内定率=内定数
  • 内定数×報酬単価=売上

「面談」と「面接」がわかりにくいですが、面談は求職者がキャリアアドバイザーと行うもの、面接は求職者が選考先の企業と行うもの、です。
補足ですが、次のポイント以降で出てくるコンバージョン(CV)はブライダルの場合は「反響数」、人材紹介業の場合は「登録数」を指すものとして進めます。

ポイント②:1CVから得られる売上/利益の期待値を把握する

次に、1CVから得られる売上の期待値の把握です。このポイントでも、ブライダルと人材紹介業をケースにします。また、各KPIの数値はこのケース用に適当に割り振ったものです。

ケース①:ブライダル業界(結婚式場)の場合

ブライダル業界の1CVあたりの売上/利益期待値
1組の反響から得られる粗利の期待値は、来館予約率が80%だとすると来館予約数の期待値は1×80%=0.8来館予約、さらにそこからの来館率が80%だとすると来館数の期待値は0.8×80%=0.64来館、そこからの成約率が40%だとすると成約数の期待値は0.64×40%=0.256成約、組単価が350万円だとすると0.256×350万円=90万円、最後に粗利率が60%だとすると90万円×60%=54万円、という流れで計算できます。もし自身の会場の普段の数値が異なるようであればその数値を当てはめて計算してもらえれば、その会場の期待値を算出することができます。
1反響で54万円の利益・・・。実際に現場で働かれているプランナーの方などの感覚であれば普段そんなに意識することは無いと思いますが「電話1本ロスすると54万円の利益を失ってますよ!」ということです。
 

ケース②:人材紹介業の場合

人材紹介業の1CVあたりの売上/利益期待値
人材紹介業の場合も考え方は同様です。1人の登録から得られる粗利の期待値は、面談率が80%だとすると面談数の期待値は1×80%=0.8面談、さらにそこからの面接設定率が50%だとすると面接設定数の期待値は0.8×50%=0.4面接設定、そこからの面接実施率が50%だとすると面接実施数の期待値は0.4×50%=0.2面接実施、内定率が50%だとすると内定数の期待値は0.2×50%=0.1内定、報酬単価が120万円だとすると0.1×120万円=12万円、最後に粗利率が80%だとすると12万円×80%=10万円、という流れで計算できます。
日々の業務の中ではキャリアアドバイザーの方は意識しないかもしれませんが、1登録あたり10万円の粗利なんです。

ポイント③:利益の出る上限CPAを理解し、目標CPAを設定する

ここまでで、オペレーションフローに沿って1CVから得られる売上/利益の期待値を算出できました。次のポイントでは、この粗利を稼ぐために広告費はいくらまで使っていいのかをどう判断するか、です。

ケース①:ブライダル業界(結婚式場)の場合

利益を出すための上限広告費
※普通は販売管理費の中に広告宣伝費も含まれますが、わかりやすくするために別だしして上記スライドを書いています。
1反響あたりの粗利は54万円でここから販売管理費を除いたものが営業利益になります。販売管理費には人件費、減価償却費、地代家賃、水道光熱費、旅費交通費などと広告宣伝費が含まれます。広告宣伝費を除いた「1反響あたり」の販売管理費は、販売管理費の総額を総反響数で割ることで計算することができ、ここでは40万円だとすると、1反響獲得にかけられる広告宣伝費は以下のように考えることができます。

  • 1反響を得られると獲得できる粗利が54万円
  • 会社でかかる広告宣伝費を除く販売管理費を1反響あたりに割り当てると40万円
  • 54万円-40万円=14万円
  • 14万円から1反響あたりの広告宣伝費を引いた残りが営業利益

つまり、1反響あたりの広告宣伝費が14万円を超えると赤字になってしまう、ということです。これが上限CPAとなります。
さらにこの数値をもとに目標CPAを設定する場合、会社(もしくは式場単位)の営業利益目標と反響数の計画数値から計算することができます。例えば営業利益目標が1億円、反響数が1,000組だった場合、1反響あたりで稼がなければいけない営業利益は1億円/1,000組=10万円となり、10万円稼ぐためのCPAは、14万円-10万円=4万円、となります。
このようにどこまでCPAが悪化するとそもそも赤字なのでむしろやらないほうがいいのか、というラインと、営業利益目標を達成するために必要なCPAのラインは、集客担当者は把握しておいたほうがいいでしょう。一般的な会社のマーケティングの組織は、CV数(反響数)とCPAだけを見ているケースが多いように思いますが、事業運営全体の目標数値は、あくまで利益なので(CV数やCPAはKPI)そこからの数字のつながりを把握していくことはとても大切です。
 

ケース②:人材紹介業の場合

ここのセクションは考え方がブライダルとまったく同じで、数値が異なるだけなので詳細は割愛します。反響を登録と置き換え、数値を入れ替えて考えてみてください。
 
 

まとめ

いかがでしたか?細かな数値を取得・分析できるウェブマーケであれば、これまでの実績の平均CPCとCVRから、”目指せる”CPAを算出し目標として設定することもできます。ただ、そのCPAがそもそも事業PLで許容できるのか、CPAが1万円変わることが事業にどれだけインパクトを与えるのか、正確に把握できていなければそれは所詮マーケターの自己満足の数値です。
CPAを設定する際は前年実績などから実現可能性を考慮して設定する方法もありますが、それと同時に事業としての目標を達成するためにどのラインが最適なのかも考えて設定することを心がけましょう。

 
おわり

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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