更新日 2021年08月24日

【ブライダル事業者向け】結婚式場運営の適切な事業計画の立て方のコツ

0022_【ブライダル事業者向け】結婚式場運営の適切な事業計画の立て方のコツ

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

厳しい競争環境の中で結婚式場をどうやって事業継続させていくかの戦略・方向性は毎年考える必要があり、その戦略の最上段にあるのが「事業計画」です。今回の記事では、結婚式場の事業計画の立て方について、一般的な方法と具体的な作り方を解説します。精度の高い計画は精度の高い事業運営に直結します、ぜひ参考になると嬉しいです。

 

ブライダル企業でよくある事業計画(年次予算)の作り方

22_ブライダル企業でよくある事業計画(年次予算)の作り方

①「前年実績×●●%」で計算して作る

前年度の売上が10億円、来年は10%成長を目指したいから、2018年度の目標は11億円にするといった作り方です。10%といった成長比率は、社長など上位意思決定者の一存で決まることが多く、この目標数値が決まった後、それを聞いた現場責任者がどうやってそれを達成するかをあれこれ議論する、という流れで事業計画や各予算数値が決まっていきます。

②「バンケット数×施行組数」で計算して作る

1バンケットあたり120組だから3バンケットの●●迎賓館の年間目標360組、といった考え方で計画を立てるケースです。単独店舗の結婚式場というよりは複数店舗を運営しているそれなりに大きな規模の会社で取り入れられやすい方法で、こちらも先ほど同様、基準する1バンケット当たりの組数を上位意思決定者が決めることがほとんどでしょう。

③「所属するスタッフ×1人当たりの売上(または成約数)」で計算して作る

所属するスタッフ毎に、Aさんは5組担当で1,500万円、Bさんは4組担当で1,200万円、Cさんは…、これが12ヶ月で年間10億円、といった考え方で計画を立てるケースです。こちらは逆に単独店舗の結婚式場でメンバーも長く固定されている会社で取り入れられやすい方法かと思います。

では次にそれぞれの方法で作成するん場合のポイントとリスクについてです。

 

①「前年実績×●●%」で事業計画を作成する場合のポイントとリスク

計画を立てる際のポイント

一番のポイントは成長率を何%に設定するかですが、ブライダル業界のトレンドは東京など首都圏でも年数%ずつ減少、地方では10数%も減少という地域もあります。つまり、ほぼ全国的に市場縮小フェーズであり、前年と同じ業務を同じレベルで行い、同じ成約率・単価をキープしても、来館が減少した分だけ数%~数10%も売上が下がってしまうことが前提になります。

それを踏まえても10%成長が見込めると計画を立てるのであればまぁそれはそれでいいのですが、経営者の意思や願望だけで成長率を決めてしまうと、計画と実績の乖離が著しく大きくなるので注意が必要です。

この方法で計画を立てるリスク

  • 先にトップラインが決まってしまっているので、中間管理職のマネジメントが他責になりやすい(いや、上司がやれっていうからさ…、みんなも頑張ろうよ…、のような指示しかできない)
  • 成約率や単価など肌感を持っているKPIは調整しにくいので、前年からのストレッチ(成長分)の根拠を来館の伸びに寄せてしまいやすい
  • その結果、プランナーは「成約率や単価は頑張っているのに全然目標に届かないから評価されない…」という無力感に陥りやすい
  • その状態が長く続くと人が辞めていく上に、集客を担う部署に怒りの矛先が向き社内が険悪になる

 

②「バンケット数×施行組数」で事業計画を作成する場合のポイントとリスク

計画を立てる際のポイント

一番のポイントは1バンケット当たりの基準組数を何組に設定するか、です。

異なる地域で複数店舗を運営している会社の場合、それぞれマーケットによって商圏人口も違えば競合も違うし価格帯も違い、全国で一律で基準組数を設定してしまうと実態と大きくかけ離れた計画が出来上がってしまうので注意が必要です。

また、地域によって仕入れ単価も違えば土地代や地代家賃も違う、アルバイトの給与水準も違うので、同じ組数を達成しなくても支出が少ない分、十分な利益を得ることも可能な場合もあります。

ただ、複数店舗を運営する会社の場合は、店舗ごとの目標設定基準が異なると「店舗ごとの目標の公平性」について現場から声が上がることがあります。「私の会場は2バンケで年間300組なのに、あっちの会場は3バンケで300組。私の会場のほうが目標が高くて不公平だ!」みたいな声ですね。

マーケット条件が違うから当たり前ですよね、の一言で済めばいいですが、こういった声が大きくなって、じゃあ公平に「1バンケット当たり150組目標に統一します」となりがちです。

この方法で計画を立てるリスク

  • 一見公平だが個別事情を考慮していないので、厳しい環境の会場に所属するメンバーから不満が出やすい
  • 逆に易しい環境の会場にいるメンバーは簡単に目標を達成してしまうので、能力以上に高く評価されてしまう
  • 実力と役職が比例しなくなり、いかに当たり会場の配属になるかという運ゲー要素が社内出世の重要ファクターになる
  • 結果、優秀な人材から辞めていきやすくなる

③「所属するスタッフ×1人当たりの売上(または成約数)」で事業計画を作成する場合のポイントとリスク

計画を立てる際のポイント

一番のポイント、というか成立条件はマーケットの環境(自社、顧客、競合)が安定していることです。新しい競合も特に出てこない、集客の方法も変わらない、それでいてマーケットはそれなりの規模があり翌年も変わらないことが予想される、こういった状況であればおそらく大きくずれることはないですし、計画を立てる工数もほとんどかからないのでこの方法はとても適していると思います。

ちなみに、それなりの規模が必要な理由は、10組来館が5組来館に減ってしまうと50%減で大打撃ですが、100組来館が95組来館に減ってもそこまでインパクトが大きくないから、です。

ただ、今の日本にブライダル業界にそんなマーケットはほぼなく、顧客数は減少、式場探しの方法は多様化と常に変化している状況なので、どちらかと言えば不安定です、

あと、働き方改革の影響もあって転職がしやすくなってきており、人材の流動性も10年前に比べると高まっているので、退職リスクなども加味すると想定外のことが起こりやすい環境になっていると思います。

この方法で計画を立てるリスク

  • みんな同じように頑張っているのになんか達成しない、という空気になる
  • 退職や異動が発生したときに想定外の目標を負うことになる
  • 個人の目標を達成すればよい、という意識になりがち

22_事業改革の作成方法別のポイントとリスク

 

結婚式場の事業計画をKPIを積み上げてつくる

上記3つの方法で共通していること

  • 実態を加味しないで計画を立てているので、計画と実績がずれやすい
  • 計画と実績の乖離が出てきたときに、何が原因でそうなっているかの把握が難しい
  • 把握ができないので適切な分析ができず、目標未達の時の振り返りが気合と根性論の施策しか出てこない

どんなに精緻に計画を作ってもずれるときはずれるし、適当に作ってもうまくいくときはうまくいきます。ただ適切な方法で計画や目標が作られなかった場合、うまくいっている間はいいですが、未達が続いた時に高速で組織運営に悪影響を及ぼします。

これがいい計画と悪い計画の一番の違いだと思います。「トップダウンで決定される計画 × 精度低い( × 現場の権限が少ない)」という組み合わせは、現場に最も大きな心理的負荷を書けてしまいます。

KPIの積み上げで結婚式場の事業計画をつくる

22_前年実績をベースにした積み上げ式事業計画作成法

ブライダル業界はIT業界と違い、前年比300%成長といった爆発的な伸びはないですが、半年前まで大丈夫だったのに突然お客様が90%減になったということも起こりません。なので、基本的には積み上げ形式でトップラインを定めていく方法で立てるほうがいいと思います。

  1. 前年度の売上や来館数、成約数、組単価などの実績数値と成約率、来館率などの営業KPIを集計する
  2. 前年度の実績を据え置きで計画のベースとなる数値を設定する
  3. リクルートからもらえるマーケットレポートなどから、式場があるエリアの今年度の来館数の変化を予測する
  4. 各数値・KPIごとに、今年度と変化する要因がある分の数値を補正する

このように設定すると、前年と同じことをした場合のベースが基準にあり、それにマーケット(外部環境)の変化と内部要因の変化の要素を足しこんで作られているので、なぜこの数値になっているのか一つ一つ理由が説明できますし、メンバーにもちゃんと伝えることができます。

こうやって作られた計画をもとに実際に営業活動を行い、目標KPIと実績を比較しながら原因分析をし、改善施策を実行していきます。例えば

  • 計画ではマーケットは5%縮小と予測していたが実際はどうなのか?
  • コールセンターを導入したが来館率はちゃんと改善されたのか?
  • 競合の値下げと自社会場の値引き増加によって成約率はどのように変化したのか?
  • 商品価格を変更したことによる単価や成約率への影響はあったのか?

などを比較し、もし予想通りなら目標は達成できているはずですし、ずれている場合は次の施策を考えて実行し、予測をローリングしていくことが重要です。

また、この方法で事業計画をちゃんと作るためには、過去実績を分析するためにローデータを抽出可能なDBとエクセルがあればできます。毎年ビジネスモデルが変化するような業界ではないので一度テンプレート化してしまえば毎年使えますし、同じ方法で毎年計画を見直していけば年次変化を追っていきやすいと思います。

 

結婚式場の事業計画の作り方のコツまとめ

事業規模やマーケットによって最適な方法には諸説あるものの、個人的には結婚式場の事業計画は数字の積み上げで作るのがおすすめです。

ビジネスモデルが変化しにくく、マーケット環境の突然の変化が起こりにくいので、積み上げで作ったほうが精度も高いですし組織運営もうまくいくことが多いと思います。また事業計画や予算は単なる数字ではなく、それをもとに組織が動くので、数字がいくらかだけではなくどのように作られたのか、というプロセスも大切だということも1つの理由です。

最後に当社のブライダルコンサルティングでは結婚式場の事業計画についての相談も承っておりますので、お気軽にお問合せください。

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この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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