更新日 2022年04月07日

結婚式場のアイテム部門内製化に関するメリット・デメリットの考察

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

1組の結婚式をつくるのには実に様々なアイテムやサービスが必要で、結婚式場企業がこれらのアイテムをどこまで自社で用意するのか(=内製化)、判断が難しいところです。今回はアイテムの内製化について、基本的な考え方からメリット・デメリットについて考えてみます。

 

内製化とは?

  • 内製:ドレスやフラワー、サービス、キッチンなどのブライダルコンテンツ部門を自社で組織として持つ
  • 外注:外部の企業と取引する
409_結婚式場のウェディングアイテムの内製と外注の違い

例えばドレス部門を内製化すると、ドレススタイリストは自社社員となり、ドレスを自社で保有して在庫を持つことになり、ドレスショップやサロンも自社で構えることになります。一方外注の場合は結婚式場で成約いただいたお客様を外部提携しているドレスショップに送客するというスキームなので、スタイリストは他社のスタッフ、ドレス自体も他社の保有資産となります。

内製化戦略を進めるというのは上記ドレスのように結婚式に必要なアイテムをどこまでの範囲で自社のブランドで用意するか、というのと同義です。広く例えるならスーパーのプライベートブランドのようなものですね。この内製化は大手企業を見ても企業ごとに戦略が異なっていて非常に興味深い点であるものの、これからの時代を見たときにどのようなサービス提供をしていくのかが企業経営にもダイレクトに影響を与えるのだ判断が難しいところではあります。

 

内製化と外注のメリット・デメリット

では、内製と外注で具体的にどのような違い方があるのか、どんなメリットとデメリットがあるのか、ポイントごとに分けてまとめていきます。

1.コストのかかり方の違い

  • 内製化するとコストは固定費
  • 外注するとコストは変動費

ここが一番の違いです。先ほどと同様にドレス部門を内製した場合で考えてみると、ドレススタッフの人件費、ドレスショップの地代家賃や減価償却、ドレス購入にかかる減価償却をすべて自社のコストとして計上することになり、これらは施行組数が何組か(売上がいくらか)と関係なくかかる固定費になります。一方、外注の場合は「成約組数×送客率×ドレス仕入れ単価」がコストになるので、極端な話施行組数が0組になるとコストはかからなくなります。つまり変動費。

こう書くと固定費だとコストが重く見えがちですが、一般的な契約内容の歩率を考えると施行が増えた場合は固定費であれば伸びた分だけ利益が増えていきます。逆に外注の場合は施行が増えた分だけコストも増えるのでそこまでドレスでの利益は伸びていきにくいと言えます。
ということで雑にまとめると、下記のようになります。

  • 内製化するとコストが固定費になり施行減少時のリスクが高いが、施行が伸びると利益が伸びやすい
  • 外注するとコストは変動費になるので施行減少リスクは吸収できるが、施行が伸びても利益は伸びにくい
409_内製と外注のコストのかかり方の違い

2.クオリティの違い

  • 内製化するとクオリティを自社でコントロールできる
  • 外注するとクオリティを自社ではコントロールしにくい

内製化するとアイテム部門のスタッフは自社社員となるので、自社ブランドに合った採用、育成、マネジメントをすることができます。商品ラインナップの決定や提供オペレーション、商品管理フローまですべて自社で決めることができるので、このようにお客様に提供したい!というクオリティをコントロールしやすくなります。

一方、外注の場合はスタッフや商品はすべて他社のものとなるので、自社から希望や要望を伝えることはできるものの、直接コントロールすることができません。結婚式場の方が力関係的に強ければ「要望を聞かなければ契約切るぞ」的な高圧的な交渉も可能ですが、なかなかそんなケースも少ないと思います。

3.スタッフのマインドの持ち方の違い

  • 内製化すると安定した環境になるが営業部門の下請け的な立ち位置になりがち
  • 外注すると常にアイテム業者間の競争環境にさらされるし選択権は式場側にあるものの、ユーザーからの支持の高いアイテム業者の場合は歩率交渉で強気にこられる

内製化されたアイテム部門は基本的に自社の施行を担当することがほとんどなので、悪く言えば「待っていれば勝手にお客様がやってくる」という状態になります。アイテムの観点で積極的に受注活動を行わなくても仕事が入ってくるというのは経営観点では非常に安定していていい環境ではあるのですが、どうしても営業部門の下請けになりがちで「自分たちでお客様を獲得していこう!」というマインドが働きにくいと言えます。

一方、外注の場合は、アイテム企業はいつ契約を切られるかわからないという競争環境にさらされて事業運営をしているわけですから、そういったマインドが常に働いている状態になります(もちろん、契約内容によって例外はたくさんありますよ)。結婚式場と提携企業の立場の強さは歩率交渉時に顕著に表れるので、提供できる組数が多い式場であれば歩率は有利にできますが、逆にユーザーの支持が高いアイテム企業だと歩率交渉で不利になりがちです。

4.接客業務以外に発生する業務工数の違い

  • 内製化すると採用、マネジメント、評価設計、キャリアパス設計、オペレーションで使うシステム設計など、管理系業務がかなり多い
  • 外注すると基本的に受発注業務以外は発生しない

アイテム部門を内製化するとその部門は自社社員となるので他職種の社員と同様に採用、マネジメント、評価設計、キャリアパス、オペレーションで使うシステム設計などを行う必要があります。これ思っている以上に大変で、特に他職種との公平性を担保した評価設計は難易度が高いなぁと思います。

一方、外注の場合はこういった業務が発生しません。基本的には受発注取引に終始するので、コントロールできない分工数はかかりにくいと言えます。

5.キャリアパスの違い

  • 内製化すると同社内の他職種への異動など、一社内でのキャリアパスの幅が広いことが多い
  • 外注すると自社内の職種はほぼプランナーに限定される(ちなみに、外注先のアイテム専門企業は単一職種ステップアップキャリアが多いので、転職が必要になることが多い)

アイテム部門を内製化すると、一社内で社員に提供できる職種の幅が広がります。そのため、社員に対して職種を超えた異動も提示できるようになり、キャリアパスが多様になります(プランナーからスタイリスト、サービスからプランナー、など)。特に、新卒採用に力を入れている企業は職種を狭めずに採用して、一人一人に合った職種へ配属するという方法も取れるようになりますね。

一方、外注の場合は結婚式場で働くスタッフはほぼウェディングプランナーに限定されますので、この会社や会場でプランナーをするか他の会社に行くか(=転職)、という選択になりがちです。

 

結婚式場がアイテム部門を内製化することのメリット・デメリットまとめ

409_内製と外注の違いまとめ

ポイントを見るとどれも一長一短なので正解があるわけではありません。内製するかどうかまたは内製しているけど外注に切り替えるかどうか悩んでいる方の参考に少しでもなれば嬉しいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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