更新日 2020年10月30日

2021年3月期第一四半期のテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)の決算について考察してみた

TGの2021年度第一四半期の決算分析_サムネイル

企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)の2021年3月期第一四半期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資家向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。あと、そもそものPLなどの読み方については過去の記事をご覧ください(参考:https://ichimarke.net/category/bridal/settlement

今回の2021年度3月期第一四半期決算の概要

元となるテイクアンドギヴ・ニーズの2021年3月期第一四半期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。
https://pdf.irpocket.com/C4331/djAz/KXso/OSyQ.pdf

決算概要

TGの2021年度第一四半期の決算分析_全体概要

この期間(2020年4月~6月)は店舗閉鎖してほとんど結婚式も行われていないでしょうから、売上は昨対で激減しています(80%以上減)。厳しいことに変わりはないんですが、これはT&Gに限った話ではないでしょう。

続いて販管費。昨対での減額の内訳も出ていますが、四半期で広告費を5.4億円削減していることがわかります。前年度の年間の広告宣伝費が41億円ですから、4半期だと平均10億円強、そのうち5.4億円削減ということは半減以下ということになります。特にゼクシィへの出稿を抑制したことが主な理由だと思いますが、かなり思い切った抑制施策を実行したことがわかります。

そして特別損失。休業期間中の人件費や賃貸料を販売管理費ではなく特別損失として計上しています。そのため、営業利益よりも純利益のところでの赤字が大きくなっています。この会計処理は他の上場企業も同様の処理をしているので、コロナ期間中の決算書を見るときは当期純利益を見たほうがいいでしょう。

BS

TGの2021年度第一四半期の決算分析_資産

まず資産。これだけPLが厳しい状態となっていますが、ここまでBSでは思ったほど変化はありません。固定資産比率が大きいのは会場を持っているからですが、大きな会場の売却などもなく(この決算後にグッドラックコーポレーションを売却したので次の決算時は大きく変わっていそうですが…)、また現預金も大幅に減らしているということはありません。

ただ、事業規模(通期売上600億円程度)と比べると現預金(60億円)と少ないですね。当座貸越枠が165億円あるので早々に資金繰りに行き詰まるということはないと思いますが、もし今の状況があと1年続くとかなり厳しい状態になると思います。

TGの2021年度第一四半期の決算分析_負債

次に負債。有利子負債が約70億円増えていますが、これはコロナ感染拡大初期の頃の借入でしょう。短期と長期の内訳を見るとそのほとんどは短期だと思うので、返済期限である2021年の春ごろまでに売上が戻ってこないとかなり厳しくなると思います。

先ほども書いたようにポテンシャルとしてあと165億円の借入は可能なようですが、できれば追加の借入なしで運営していきたいとは考えているでしょう。

決算概要からわかること

  1. 第1四半期の売上は壊滅的(だがこれは仕方ない)
  2. 当面のキャッシュは確保しており、早々に倒産ということはなさそう(当座貸越枠もあるし)
  3. ただし負債は大きく増えており、仮に売上が回復したとしても長期間その返済を続けなければいけなくなる
TGの2021年度第一四半期の決算分析_通期予想

通期予想もかなり幅がある予想となっていますが、期初発表した数値から大きな変動はないようです。

 

その他のトピック

国内ウェディング事業について

TGの2021年度第一四半期の決算分析_国内ウェディング

キャンセルが少ないですね。他スライドにもありましたが、業界平均は6.9%のようです。

TGの2021年度第一四半期の決算分析_国内ウェディング受注残

受注残(成約済み未施行案件)は昨対を超えているようなので、ここから先重要になるのは

  1. 受注残案件の施行実施率
  2. 施行実施時の平均列席人数(≒平均単価)

この2点。1は感染状況や地域次第だと思いますが、現時点では何とも言えないところです。そして2は昨対で明確に下がると思います。なので、もし受注残がそれなりの確率で開催したとしても売上は昨対でかなり落ちるのではないかと思います。

海外・リゾートウェディング事業について

TGの2021年度第一四半期の決算分析_海外ウェディング

特に海外は渡航制限や隔離期間が設定されているので戻るのにはしばらくかかりそうです(この記事を書いている時点で11月から日本からハワイへの渡航制限は解除されるらしいという報道は出ていますが…)。

こうなると次に目指すのが国内のリゾート地で、特に沖縄はグッドラックに限らず他企業もかなり強くアピールしています。また、挙式だけではなくフォトウェディング事業者も沖縄開催の販促に力を入れているので、競争はかなり激化していると言えるでしょう。

あとはこの流れの中でどれだけ受注を戻せるかの勝負になりそうです。

コロナウイルス感染拡大防止対策

ちょっとスライド増えてきたんでいくつかトピックだけ紹介します。

  • 会場での施行オペレーションの見直しと対策を知ってもらう動画の作成
  • 挙式日延期の手数料額を変更
  • Withコロナ時代の業界ガイドラインに賛同

などは資料内でも紹介されています。

2はこれまで業界のスタンダードとされてきたBIAのモデル約款よりも請求率を押さえたないようになっているので、今後この流れに同調する企業が増えれば業界平均の請求率も変わっていくのかなぁと思います。一方、過去の裁判でも認められたようにこれまでの延期やキャンセル料を請求すること並びに損失額の計算ロジックは運営事業者にとって妥当なものなので、ここの率が変わることによる式場運営企業側のリスクがどの程度影響を与えるのかは慎重に見ていった方がよいトピックの1つだと思います。

※余談

今回の決算資料には記載はなかったですが、これまでT&Gは式後CRMの施策を実施していて10万人強の顧客データを持っていたと思います(有効率が何%くらいあるかはわからないですが…)。

今のタイミングだとこれまで開催していた卒花向けのオフラインイベントは難しいですが、リモートで

  • フローリストのブーケ・アレンジ教室
  • シェフのお料理教室
  • スタイリストのヘアメイク教室

みたいな教室をやるとマネタイズできるんじゃないかなぁと思うんですよね。たしかメルマガの反応率は一般的な数値の数倍を出していたはずなので、スキルはあるが結婚式が開催されずに持て余してしまっている人材リソースを活用し、かつ自社固有の資産である顧客に対して結婚式以外でマネタイズ、やるなら結婚式が少ない今しかないので、検討されてみてはいかがかなと思います。

 

テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)の2021年3月度第1四半期決算についてまとめ

ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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