更新日 2020年05月11日

リクルートの決算から見るゼクシィのこれまでとこれから

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

これまで結婚式場運営をしている上場企業の決算分析は行ってきました。ブライダル業界は結婚式場がメインではあるものの、ユーザー認知を強く獲得しているのは実はメディアです。式場名は知らなくてもゼクシィを知っている人は多いでしょう。そこで、今回の記事ではブライダル業界において最も知名度の高いゼクシィを運営するリクルートの決算資料を見て、その内容について考察してみます。

 

2013年度からの四半期別売上高の推移

439_ゼクシィ関連の四半期別売上高推移(リクルート_Bridalセグメント売上)
FY2013 Q1 133億円
Q2 134億円
Q3 139億円
Q4 125億円
FY2014 Q1 134億円
Q2 134億円
Q3 140億円
Q4 126億円
FY2015 Q1 133億円
Q2 135億円
Q3 139億円
Q4 128億円
FY2016 Q1 135億円
Q2 137億円
Q3 142億円
Q4 130億円
FY2017 Q1 138億円
Q2 139億円
Q3 144億円
Q4 131億円
FY2018 Q1 139億円
Q2 138億円
Q3 141億円
Q4 130億円
FY2019 Q1 132億円
Q2 131億円
Q3 133億円

(出典)リクルートホールディングス 決算説明資料 https://recruit-holdings.co.jp/ir/library/report/

年間の売上は約530億円~550億円ほどで、2017年度までは毎年微増、2018年度からは微減となっています(※決算補足資料のセグメント別売上のBridalの数値から記載しているので、ゼクシィ縁結びなど婚活関連の売上が含まれている可能性があります)。

改めてゼクシィとは、といった説明はここでは割愛しますが、この時代になってもなお500億円以上の売上をキープしており、強さは相変わらずと言ったところでしょう。

 

ブライダル業界の市場規模とゼクシィが占めるシェア

ゼクシィが強いことは分かりました。ではブライダル業界(特にゼクシィと関連が大きい挙式披露宴領域)の市場規模はどのように推移しているのでしょうか?

婚姻組数
(千組)
披露宴実施率
(%)
披露宴実施組数
(千組)
平均単価
(万円)
市場規模
(億円)
2013年 661 62.0% 410 340.4 13,950
2014年 644 60.3% 388 333.7 12,959
2015年 635 58.9% 374 352.7 13,192
2016年 625 57.7% 361 359.7 12,972
2017年 608 55.3% 336 354.8 11,929
2018年 599 55.7% 334 357.5 11,928
2019年 591 51.1% 302 354.9 10,718

出典:ゼクシィ 結婚トレンド調査ブライダル総研婚姻予想組数結婚総合意識調査のデータ

減少していますね。なお、この数値は挙式披露宴など従来からのカテゴリの市場規模であり、フォトウェディングや家族だけの会食などは含んでいません。

婚姻組数が減り、披露宴実施率が下がり、単価は上昇→全部ひっくるめて毎年縮小傾向が続いている、という状態で、どこかで下げ止まるのか、このままこの傾向がしばらく続くのかはわかりませんが、いずれにせよ結婚式場にとって厳しい状況が続いています。

ゼクシィは横ばい&結婚式場は厳しい。

先ほどの表にゼクシィの売上推移と市場規模に占めるゼクシィの売上を重ねると次のようになります。

439_挙式披露宴の市場規模とゼクシィシェアの推移

こちらが表で、

439_挙式披露宴の市場規模とゼクシィシェアの推移(グラフ)

こちらがグラフ。

市場規模減少に対してゼクシィシェアが伸びていますね。で、最新(予測ですが)の折れ線グラフの数値が約5%。ここにおける市場規模は結婚式場の挙式披露宴の売上であり、つまりはゲストのご祝儀と新郎新婦の自己負担金で構成されていますから、ちょっと尖った書き方をすると次のようになります。

439_3万円のご祝儀のうち1,500円はゼクシィに払っている

3万円のご祝儀のうち1,500円はゼクシィに払っている。ちょっと誤解を生みそうですが、大雑把に言えばだいたいこのような構造になっていると言えます。

年々比率が上がっているということは結婚式場集客におけるゼクシィの重要度が年々高まってきているということを意味します。ゼクシィも以前は雑誌メインでしたがゼクシィネットもでき、さらにゼクシィネットの中でも細かな広告メニューが開発されたり、AMSの提供やクラスタ分析など様々な進化を遂げてきているので、相対的に貢献価値も上がってきているのかなとは思います。

 

ゼクシィはこれからどうなるのかを予想してみる

結婚式場を紹介する機能としてのゼクシィ

こちらの記事にも書いたように、ゼクシィの売上は

  • 売上=掲載式場数×掲載単価

この数式で表すことができるので、事業拡大をするためには掲載式場数を増やすか掲載単価を上げるかが必要です。

  • 掲載式場数=国内の結婚式場数×掲載シェア

なので、掲載式場数を増やすためには国内の式場数自体が増えるか、シェアを拡大するかしかありません。正直な話、これから結婚式場の新店が毎年次々とオープンすることは考えにくく、一方既に全国を営業しつくしている感のある現状からシェアを拡大することも難しいのではないかと思います。

となると上の数式に戻り掲載単価を上げないと伸びないわけですが(方法はページ単価を上げる、新しい広告メニューを作る、など色々ある)、掲載単価を上げても送客できる組数を増やさなければ式場側の売上高広告宣伝費率が上がり経営を圧迫するので、めぐりめぐって式場数の減少につながってしまいます。さらに、ゼクシィの一般認知度はすでに80%を超えているようなので、これ以上送客数を増やすためには他の媒体をつぶすしかない、という結論に至るはずです。

なので、「結婚式場を紹介する機能」としてのゼクシィが伸びていくための方法は、実質的にはハナユメやマイナビその他媒体がいなくなること以外に事実上ないんじゃないかなと思っています。

その他の可能性

既に事業化されているものは「ゼクシィ縁結び」など、結婚式の手前の領域への進出でしょう。既存事業とのシナジーも高く、婚活業界内でも上位に食い込んできていますね。

それ以外だと、結婚式のオペレーション部分への進出が可能性としてはあるかなと思います。例えばAMSの有料化、式場で使う業務システムの開発販売、など。会社は違いますが同じリクルートだとAirレジとか開発しているので得意ではなさそうだけで不可能でもないと思うので、なんでやらないんだろう?とは思っています。でもこの線は薄いかな…。

まとめると

  • 結婚式場紹介機能としてのゼクシィはもう頭打ち。他の媒体に流れている広告費を奪うことで今の規模を維持することを目指しそう
  • その他の領域や機能への拡張は縁結びですでに婚活領域へは進出、結婚式場オペレーションに入り込んでいくは可能性として考えられるけど今のところその動きは見えていないのでなんでなのかな?と思う。

 

リクルートの決算分析とゼクシィについてまとめ

媒体の決算も見てみようと軽い感じで始めた記事でしたが、ゼクシィはやはり別格すぎて当初の想定からは全く別の内容となってしまいました。ただ、今の状態があと10年続くのか?と言われると難しいんじゃないかと思うので(とはいえそこはリクルートなのでうまくやってくるとは思いますが)、SPARKも外し、撮影販売もそこまで伸びているわけではないこの状況からどういう次の一手を打ってくるのかは気になるところです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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