更新日 2018年08月22日

【ブライダル業界】結婚式場運営における適切な事業計画の立て方とは?

ブライダルの年次予算の作り方

突然ですが、結婚式場の事業計画ってどうやって作っていますか?
ブライダルはIT業界などと比べて市場規模が非常に安定している一方、業界全体で緩やかな縮小は続いており、今後拡大方向に転換することも難しいと言われています。年々シュリンクしていく市場、そんな中でも登場し続ける新しい結婚式場、厳しい競争環境の中でどうやって生きていくかの戦略・方向性を毎年考えていかなければいけません。その戦略の最上段にあるのが「事業計画」です。そこで今回の記事では、結婚式場の事業計画の立て方について、一般的な方法の紹介と私がオススメする具体的な作り方をまとめました。市場が安定している一方でレバレッジが効きにくいこの業界で精度の高い計画を立てるにはどうしたらよいか、とうことを意識して書いていますので、ぜひご覧ください。

ブライダル企業でよくある事業計画(年次予算)の作り方

まず、一般的な事業計画の立て方の例を紹介します。

①「前年実績×●●%」で計算して作る

2017年度の売上が10億円でした、来年は10%成長を目指したいから、2018年度の目標は11億円にする!以上、決定!みたいな感じです。ここまで雑ではないにしろ、だいたいこんな感じで設定しているところも多いのではないでしょうか。例えばこの10%といった成長比率は、社長など上位意思決定者の一存で決まることがほとんどで、この目標数値が決まった後、それを聞いた現場責任者がどうやってそれを達成するかをあれこれ議論する、という流れで決まっていきます。
私も過去そういう現場をよく見てきましたし、もしかしたらこの方法で計画を立てているケースが一番多いのではないかとも思っています。
この作り方でうまく事業が計画通りまわるかどうかの一番のポイントは「成長率を何%に設定するか」です。ここ数年の来館数トレンドだと、東京など首都圏でも年数%ずつ減少、地方だと10数%も減少という地域もあります。つまり、前年と同じ業務を同じレベルで行い、同じ成約率・単価をキープしても、来館が減少した分だけ数%~数10%も売上が下がってしまいますよ、ってことです。
それを理解したうえで、10%成長が見込めると踏んでいるのであれば計画として成り立つと思いますが、経営者の意思や願望だけで成長率を決めてしまうと、計画と実績の乖離が著しく大きくなり様々な不都合が起こってきます(ライバル視している競合が10%成長の決算出したからうちも10%成長や!みたいなのが一番悲惨な結果になりやすいです)。

②「バンケット数×施行組数」で計算して作る

1バンケットあたり120組だから3バンケットの●●迎賓館の年間目標360組!のような考え方で計画を立てるケースです。単独店舗の結婚式場というよりは複数店舗を運営しているそれなりに大きな規模の会社で取り入れられやすい方法で、こちらも先ほど同様、基準する1バンケット当たりの組数を上位意思決定者が決めることがほとんどでしょう。
ここ数年は縮小トレンドが顕著なのでこういった決め方は少なくなってきていると思いますが、以前はこうやって決めているところも多かったのではないかと思います。
この作り方でうまく事業が計画通りまわるかどうかの一番のポイントは「1バンケット当たりの基準組数を何組に設定するか」です。特に異なる地域で複数店舗を運営している場合、全国で一律で基準組数を設定してしまうと実態と大きくかけ離れた計画が出来上がってしまいます。それぞれマーケットによって商圏人口も違えば競合も違うし価格帯も違いますので、来館数も成約率も単価も会場ごとに異なってきます。さらに、原価や販管費を見ても、仕入れ単価も違えば土地代や地代家賃も違う、バイトの給与水準だって違うので、同じ組数を達成しなくても支出が少ない分、十分な利益を得ることも可能な場合もあるのです。
複数店舗を運営する会社の場合、店舗ごとの目標設定基準が異なると「店舗ごとの目標の公平性」について現場から声が上がることがあります。「私の会場は2バンケで年間300組なのに、あっちの会場は3バンケで300組。私の会場のほうが目標が高くて不公平だ!」みたいな声ですね。運営条件が違うからです、の一言で済めばいいですが、こういった声が大きくなって、じゃあ公平に「1バンケット当たり150組目標に統一します」となると、後は実態と乖離した目標の出来上がり、となります。

③「所属するスタッフ×1人当たりの売上(または成約数)」で計算して作る

所属するスタッフ毎に、Aさんは5組担当で1,500万円、Bさんは4組担当で1,200万円、Cさんは…、これが12ヶ月で年間10億円!といった考え方で計画を立てるケースです。こちらは逆に単独店舗の結婚式場でメンバーも長く固定されている会社で取り入れられやすい方法かと思います。
よくある方法~と書いてはいますが、このような方法で計画を立てているブライダル企業に私は直接会ったことはありません(人材業界で見たことはありますが)。そのためそんなに多くはないかもしれません。
この作り方でうまく事業が計画通りまわるかどうかの一番のポイントは「マーケットの環境(自社、顧客、競合)が安定していること」です。新しい競合も特に出てこない、集客の方法も変わらない、それでいてマーケットはそれなりの規模があり翌年も変わらないことが予想される、こういった状況であればおそらく大きくずれることはないですし、計画を立てる工数もほとんどかからないのでこの方法が適していると思います。ちなみに、それなりの規模が必要な理由は、10組来館が5組来館に減ってしまうと50%減で大打撃ですが、100組来館が95組来館に減ってもそこまでインパクトが大きくないから、です。
ただ、今の日本にブライダル業界にそんなマーケットはないでしょう。顧客数は減少、競合は新規出店攻勢、ユーザーの式場探しの方法は雑誌からウェブへ、ウェブからSNSへと常に進化、という状況なので、そこまで安定しているわけではないと思います。あと、働き方改革の影響もあって転職がしやすくなってきており、人材の流動性も10年前に比べると高まっているので、退職リスクなども加味すると想定外のことが起こりやすい環境になっていると思います。
ブライダル業界の年次予算の作り方
ここではよくある事業計画の立て方を3パターン紹介しましたが、こういった方法で事業計画を立てると、事業運営上どういったことがあるのかについても次に書いていきます。
 

これらの方法で事業計画を立てたときに起こりやすい事業運営上の不具合

上記のような方法で事業計画を立てたときに起こりやすい不具合の例をざっと列挙すると以下のような感じです。

①前年実績×成長率パターン

  • 先にトップラインが決まってしまっているので、中間管理職のマネジメントが他責になりやすい(いや、上司がやれっていうからさ…、みんなも頑張ろうよ…、のような指示しかできない)
  • 成約率や単価など肌感を持っているKPIは調整しにくいので、前年からのストレッチ(成長分)の根拠を来館の伸びに寄せてしまいやすい
  • その結果、プランナーは「成約率や単価は頑張っているのに全然目標に届かないから評価されない…」という無力感に陥りやすい
  • その状態が長く続くと人が辞めていく上に、集客を担う部署に怒りの矛先が向き社内が険悪になる

②バンケット数×一律基準組数パターン

  • 一見公平だが個別事情を考慮していないので、厳しい環境の会場に所属するメンバーから不満が出やすい
  • 逆に易しい環境の会場にいるメンバーは簡単に目標を達成してしまうので、能力以上に高く評価されてしまう
  • 実力と役職が比例しなくなり、いかに当たり会場の配属になるかという運ゲー要素が社内出世の重要ファクターになる
  • 結果、優秀な人材から辞めていきやすくなる

③所属スタッフ×基準売上パターン

  • みんな同じように頑張っているのになんか達成しない、という空気になる
  • 退職や異動が発生したときに想定外の目標を負うことになる
  • 個人の目標を達成すればよい、という意識になりがち

①~③共通

  • 実態を加味しないで計画を立てているので、計画と実績がずれやすい
  • 計画と実績の乖離が出てきたときに、何が原因でそうなっているかの把握が難しい
  • 把握ができないので適切な分析ができず、目標未達の時の振り返りが気合と根性論の施策しか出てこない

という感じでざっと書いてみました。
正直なところ、どんなに精緻に計画を作ってもずれるときはずれるし、適当に作ってもうまくいくときはうまくいきます。ただ適切な方法で計画や目標が作られなかった場合、うまくいっている間はいいですが、未達が続いた時に高速で組織運営に悪影響を及ぼします。これが、いい計画と悪い計画の一番の違いだと思います。「トップダウンで決定される計画 × 精度低い( × 現場の権限が少ない)」という組み合わせは、現場は無理ゲー感満載なので一番きつくなるのです。
ブライダルで悪い計画を作ったときの組織への影響
では最後に、ブライダル業界で事業計画を立てるならどういう方法がいいのか、個人的におすすめの方法を書いていきます。
 

私がオススメする結婚式場の事業計画の立て方

ブライダル業界はIT業界と違い、前年比300%成長といった爆発的な伸びはないですが、半年前まで大丈夫だったのに突然お客様が90%減になったということも起こりません。なので、基本的には積み上げ形式でトップラインを定めていく方法で立てるほうがいいと思います(現場メンバーに作らせるべきという意味ではなく、数字的な意味合いでの積み上げという意味です)。
具体的な手順は以下の通りです。

  1. 前年度の売上や来館数、成約数、組単価などの実績数値と成約率、来館率などの営業KPIを集計する
  2. 前年度の実績を据え置きで計画のベースとなる数値を設定する
  3. リクルートからもらえるマーケットレポートなどから、式場があるエリアの今年度の来館数の変化を予測する
  4. 各数値・KPIごとに、今年度と変化する要因がある分の数値を補正する

ブライダル企業の積み上げ式事業計画のつくりかた
上の図のようなイメージです(実際に業務で事業計画を作るときはこの10倍以上は細かく設定してちゃんと作りますが、今回は概念だけわかりやすく書いています)。このように設定すると、前年と同じことをした場合のベースが基準にあり、それにマーケット(外部環境)の変化と内部要因の変化の要素を足しこんで作られているので、なぜこの数値になっているのか一つ一つ理由が説明できますので、メンバーにもちゃんと伝えることができます。
こうやって作られた計画をもとに実際に営業活動を行い、目標KPIと実績を比較しながら原因分析をし、改善施策を実行していきます。例えば上記の例なら

  • 計画ではマーケットは5%縮小と予測していたが実際はどうなのか?
  • コールセンターを導入したが来館率はちゃんと改善されたのか?
  • 競合の値下げと自社会場の値引き増加によって成約率はどのように変化したのか?
  • 商品価格を変更したことによる単価や成約率への影響はあったのか?

などを比較し、もし予想通りなら目標は達成できているはずですし、ずれている場合は次の施策を考えて実行し、予測をローリングしていくことが重要です。
ちなみに余談ですが、私は以前働いていた会社(上場企業です)で4~5年ほどこの方法で予算作っていましたが、だいたい精度高く作ることができました(売上までですが、100億円以上の売上規模で5%以上ずれたことはないと思います)。
また、この方法で事業計画をちゃんと作るためには、過去実績を分析するためにローデータを抽出可能なDBとエクセルがあればできます。毎年ビジネスモデルが変化するような業界ではないので一度テンプレート化してしまえば毎年使えますし、同じ方法で毎年計画を見直していけば年次変化を追っていきやすいと思います。具体的なフォーマットの作り方の解説についてはまた次回(かその次か)に書いてみようと思います。
 

まとめ

事業計画は数字の積み上げで作ろう!
ビジネスモデルが変化しにくい、マーケット環境の突然の変化が起こりにくいときは、積み上げで作ったほうが精度も高いですし組織運営もうまくいくことが多いと思います。また事業計画や予算は単なる数字ではなく、それをもとに組織が動くので、数字がいくらかだけではなくどのように作られたのか、というプロセスも大切だということもお分かりいただけたと思います。ぜひ、来年度予算から試してみてはいかがでしょうか?最後までお読みいただきありがとうございました。
 
おわり
 

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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