更新日 2019年09月22日

2020年3月期第1四半期のテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)の決算について考察してみた

2020年3月期第1四半期のT&G決算

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)の2020年3月期第1四半期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。

 

今回の第1四半期決算の概要

元となるテイクアンドギヴ・ニーズの2020年3月期第1四半期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。
https://pdf.irpocket.com/C4331/hUeO/aS4T/Ni5I.pdf

決算概要

TGの2020年度第1四半期決算概要
数字がたくさんあるのでざっと見るべきポイントをまとめると

  • 売上高:前年比2億円アップ、ほぼ計画通り
  • 売上総利益:前年比1.2億円アップ、計画比0.5億円上振れ
  • 営業利益:前年比ほぼ横ばい、計画比2.5億円上振れ
  • 当期純利益:前年比ほぼ横ばい、計画比1.7億円上振れ
  • → 事業別の浮き沈みはあるものの、総じてみればほぼ計画通り

とみてよいと思います。そもそもですが、国内婚礼を主要事業として運営している企業の第1四半期決算はほぼズレません。

  • 当該期が始まった時点(今回の決算で言えば2019年4月1日)で、第1四半期の婚礼受注組数がほぼ確定していること
  • 受注済み案件の打合せも進んでいるので単価も大きくずれないこと

この2点が理由です。なので、ある程度は計画通りの数字に落ち着くことが多いのが特徴です。
また、事業別の概要を見てみると、下記の通りです。

  • 国内ウェディング事業:2店舗閉店するも、組数維持×組単価8万円アップで売上増
  • 海外・リゾートウェディング事業:売上横ばいも、コスト増で営業利益減少(というか赤字)

これだけの組数を実施して、このご時世に単価8万円上がるってけっこう驚異的な結果だと思いますけどね。資料では人数アップが主要因と書いていますが、会場キャパが変わらないのに平均1.3名の人数アップを実現しているとのことで、どうやってそれをやったのか教えてほしいくらいです。。
あと、念のため通期計画のサマリも載せておきます。今回の記事は、この計画の第1四半期決算になります。

TGの2020年度通期計画
では次に事業ごとについても見てみましょう。数字はこちらで書いた通りなので、トピックについて簡単に触れていきます。

国内ウェディング事業の状況

テイクアンドギヴ・ニーズの決算説明資料の国内ウェディング事業

主要KPIの状況

国内結婚式場運営の決算で見るべきポイントは下記の3つ。

  • 新規受注組数
  • 受注残組数
  • 組単価

新規受注組数は当該期間で受注組数なので、2019年4月~6月末までの期間内の成約組数です。この数字はこの期間の売上としてはほぼ返ってこないので(3か月以内に結婚式を挙げる人がほとんどいないから)、未来の売上を予測するときの参考指標となります。今回の決算では前年対比100.7%(閉鎖店舗を除く既存店のみ)なのでほぼ横ばいです。

受注残組数は当該期間の「受注済み組数-施行済み組数」なので新規受注が増えると増えますし、受注残組数×組単価が未来の売上になります。期末決算発表時に翌期の受注残を示すことが多いです。今回の発表では記述なしでした。

組単価は当該期間の結婚式の平均単価を指します。金額的には大きく見えないのですが、地味に効いてくるので数万円の差でも組数が多い会社だとかなりのインパクトになります。あと、ここの変動は粗利に直接かかってくるのも大きいですね。

店舗数を見ると3店舗減っていますが、売上は伸びているので1店舗当たりの売上が伸びているのでしょう。店舗別の明細は開示されていないので(当然ですが…)TRUNKの通期稼働もあり、そのインパクトも大きいんじゃないかなと思います。今回の発表では、前年対比+8.3万円で、人数アップと招待客当たり単価がアップしていることが主要因です。

LTV事業

TGの2020年度第1四半期の決算分析_LTV事業
個人的にも注目しているテイクアンドギヴ・ニーズのLTV事業。このブログでもこれまでいくつかのリリースを紹介してきました。

これらのすべてがLTV事業なのかはわからないですが、3か月ほどでこれだけ動いているのでかなり力を入れている事業なんだろうと思います。たぶん立上げからそんなに時間たっておらず今はKPIを伸ばしていくことに注力しているフェーズだと思うので、売上高を前年比で見て判断するのは適切ではなく、事業を推進するアクションの質と量を見たほうが良いかなと思います。

となると、これらの施策でどれくらいの手ごたえを得られているかはわかりませんが、T&Gが独自で保持しているユーザーデータベース(T&Gメルマガ登録)に対しての施策打ち込みとリアクションの実績はわかってきているとは思うので、今後はその精度を上げていくことがポイントになるかな、と思います。引き続き注目ですね、うまくいけばビジネスモデルごと変えられる可能性もありますし。

装飾レンタル事業

TGの2020年度第1四半期の決算分析_装飾レンタル事業
この事業についてはあんまり詳しくはないですが、インスタグラムが主要集客経路の1つとして機能している現状を考えると、結婚式場がこういった装飾への投資をしていく必要性は今後もしばらくは高まっていくと思います。

一方、自社でゼロから取り組みをするにはノウハウ的にも成果期待値の観点でも厳しいとなると、こういったサービスを利用するのもありなんじゃないかと思います。金額がいくらなのかわからないので何ともですが、先日のブライダル産業フェアでたしかCRAZYもこういったサービスを始めたようなブース出していましたし、結婚式場運営の要素アウトソースは今後も加速していきそうな気がします。

ホテル事業

新規出店

  • 東京渋谷エリアにTRUNK(HOTEL)2号店の出店決定
  • インバウンド富裕層をターゲットに ブランディングを目的にした施設を神楽坂にオープン

この2店舗を新規でオープンするようです。

業績

TGの2020年度第1四半期の決算分析_ホテル事業の業績
高い業績を保てていると思います。が、通期稼働になっても計画のアップサイトがないということは、既に上限値に近い水準まで稼働しているということでしょう。引き合いはあるけど施設稼働が上限→新規出店、という背景であれば、再現性も高く期待できると思います。

海外・リゾートウェディング事業

新規出店

  • ハワイ5拠点目の「ザ・ダイヤモンドヘッドチャペル」 2020年5月 シェラトンホテルの最上階にオープン
  • 2020年3月 沖縄 人気観光エリアに「ふくぎの写真館」オープン フォトウエディングマーケットの開拓に着手

この2店舗を新規でオープンするようです。

業績

TGの2020年度第1四半期の決算分析_リゾート事業の国内マーケット業績
国内マーケットの受注は前年割れが続いていますが、新規受注件数は復調しているようなので、早ければ2020年度内、遅くても2021年度には組数は戻してくるのではないかと思います。
アールイズ・ウェディングでは下記のリリース記事でも書いたように販路拡大と受注率改善施策を積極的に実行しています。

直近の業績を見るといい成果が出ているようには見えませんが、どこまで改善に持っていけるかが勝負になると思います。

その他のトピック

TGの2020年度第1四半期の決算分析_リニューアル
個人的に興味があったのが、国内既存店の改善施策の1つとして「会場リニューアル」を実施して効果が出ていますよ、という内容。

実際、リニューアルって難しくないですか?すること自体は意思決定の問題なのでそこまででもないですが、リニューアルを実行して安定して改善することが難しいと。

まず、リニューアルは明確に集客や成約率を改善することを目的としているので会場修繕とは違います。また結婚式場はゲストを含めてもリピートすることはほぼないので「会場のデザインや装飾に特定のユーザーが飽きた」という状態になることもありません。となるとリニューアルをする際は(ペルソナは作るでしょうが)特定のユーザーに対して行うものではなく、マーケットのトレンドにフィットしたものに会場を作り替えることが必要になります。新規オープンに近いかと。

よくありがちなのが「今来ているお客様の意見などを参考にして」リニューアル要件を決めてしまうこと。今来ていない人を新たに取り込むためにリニューアルするのに、本末転倒ですよね。ただそれを見誤ると、伸びるところか今来ている客層も来なくなるので、リニューアルはけっこう諸刃の剣なんですよね。

だから、ここまでの再現性を持ってリニューアルで改善できているのはすごいなと思いました。

 

テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)の2020年3月度第1四半期決算についてまとめ

ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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