更新日 2017年05月04日

結婚式場の集客戦略を考える前におさえておきたい4つのポイント(前編)

ブライダルのマーケティング

「インハウスマーケターのブログ」ながら、ここまで業界構造や業績管理の仕組み化についてのことしか書いていないので、少しはマーケティングのことも書いてみます(笑)。今回のテーマは「結婚式場の集客戦略の立て方」。ブライダル業界を対象としていますがこれまで同様、結婚式場側の目線で書いていきます。集客が順調なので困っていない、という式場は今の日本にはほとんどないと思いますので、集客に困っている式場のマーケ組織の担当者や集客責任者の方などは、ぜひ参考にしてもらえればと思います。

そもそも「戦略」をきちんと考えていますか?

式場の集客が年々落ち込んできているから何とかしたい。こう考える集客担当者や支配人の方は多いと思いますが、では具体的にどんなことをしていますか?

  • 撮影をしてゼクシィの写真を変える
  • ゼクシィの出稿ページ数を増やす
  • ネット媒体の特集枠に出稿する
  • フェアの文言を変えてみる
  • 掲載見積りを下げる
  • エージェントの訪問回数を増やす
  • お得な限定プランを増やす
  • フェイスブック広告、ツイッター広告を出してみる
  • marryに記事広告を出してみる
  • などなど

対策として間違ってはいないですが、これらは「戦術」であって戦略ではありません。なぜこの広告を行うのか、どのような結果が出たらどう判断するのか、本当にそれが最善の施策なのか、など実施前にできるだけ精緻な仮説を持っていなければ、いろいろ試してはみたが効果がイマイチだった、という繰り返しで終わってしまう可能性が高いです。予算が潤沢にあるならばそれでもいいですが、そんな式場は今のご時勢ではほとんどないはずです。
10年前と比べてゼクシィの効果が落ちてきているといわれているブライダル業界において、困ったからとりあえずゼクシィのページ数を増やしておけばいい、というような判断をしている式場はかなりの確率で集客に苦しむと思います。スマホの普及や結婚式への意識の多様化、クレイジーウエディングのような自由な結婚式サービスの台頭など、ここ数年で業界やユーザーを取り巻く環境は大きく変化しました。
ただ、そんな中でも基本的なマーケティングの概念である「自社(自会場)のUSP(※)を届けたいユーザーに適切に伝えて購入してもらう(申し込んでもらう)」ということは今も変わりません。そのUSPの提案の仕方や伝えるためのデバイスなどが多様化しているだけなのです。
(※)USP:Unique Selling Proposition・・・「独自の売りの提案」を簡潔にまとめたフレーズであり、マーケティングコンセプトを端的にまとめたもの。
いろいろと施策の手数を打つスピードも大切ではありますが、しっかりと成果に結びつけるためにもまずは集客戦略を整える上で必要な考え方についてこの記事では書いてみようと思います(書いてみたら長くなったのでまずはここから、ということで・・・)。

ポイント①:数値の目標をきちんと定めること

集客が少ない、という課題になっているのであれば、まず何組の来館を獲得できたらいいのか、そのための広告宣伝費はいくら使っていいのか、などをきちんと数字として可視化することが大切です(「結婚式場の年次予算の立て方」や「1来館を獲得するのにいくらまで広告費を使っていいのか判断する基準」、についてはここで書くと長くなるので、後日単独でそれをテーマにした記事を書きたいと思います)。

項目 現在
来館 50
成約 20
広告費 400万円

例えば現在の数値が上記表だった場合に、どの程度の数字を目指すのかによって対策が変わります。

項目 現在 目標案① 目標案② 目標案③
来館 50 60 60 70
成約 20 24 24 28
広告費 400万円 400万円 500万円 600万円

例えば、案①であれば、広告費を追加で使うことなく来館数を10組増やしたいという目標です。利益がぎりぎりもしくはすでに赤字となっている式場であれば今以上に広告費を使うことができないのでこのような目標数値になります。この場合の基本方針としては、現状投下している広告からの効率アップを図るための施策、効果が出ていない広告・媒体のポートフォリオ再検討となります。
案②は、現状から追加で広告費を100万円/月まで使っても大丈夫と判断されたケースで、それなりに大きな規模で式場運営をしていて投資できる体力がある場合か、まだ赤字にはなっていないが先に投資をしてでも対策をしたいと考えている式場がこういった目標になると思います。この場合の基本方針は①の場合に加え、新規投資先の開拓も含まれます。
案③は②と方針は同じだが目標数値がより高い場合です。方針として小さな施策の積み重ねだけだと目標数値に届かないので、より大きめ投資施策も視野に入れて検討しなければなりません(なのでパワーがかかります)。
今回は例として上記3パターンを出しましたが、この目標数値が定まらない状態で施策の検討や実行を繰り返している式場が意外と多くいます。何組来館が足りないからいくら使うのか(もしくは使わないのか)、この目標がないと結果のよしあしが判断できないので、的確な振り返りができません。くどいですが必ず目標数値を決めましょう。
目標数値が決まったら、では次にどうやってその数値を目指そうかと具体的な施策を検討していくことになります。

ポイント②:ユーザーの導線を理解すること

ユーザーが結婚式場に予約するまで
集客を増やすための施策は数多くありますが、それぞれの施策がどのようにユーザーに届き、ユーザーがどのように感じるから来館につながるのか、まずはその構造を知っておくことが必要です。私は上記図のように大きく分けると3つの導線があると考えています。それぞれ以下のような特徴があります。

ブライダル媒体経由で来館する

ゼクシィやみんなのウエディング、ウエディングパークのような結婚式場情報に特化した媒体に式場を掲載し、そこから来館を獲得する方法です。ブライダル媒体をさらに分類すると、ゼクシィやレイウエディングのような雑誌媒体、ゼクシィネットやみんなのウエディング、ウエディングパークのようなウェブ媒体、ゼクシィなびやマイナビウエディングのようなエージェントがありますが、それぞれの経路別の具体的な攻略法はまた別の記事で書くとして、基本的な来館までのKPIは以下の式で表すことができます。
『その媒体を見るユーザー × 自会場の発見率 × 来館予約率 = 自会場の来館数』
雑誌のゼクシィを例に数字を入れてみると、

  • ゼクシィを見るユーザー:10万人が購入している
  • 自会場の発見率:10%
  • 来館予約率:0.1%

→10万人×10%×0.1%=10来館、となります。
この数字はてきとーに割り振ったものですが、こういったブライダル系媒体からの来館を増やすため必要なことは「媒体内でのリーチを上げる(自会場の発見率を上げる)」か「媒体内でのCVRを上げるか(来館予約率を上げる)」の2点に集約されます。

媒体内でのリーチを上げる(自会場の発見率)

媒体に広告を出稿してもその中でユーザーに見つけてもらわなければ意味がありません。この発見率の基本的な考え方として、雑誌媒体であれば普通の人は前から雑誌を読んでいきますから「目立つところに掲載される」=前のほうのページに出る、表4などの純広告ページに出稿する、などが施策になります。特にゼクシィは月によっては1,000ページを超えることもあるので、ゼクシィ内のどこに掲載されるかは発見率にとって非常に重要な要素になります。
ウェブ系媒体も同様で、普通の人は上からページを見ていきますから「上位表示される」=出稿量を上げる、特集など通常検索とは別のプランに出稿する、口コミサイトであれば人気度や点数を上げるための施策を講じる、などが対策になります。
エージェントであれば自社会場の発見率は「なびで式場案内する人に自社会場がどれだけ認知されているか」と言い換えることができます。「認知される」=訪問して説明をする、自社会場に招待して案内する、などが対策になります。
このようにリーチを上げるための施策はいくつかありますが、雑誌、ウェブの場合は上位表示されるためにはお金がかかることが多く、一方口コミのランキングを上げるためには時間がかかる、といった点が施策の難しいところです。

媒体内でのCVRを上げる(来館予約率を上げる)

媒体内で見つけてもらっても来館につながらなければ意味がありません。次に重要なのが来館予約率を上げることです。媒体に掲載される式場の情報は、だいたい以下のような項目になります。

  • 会場内の写真
  • 見積り
  • プラン
  • ブライダルフェア
  • アクセス
  • 口コミ

ユーザーは数多くの式場の中から、自分たちにあう式場を上記の情報を頼りに選んでいくので、この情報をきちんと整理し自会場のいいところが伝わるように掲載することが非常に重要です。具体的な施策として、撮影をして写真を差し替える、見積りの価格を変更する、プランの内容を変更する、フェアの内容や文言を修正する、などが挙げられます。
撮影を除き、特にウェブ系媒体であれば管理画面からすぐに変更ができることが多いので、即効性は高い反面、きちんと施策の履歴を残しておかないと正しい効果検証ができないのでその点は注意が必要です。
ブライダル媒体の施策を行う場合は、媒体内の認知率なのか、そこからの来館率なのか、どちらのKPIにどういう結果が出たら成果なのかをきちんと把握してから実施することが大切です。

自社サイト経由で来館する

次に自社サイト経由での来館を増やすための施策です。どの結婚式場もホームページはほぼ間違いなく持っていると思いますので、そこからの来館をどのように増やすか、を考えていきます。基本的な考え方は以下の通りで、来館数を増やすためにはサイトの来訪者数を増やすか、来館予約率を上げるか、この2点に集約されます。
『サイトの来訪者数  × 来館予約率 = 来館数』

サイトの来訪者数を増やす

ウェブサイトへの来訪者数(ここではセッションとします)を増やすには、広告で流入させるか、自然検索で流入させるか、Social(SNS)から流入させるか、referral(リンク)から流入させるか、がメインになります。結婚式はリピートがない業態なのでBookmarkしてのDirectは考えなくていいと思います。

広告で流入させる

方法としては、リスティング広告(検索連動)、SNS広告、GDN、YDN、DSP、Lineなどでしょうか。いずれも有料施策になるので、投下コストとCPAはきちんと把握しなければなりません。あくまで主観ですが、そのまま式場HPをランディングページに設定して新規ユーザーをとってきてもCVを獲得することは難しいと思うので、ユーザーにとってのメリットの大きいキャンペーンなどを企画し、特設LPをつくり、そこに誘導する、というフローで活用するのが効果が高いと思っています(このあたりもなぜそうなのかはいずれ書きます)。

自然検索で流入させる

方法としては、SEO対策です。指名検索の場合は、よっぽど知名度の高い式場でない限りは、何かしらのブライダル系媒体で「あ、いいな」を思って会場名で検索をしてたどり着く場合がほとんどだと思いますので、対策としては会場名で検索をしたときにきちんと1位表示されること、くらいしかないかと思います。指名ワードの検索数を増やそうと思うとブライダル媒体内での認知率を上げるか、TVCMなどのマス広告を使って大きなくくりでの認知率を上げるかとなるので、コストがかなりかかります。一方、非指名ワードの検索からの流入を上げようとする場合は、狙うキーワードの設定が重要です。一般的には「エリア×結婚式場(表参道 結婚式場、など)」や「会場スタイル×エリア(ゲストハウス 東京駅)」などがそれなりに検索ボリュームもありCVにもつながりやすそうなキーワードなので、そのための対策を行うと効果は出ると思います。ただ、このあたりのキーワードは、ゼクシィやみんなのウエディングなどブライダル媒体系が上位を占めていてかなり激戦なので1ページ目に入れたらOK、くらいの目標で実行していくことがいいのではと思っています。

Social(SNS)から流入させる

結婚式場が運用しているSNSとしてはFacebook、Instagramが多いでしょうか。運用に苦戦している式場も多いような気もしますが、SNS運用の基本である「ファン数を増やす」「営業投稿に偏り過ぎない」などが大切だと思います。うまくいっていそうな事例としては、TRUNK(HOTEL)などは開業前からファンの囲い込みに成功しているように見えます(主観です)。

referral(リンク)から流入させる

外部サイトからのリンクでの流入施策は、コーポレートサイトからの流入、姉妹店(系列店)からの流入、記事広告(もしくは取材記事)からの流入になります。複数店舗を運営している会社であればきちんとリンクの設定ができているかどうか確認してみてください。ただ、大きく効果を期待できるわけではないのであまり優先度は高くないですね。記事広告からの流入という意味では、執筆時点で私がブライダル系のメディアで有用だと思うのはmarryだけです。それ以外はセッションは稼げてもCVまでは遠い印象ですね。また、取材記事からのリンクは会社の広報/PR機能との連携が必須なので、広報戦略とあわせて考えることが大切です。

来館予約率を上げる

来館予約率を上げるための施策は流入経路ごとに細かく異なりますが、いずれにも共通するのは、

  • サイト内コンテンツを充実させること
  • UI/UXをきちんと設計すること
  • フォームへの導線をわかりやすい設計にすること
  • 入力しやすいフォームになっていること
  • (広告からの流入の場合は)LPを設けていること

いずれも基本的なことですが、これができているかどうかCVRは大きく変わります。特にブライダルの場合はデザインにこだわるあまり、サイトが非常に重かったり、どこに何の情報があるのかわかりにくかったり、ということが多いような印象があります。自会場のブランドを伝えるためのサイトだと割り切っているのであればそれでもいいですが、来館獲得のためのツールの一つと捉えているのであれば、こだわりもほどほどに使いやすいサイトを目指すべきです。

自社SNS経由で来館する

先ほどの自社サイトへの流入施策のところでも書きましたが、目的を決めてきちんと運用することが大切です。アカウントページだけあって更新されていない、という状態はむしろマイナスになるので、やるならやる、やらないならやらない、と方針を決めて地道に取り組みましょう。
施策をまとめると以下のような表になりますので、きちんと理解しで何を目指した施策なのかをメンバー全員の共通認識として持てるようにすると効果も上がりやすくなると思います。
導線ごとの集客施策まとめ

まとめ

書き始めたら思いのほか長くなったので、ここまで前半ということで一回まとめます。

  • 集客に困ったからといって手当たり次第に施策を実施することは非効率
  • 施策を実行する前に必ず数値の目標を決める(特に来館数と広告費は必須)
  • 施策を実行する前に、各施策はどのKPIに寄与して最終的に来館向上につながるのかを共通認識として持つ

この3つがポイントです。
次回の後半は、次の2点について書く予定です。
③施策を実行する前に期待する効果について仮説を持つ
④施策を実行する前に効果検証できる環境を作る
 
2017/5/6(追記)
次の記事はこちら
 
おわり

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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