更新日 2017年05月07日

結婚式場の集客戦略を考える前におさえておきたい4つのポイント(後編)

ブライダルのマーケティング

前回の記事の続きです。集客が落ち込んできた式場が陥りやすい負のスパイラルとして、目標の設定や体系的な理解、結果の仮説を立てることなく施策を始めてしまうことが挙げられます。担当者レベルのマインドとして、クリアに予測と目標を立ててしまうと届かなかったときにドン詰めされるかもしれないという恐怖もあるとは思いますが、式場レベルまたは会社レベルでこれを繰り返していても業績の回復は見込めません。今回は、集客戦略を考える前の4つポイント後編です。前回の記事とあわせて、参考にしていただければと思います。

ポイント③施策を実行する前に期待する効果について仮説を持つ

簡単に前回の記事のおさらいですが、施策を実行する前に大切なこととして、

  1. 目標の数値をきちんと定めること
  2. ユーザーの導線を理解して施策を検討する

この2つのポイントを挙げました。
さて、目標を決め、メンバーで議論して導線ごとの施策(広告費の使い方)も決めたとします。でもそれだけだと足りません。その施策でなぜ目標に届くのか、施策ごとにどういう結果が出たら成功でどういう結果が出たら失敗なのか、施策ごとの成果の判断基準まで落とし込めているでしょうか?全体的な広告費と来館の総数だけをモニタリングしても施策ごとの成果をきちんと判断できないですし、何よりどの施策で何組の来館を取るのかの予測を立てておかなければ施策のよしあしも判断できません。だから、目標数値と施策ごとの数値の積み上げが例え仮説ベースの数値であっても整合性が取れていて関わるメンバーの共通認識となっていることが重要なのです。
以下、具体的なケースを用いて、集客施策の期待効果の考え方、仮説の立て方について書いていきます。

ケーススタディ:目標来館+10組、広告費+100万円の場合

・施策の背景

集客において比較的商戦期といえるGWの集客が思ったより伸び悩み、5月の来館目標、成約目標が未達に終わってしまった。次の商戦期は8月後半のお盆明けからシルバーウィークにかけてだが、年内の受注の進捗が思わしくないためそのタイミングまで待っていられない(9月に来館するユーザーはだいたい年明け~翌年春での受注になるため)。そこで、6月の広告予算を当初の400万円に100万円追加し計500万円とし、それに合わせて来館目標も当初の50組から60組に増やし、年内受注の巻き返しを図るという意思決定がなされた。

・施策の洗い出し

当初予定していた広告出稿は以下の通りでしたが、これに100万円追加してもう一度出稿計画を組みなおす必要が出てきました(金額はわかりやすくするためにてきとーに振っているので細かいところは気にしないでください)。

ゼクシィ 250万円 4ページ
ゼクシィネット 30万円 通常プラン
みんなのウエディング 20万円 通常プラン
ウエディングパーク 20万円 通常プラン
マイナビウエディング 20万円 通常プラン
ハナユメ 20万円 通常プラン
ぐるなびウエディング 20万円 通常プラン
楽天ウエディング 20万円 通常プラン
合計 400万円

この1~8はすべてブライダル媒体への出稿です。各媒体の営業担当にオプションがあるか問合せたところ以下のような広告メニューがあることがわかりました(しつこいですが金額はてきとーです、媒体社への確認もしていません。あくまでこのケースをわかりやすくするためだけの設定です)。

a ゼクシィ 純広告(表4) 300万円 1ヶ月
b ゼクシィネット 特集 20万円 1ヶ月
c みんなのウエディング バナー(外部リンク) 10万円 1ヶ月
d ウエディングパーク バナー(サイト内リンク) 10万円 1ヶ月
e マイナビウエディング プレミアムクラブ出稿 20万円 1ヶ月
f 楽天ウエディング 会員向けメルマガ 10万円 1ヶ月

一方、ブライダル媒体以外への広告出稿の手段として、過去実施したことがあるものも含めて以下のようなものがあります。

g  リスティング広告 年内キャンペーンLP 金額は調整可能 期間は調整可能
h Facebook広告 年内キャンペーンLP 金額は調整可能 期間は調整可能
i  twitter広告 年内キャンペーンLP 金額は調整可能 期間は調整可能
j 記事広告 marry 30万円 ●●PV保証

考えうる施策はこの通りですが、さて、何を実施すべきでしょうか。

・施策の期待効果の仮説

施策の洗い出しが終わったら次は何を実施すべきか期待効果の仮説を立て、施策実行の優先順位を決めます。先に挙げた1~8の施策を見直すか、a~jの施策を追加で実行するか、はたまたその両方を同時に実行するか、予算との兼ね合いを鑑みながら決めていきます。今回は1~8の変更は行わず、a~jの施策から選択して追加実行することにします。
まず、a~fの施策は「ブライダル媒体」への追加出稿です。ひとつひとつ考え方を見ていきます。

a ゼクシィ

予算上不可能なので割愛

b ゼクシィネットの特集

期待効果の算出ロジックは「(ゼクシィ内の)特集ページへの流入数×(ゼクシィ内の)自会場ページへの遷移率×(ゼクシィ内の)CVR」となります。過去出稿したことがあればその数値を参考に来館予約数の期待値を出せばいいですが、そうでない場合は営業担当に過去の他社での実績を聞いてみるのがいいと思います。「特集ページへの流入数」は特集のカテゴリ(ホテルウエディング特集なのかレストランウエディング特集なのかチャペルウエディング特集なのか、など)が影響します。「自会場ページへの遷移率」はその特集への出稿会場数とキラー写真などが影響します。極端な話ですが、出稿会場数が10の特集と50の特集であれば単純比較で5倍の違いがあるので、特集ページへの流入数も5倍の違いがあればいいですが、そうでない場合は期待値は下がります。最後に「CVR」は特集カテゴリと自会場の強みのマッチ度合いが影響します。通常の会場詳細ページ→来館予約完了のCVRは月次でデータをもらえているはずなので参考値として使えると思います。ざっと、このような要素を加味して期待効果を算出します。
ここでは「チャペル特集に出稿すると1組の来館予約が取れそうだ」という結論になったとしましょう。

c みんなのウェディングのバナー出稿(外部リンク)

期待効果の算出ロジックは「バナーのインプレッション(表示回数)×クリック率×CVR」です。「バナーのインプレッション」は広告メニューによって考え方が異なりますが、インプレッション保証であればその保証回数、1ヶ月間などの期間保証であればだいたいの場合に目安の数字は教えてくれるはずなのでこれも営業担当の方に聞いてみてください。「クリック率」も営業担当の方に聞いてみてください。ないと思いますが教えてくれない、具体的な数値が出てこない場合はやめたほうがいいです。効果がわかりませんので。「CVR」は自社サイトのCVRなのでリンク先に設定するLPのCVRなどを参考にしてみるといいと思います(式場サイトのトップへのリンクにする、などはCVに結びつきにくいのであんまりおすすめしないです)。
ここでは「1ヶ月間バナー出稿すると2組の来館予約が取れそうだ」という結論になったとしましょう。

d ウェディングパーク(サイト内リンク)

期待効果の算出ロジックは「バナーのインプレッション(表示回数)×クリック率×CVR」でcと同じなので、営業担当の方に聞いてみてください。最後のCVRが自社サイトではなくウェディングパーク内の自会場のCVRなのでその点だけ注意してください。
ここでは「1ヶ月間バナー出稿すると1組の来館予約が取れそうだ」という結論になったとしましょう。

e マイナビウエディング(プレミアムクラブ出稿)

期待効果の算出ロジックは「(プレミアムクラブ内の)自会場ページのクリック数×CVR」です。営業担当の方に実績を聞いてみるのがいいとは思いますが、ユーザーはどのようにしてこのページにたどり着くのかその導線はどこなのか、出稿している(掲載している)結婚式場数はいくつなのか、どういうアルゴリズムで式場の掲載順位が決まっているのか、などは必ず確認し、想定される数値がどの程度の確からしさなのかは自身でも考えてみるのが(トレーニングとしても)いいと思います。
ここでは「1ヶ月間出稿すると3組の来館予約が取れそうだ」という結論になったとしましょう。

f 楽天ウエディング(会員向けメルマガ配信)

期待効果の算出ロジックは「メルマガ配信数×開封率×リンクのクリック率×CVR」です。※今回の設定では固定で10万円としていますが、課金制度として1通あたり●円というのが一般的なので、セグメントを広く取って配信数を増やせばと料金は高くなり、逆であれば下がります。「開封率」は独占メルマガならタイトルが勝負ですし、通常配信されているメルマガの中の1コンテンツとしてのメニューであれば通常のメルマガの開封率のデータを営業担当の方から聞いてみてください。「クリック率」はメルマガ内のクリエイティブ(テキスト)に尽きます。もし出稿する際は徹底的に研究してみてください。最後のCVRは自社サイトのものなので過去のデータを参考に試算してみましょう。一般的な事例としてはバナーをクリックして遷移してくるよりも前情報を読んだ上でユーザーがクリックしてきているのでCVRは高くなりやすい傾向にあります。
ここでは「1通メルマガを配信すると4組の来館予約が取れそうだ」という結論になったとしましょう。
 
続いて、ブライダル媒体以外への出稿についても考えて見ましょう。

g~i リスティング広告、Facebook広告、twitter広告

このあたりのWEBマーケティングの広告効果の予測については、細かく書こうと思えば恐ろしいボリューム書けてしまうのでざっくりとだけ書きますが、配信設定をそれぞれクリック課金で設定すれば、期待効果は「クリック数×CVR」、その際のコストは「クリック数×クリック単価」で試算できます。
ここでは「リスティング広告はCPA50,000で3組の来館予約まで取れそうだがそれ以上はCPAがあがって見通し不明」、「Facebook広告はCPA30,000で1組の来館予約まで取れそうだが、配信セグメントを絞っているのでそれ以上は難しい」「twitter広告は成果が難しい」という結論になったとしましょう(自社で運用する場合を想定しています、代理店を通して運用する場合は別途で運用手数料がかかるのでその分コストが追加になります。相場的には運用した広告費の20%前後です)。

j 記事広告

期待効果の算出ロジックは「(記事の)PV数×リンクのクリック率×(自社サイトの)CVR」になります。どのメディアに記事広告を出稿するかの選定はターゲットとしているユーザーと近しい属性の読者をどれだけ囲い込んでいるか、によりますのでその選定は慎重に行うべきです。結婚式場の集客を行おうするならば、現状であればmarryが一番有力だと思いますけど。「PV数」は保証されているので固定、「リンクのクリック率」は記事の内容にもよりますが過去の同様の事例の実績を聞いてみるのがいいと思います。「CVR」はバナーやメルマガからの遷移に比べて、しっかり情報を読み込んでからクリックしてきているので、かなり高くなると思います。
ここでは「1本記事広告を出稿すると5組の来館予約が取れそうだ」という結論になったとしましょう。
 
各施策の期待効果をまとめると以下のようになります。

出稿先 広告メニュー コスト 期間 期待効果 CPA
a ゼクシィ 純広告(表4) 300万円 1ヶ月
b ゼクシィネット 特集 20万円 1ヶ月 1組 200,000
c みんなのウエディング バナー(外部リンク) 10万円 1ヶ月 2組 50,000
d ウエディングパーク バナー(サイト内リンク) 10万円 1ヶ月 1組 100,000
e マイナビウエディング プレミアムクラブ出稿 20万円 1ヶ月 3組 66,667
f 楽天ウエディング 会員向けメルマガ 10万円 1ヶ月 4組 25,000
g リスティング広告 年内キャンペーンLP 15万円 1ヶ月 3組 150,000
h Facebook広告 年内キャンペーンLP 3万円 1ヶ月 1組 30,000
i twitter広告 年内キャンペーンLP 1ヶ月
j 記事広告 marry 30万円 約1ヶ月 5組 60,000

さて、何に出稿しましょうか。当初の目標数値は「+100万円で+10組」でしたので、CPA(費用対効果)がいいものから順に並べてみます。
f > h > c > j > e > d > g > b >>>a , i

  • 楽天ウエディングメルマガ:+4組/10万円
  • Facebook広告:+1組/3万円
  • みんなのウエディングバナー:+2組/10万円
  • 記事広告(marry):+5組/30万円

—ここまで合計で、+12組/53万円
こんなきれいな仮説が出ることなんてまずあり得ませんが)この4つの追加出稿で目標値まで届く仮説が導き出せました。ここまでの仮説を持った上で上長に相談し、広告費の追加予算に対してまだあまりがあるのでこれを使い切ってでも更なるアップサイドを狙うのか、広告費はできるだけ使わないように運用するのかは判断を仰ぐといいと思います。あとは実行し、きちんと効果検証をしましょう。
このポイントで重要なのは、スピード感。
ここまで書いた検証をできれば1日くらいでできるように常日頃から準備しておくことが大切です。
※ケーススタディ、いくつかのパターンで書こうかと思いましたがこんなボリュームになってしまったので1つでやめました。見出しがおかしなことになってますが気にしないでください。。

ポイント④施策を実行する前に効果検証できる環境を作る

最後のポイントになります。前のポイントで施策ごとの仮説を立て、費用対効果がよい施策から順番に目標数値に達するまでの施策実行案を決めました。後は天に祈るだけ、、、ではありません。各施策ごとの結果は来館の総数だけではなく、「施策ごと」に判断していかなければ、何が成功し、何が失敗してこの結果になったのか振り返りができませんので、その方法(の案)をご紹介します。

ブライダル媒体への出稿の場合

基本的にどの媒体も営業担当者がいると思うので、媒体側からの成果報告がどのような形式(頻度、内容)で行われるのかは施策実施前に必ず確認しておくべきです。媒体内のゴール地点が来館予約完了までなのか、自社サイトへの誘導までなのかによっても多少は異なりますが、何もレポートなしということがないようにしておいてください。もし何もないということだったらやめたほうがいいと思います。
またそれと同時に、社内でもどの媒体のどの広告から来館予約がきたのか、把握できる環境を整えておく必要があります。媒体上で来館予約が完了する場合は完了と同時にメールが配信されるので(ほとんどの場合)、その数をカウントできれば成果は正確に読み取れます。顧客データをシステムで管理しているのか、エクセルなどのツールで管理しているのか、(ないと思いますが)紙台帳などで管理しているのか、事情は異なるとは思いますが、来館予約者ごとに来館予約経路を集計できるようにしておきましょう。また、自社サイトへ誘導する場合はGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツールで集計することになると思うので、目標設定などきちんと数字が見えるようにしてください。もしバナー広告などの場合はリンクURLにパラメータを付与するなど特定のキャンペーンからのトラフィックであることを確認できるようにすることも必要です。

自社サイトへの誘導のための広告出稿の場合

リスティング広告、Facebook広告、twitter広告であれば、管理画面上で数値を見ることができますし、GAでも見れるので、目標の設定、タグの設置など基本的な準備は必ずやっておきましょう。特に来館予約、資料請求、空き状況問合せなど、CVとなるポイントが複数ある場合は、何を持ってCVとするのかは関係者できちんと認識をそろえておきましょう。
また、記事広告の場合は運営しているメディアもしくはその広告を扱っている代理店から、どのようなフォーマットでレポートが来るのか確認しておきましょう。自社のアクセス解析データと突合せができるような形式であることが望ましいです。

まとめ

いかがでしたか?2回にわたり、集客戦略の前におさえておきたいポイントをまとめました。最初はこんなにたくさん書くつもりはなかったのですが、書いてみたら長くなりました(笑)
集客施策は思いつきで実行するだけではだめです。目標を決め、仮説を立て、実行し、結果を検証する、このサイクルをきちんとまわすことが改善活動につながります。PDCAサイクルをまわす、といえば簡単ですが実務の中で精度高くまわしていくことはかなり難易度が高いと思います。これを読まれた方で結婚式場で集客の実務をやられている方がいれば、少しでも参考になっていれば嬉しいです。
 
おわり

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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