ブライダル業界の利益率はどれくらい?結婚式場PLの読み方と上場4社の直近決算比較

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ブライダル業界の利益率

業界的に「結婚式は花束1つで〇万円で高すぎ!」とか「結婚式はぼったくりだ」などとよく言われます。もしほんとにぼったくりの業界なら利益率はすごいことになっているはずですが、果たしてそんなに儲かっているのでしょうか?どちらかと言えば、そこまで言われてしまうようなアイテム単価を設定しながら経営が苦しい会社の方が多いのでは?と個人的には思っています。そこで、今回の記事では上場している結婚式場運営企業4社の損益計算書(以下、PL)をもとに、営業利益率について比較してみました。また、冒頭で簡単なPLの読み方についてもまとめました。ブライダル業界で働くのであれば、自社や競合、転職先のPLは絶対に読めた方がいいので、こちらも参考にお読みいただけると嬉しいです。

結婚式場運営企業のPLの読み方

各社の比較に入る前に、PLについての基本的な解説をします。

PLとは

PLとは損益計算書(Profit and Loss Statement)の頭文字を取ったもので、一定期間の経営成績を表す決算書のことです。収益、費用、利益について書かれており、どのくらいの収益が出たのか、収益を獲得するのに対してどのくらいの費用を使ったか、収益から費用を引いた利益はいくらか、などを読み取ることができます。

詳しい説明はここでは割愛しますが、全くの初心者の場合は会社の家計簿のようなもの、とイメージいただければいいかと思います。収入がいくらあって、家賃やローンにいくら、食費にいくら、交際費にいくら使って…最終的にいくら残る、これを会社規模でやっているもの、と考えていただければよいでしょう。

損益計算書とは

結婚式場の売上

まず売上ですが、ここはそのままで結婚式場がユーザーから頂いた売上のこと、となります。いくつかポイントとしては以下の通りです。

  • 提供したサービスの種類は問わない:一般的な挙式披露宴だけではなく、二次会や試食、前撮りなども含む
  • 計上タイミングは施行日:実際にお金を頂くタイミングが異なる申込金や半金、残金なども計上日は施行日になる
  • 新郎新婦以外からお金をいただく場合:列席衣装やゲストの送迎費などは契約形態による

ここは特に違和感ないと思います。

結婚式場の原価

次に原価ですが、原価は結婚式などのサービスを提供するのに直接的にかかる仕入れコストなどが原価となります。結婚式は実にたくさんのアイテムで構成されているので小売りのように仕入れという概念を肌で感じるのは実務上難しいですが、食材や飲料の仕入れコストなどが原価にあたります。ただ、ウェディングドレスや装花、写真・映像などは提供するサービスを内製して自社の社員が行っているか、提携している外部の会社に委託しているかによって原価で計上するか販売管理費で計上するかが異なるので読み方には注意が必要でしょう。具体的な例として衣装部門を内製している場合とそうでない場合にどう異なるのかを説明します。

内製している場合

自社のドレススタッフが対応し、自社で保有するドレスをレンタル(またはセル)しているので、ドレスの仕入れ・購入にかかる費用は原価、ドレススタッフの人件費や保管にかかるコストは販売管理費、となります(会計上の処理方法は厳密には会社によって異なります)。

外部業者に委託している場合

お客様を委託しているドレスショップに送客していることになるので、委託業者からの請求が結婚式場側の仕入れとなります。そのためその全額を原価とすることが多いと思います。

基本的に、結婚式を実施(お客様に提供)するのに必要なものを仕入れるのにかかるコスト=原価、となるので、売上をある程度相関のある数字となることが多いです。施行組数が減ればその分原価も減りますし、逆に増えればその分原価もかかります。

結婚式場の売上総利益

売上総利益=売上-原価、で計算されます。ここが赤字の会社は見たことないですが、万が一そうである場合そもそもの価格設定を間違っていると言えます。100円で仕入れてきたキャベツを50円で売っているようなものですね。

結婚式場の販売管理費

販売管理費とは、会社の販売活動、一般管理活動に付随して発生する費用のことで、売上原価が売上との対応関係に基づき費用計上されるのに対し、販売管理費は売上高との対応関係ではなく、その発生した期間に対応させるべき固定費的な性格に基づく期間費用として計上されます。ブライダル業界で特に大きな割合を占める3大販売管理費は「地代家賃・減価償却費」「人件費」「広告宣伝費」です。

地代家賃・減価償却費

地代家賃とは結婚式場を賃貸借契約している場合にかかる家賃のことで、減価償却費とは一時的な支出(結婚式場の建設にかかる費用)を、耐用年数(使える年数)に応じて少しずつ分割して費用化することです。一般的には10年~20年の償却期間とすることが多いでしょう。結婚式場を新たに作る場合、式場を契約するためには2つの方法があります。

まず1つ目は土地ごと買い上げる、という方法です。郊外ゲストハウスや一軒家タイプの会場など、その土地に結婚式場だけを立てる場合はこの方法が可能です。この場合は初期費用が大きく、定率法の場合、初年度から数年間は償却費が重く乗ってきますが、そこを乗り越えるとかなり軽くなります。減価償却費が大きく地代家賃がほぼない場合はこの方法での出店が多いのでしょう。

2つ目の方法は、物件の賃貸借契約で借りる方法です。ビルインタイプの会場や複合商業施設への出店の場合はこちらの方法がとられていることが多いでしょう。こちらの方法の場合、初期費用は敷金と内装費、その他建設費だけなので軽いですが、地代家賃がかかり続けるので、開業数年後に人気が落ちてきたときにかなり苦しくなります。地代家賃比率が高く、減価償却が大きくない場合はこの方法での出店が多いのでしょう。

どちらの方法での出店が優れている、という単純な話ではないですが、いずれにしろ結婚式場の新規建設・維持にかかる費用は必要であり、それのための金額が「地代家賃・減価償却費」となります。この費用は出店時に契約で決められるので、業績が伸びようと落ちようと基本的に変わることはありません。そのため、出店当初の業績想定を上回ればその分安く見えるでしょうし、逆に下回ると重くのしかかってきます。

人件費

人件費は、そのままでスタッフの給与や手当にかかる費用のことです。先ほどの原価のところでもふれたように、自社社員に対して支払う給与はこちらに含まれ、外部委託業者に対して支払うものは原価、または外注費(業務委託費)となります。人件費もほぼ業績と変動せず固定でかかる費用となります。業績変動賞与などを取り入れている会社もあると思いますが、業績落ちたから即解雇、というのは日本の法律上できないので、ほぼ固定費と思っていいでしょう。来館10組しかないけど新規プランナー5人います、ということも昨今のマーケット状況では起こりうるのです。ただ、繁忙期の業務量は半端じゃないので、どの時期の業務量に合わせて採用計画や組織設計をするのか、そのバランスが難しいところです。

広告宣伝費

広告宣伝費は、ゼクシィやみんなのウェディングへの出稿にかかる費用や、ゼクなびなどのエージェントへのフィーなどの総額です。集客用のウェブサイト制作費が当たるかどうかは会社ごとにどのような会計処理をしているかどうかによります(金額によっては固定資産にすることもある)。集客に必要な費用なので、ある程度業績と相関があります。広告宣伝費増やす→集客が伸びる→業績が上がる、という理屈です。ただ、やみくもに広告費を増やしても出稿方法によっては必ずしも集客が伸びるわけではないので、比例する、まではいかないかと思います。

広告宣伝費を見るときに注意しなければならないのは、広告宣伝費を計上するタイミングと売上が上がるタイミングのタイムラグが大きいことです。具体的には、2018年12発のゼクシィ出稿にかかる費用は2018年12月の広告宣伝費として計上しますが、2018年12発のゼクシィを見て来館するお客様の多くは2019年1月~2月にかけて来館し、そこで成約した人の施行日は2019年4月以降がほとんどでしょう。この場合、3月末決算の会社であれば、広告宣伝費の計上期は2018年度、売上の計上期が2019年度となり、期ずれが起こります。何年も会場運営を同じくらいの規模で続けている会社であれば大きなずれとはならないでしょうが、特に今伸びている会社や年末などに新規出店があった会社、逆に閉店や事業縮小があった場合は、一次的に売上高広告宣伝費率が高く見えたり低く見えたりしますので、ここは注意です。

結婚式場の営業利益

営業利益=売上総利益-販売管理費(売上-原価-販売管理費)、で計算されます。ブライダルの事業を通じてどれくらい利益を上げられているか、という数値で、絶対額と営業利益率(営業利益/売上)の両方で見ることが多いです。

結婚式場のPL概要

さて、前置きが長くなりましたがこれを踏まえて上場4社のPLを見ていきましょう。

 

TAKE and GIVE NEEDSの利益率

損益計算書概要

売上 39,976
売上原価 16,407
売上総利益 23,569
販売管理費 21,444
(内)広告宣伝費 2,927
(内)給与及び手当 5,440
(内)地代家賃+減価償却 5,818
営業利益 2,125

出典:第20期有価証券報告書/単位:百万円
備考:連結ではなく、TAKE and GIVE NEEDS単体のPLから数値を抜粋

経営指標

原価率 41.0%
売上高広告宣伝費率 7.3%
売上高人件費率 13.6%
営業利益率 5.3%

 

ツカダ・グローバルホールディングの利益率

損益計算書概要

売上 57,253
売上原価 38,713
売上総利益 18,540
販売管理費 14,272
(内)広告宣伝費 4,124
(内)給与及び手当 2,798
(内)地代家賃+減価償却 649
営業利益 4,268

出典:第23期有価証券報告書/単位:百万円
備考:国内婚礼のみのPLは公表無しのためホールディングの連結損益計算書から抜粋

経営指標

原価率 67.6%
売上高広告宣伝費率 7.2%
売上高人件費率 4.9%
営業利益率 7.5%

エスクリの利益率

損益計算書概要

売上 24,535
売上原価 8,640
売上総利益 15,895
販売管理費 14,113
(内)広告宣伝費 3,047
(内)給与及び手当 2,593
(内)地代家賃+減価償却 4,682
営業利益 1,783

出典:第15期有価証券報告書/単位:百万円
備考:連結ではなく、エスクリ単体のPLから数値を抜粋

経営指標

原価率 35.2%
売上高広告宣伝費率 12.4%
売上高人件費率 10.6%
営業利益率 7.3%

アイ・ケイ・ケイの利益率

損益計算書概要

売上 18,172
売上原価 8,345
売上総利益 9,827
販売管理費 8,006
(内)広告宣伝費 866
(内)給与及び手当 2,593
(内)地代家賃+減価償却 875
営業利益 1,821

出典:第22期有価証券報告書/単位:百万円
備考:アイ・ケイ・ケイのPLから数値を抜粋

経営指標

原価率 45.9%
売上高広告宣伝費率 4.8%
売上高人件費率 14.3%
営業利益率 10.0%

 

ブライダル業界の上場4社の比較

【ブライダル業界】上場4社のPL比較
4社の実績と経営指標を並べると上記の通りです。どう思いますか?

 

ブライダル企業の経営数値の考察

私自身もちゃんと数字見たのは実は初めてだったのですが、いろいろと気づく点もあるので、個人的意見で恐縮ですが簡単に考察をまとめます(各企業のIRなどに問合せなどをしたわけではないのでその点はご了承ください)。

営業利益率について

見てわかる通り、営業利益率は最も高いアイケイケイで10%、それ以外の企業は一桁台でした。今回の記事を書くきっかけとなった「結婚式はぼったくりだとよく言われる」という点から考えると、その割には決して儲かっているわけではない、というのが正しい見方だと言えるでしょう。最近のITベンチャーなどでは営業利益率で20%~30%の会社も多いのでそれと比較してもかなり低いです。アイテム単価が高いのにここまで営業利益率が高くない理由は会社によって異なりますが、まとめると原価・販売管理費が大きいからだと思います。売上規模で言えばいずれも数百億円規模なので全業態で見ても決して小さい規模ではないですが、1会場建設するのに数億円から数十億円かかり、1組の施行に携わる仕入れもあり、関わる人数も多いので人件費もかかる、さらにゼクシィの掲載費も高く広告宣伝費もかかる、このように売上を得るまでに多くの費用が掛かるのです。
冒頭の議題の結論で言うと、「確かに単価は高いのでぼったくりみたいに見えるが、運営している企業は決して儲かっているわけではない」という感じですね。

原価率と販売管理費率

ここが一番面白いなと思ったのですが、原価率と販売管理費率の違いが各社の戦略の違いを如実に表していると思います。原価率が高く販売管理費率が低いツカダは、業績変動に強い企業体質だと思います。原価のほとんどは変動費なので、仮に集客や成約率が落ち込んで売上が落ちたとしても固定比率が低い分利益を確保しやすいだろうと想定されます。一方、原価率が高くなく販売管理費率が高いエスクリはハイリスクハイリターンな体質だと思います。固定比率が高いので業績が上振れるとその分だけ利益がどんどん出ますが、逆に売上が落ちた場合は一気に利益が出なくなります。
どちらの方法が優れているというわけではないですが、ブライダル業界のように仕組みレベルの変更に長い時間がかかる業界の場合、企業戦略の変更はそう容易ではありません。もしこれから転職を考えていたり投資を検討されている場合はそういう視点でも見てみるといいかと思います。

各社のシェア

ブライダル業界の市場規模は約1兆2,900億円(参考記事はこちら)で、その規模と比較すると、ツカダでシェアが5%前後であり、こちらからもわかるように業界内で圧倒的トップシェアを持つ企業が不在であると言えます。他の業態を見ると数社で寡占状態となっていたり、数十%のシェアを持つ企業がいたりすることが多いですが、ブライダル業界の場合は、

  • シェアを取るためには婚礼組数が必要
  • 婚礼組数を獲得するためにはたくさんの施設が必要
  • たくさんの施設を作るためには多額の資金が必要
  • 多額の資金を獲得するためには建設した結婚式場の長期安定稼働が必要
  • 結婚式場の長期安定稼働には長い時間がかかる

という理屈が働くので、なかなか突き抜けたトップ企業が現れにくいのでしょう。今後、M&Aや提携などが加速して業界再編が起こればこの構図は変わっていく可能性もありますが、現時点から正攻法でこのように企業を成長させていくのは至難の業だと思います。ちなみに、こういう業界だからユーザーにはゼクシィだけが圧倒的に認知され、ゼクシィがトレンドを作る、状況となってしまっているのです。媒体が圧倒的に強いという業界はあまりないので、そういう点でも珍しい業界だと言えるでしょう。

その他

どの企業も商品開発(R&D)への投資がほとんどなかったです。もちろん、IR資料だけでそこまで判断するのは雑ですし、人件費の中に商品開発部門などの人もいるのでしょうが、もっとあってもいいのになー、とは思いました。

 

まとめ

少し長めの記事となりましたが、PLの読み方からブライダル業界の主要4社の経営指標についてまとめました。全企業の有価証券報告書をしっかりと全部を読み込んで書いたわけではないので事実誤認などがあればご指摘ください。会社ごとの特色が出ていて個人的には書いてて面白い内容でしたが、普段あまりこういった数字を見ていない方は、これをきっかけに少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。

 

おわり

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