更新日 2021年09月26日

結婚式場運営の差別化の考え方

0101_結婚式場の「差別化」の考え方

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

事業運営やマーケティング活動において競合他社のサービスとの差別化は重要です。

しかし、漠然と「差別化」という言葉だけが独り歩きしてしまっていて、どんな視点で差別化をするか、どのような違いを明確にするかなどの具体的な議論がなされないまま表面的なハードやソフトの違いを差別化と呼んでいるケースも少なくありません。

今回の記事では結婚式場運営における差別化ポイントの考え方についてまとめます。

 

差別化とは?

差別化とは競合他社に対して自社のポジションを確立するために意味のある違いを打ち出す活動のことをいう。
出典:コトバンク

結婚式場運営においては、競合他社会場との違いを打ち出すことは必須と言えます。

というのも、数ある結婚式場の中から自社の結婚式場を新郎新婦に選んでもらうためには「選んでもらう理由」が必要であり、他の会場と見た目も中身も同じであれば、あえてそこで挙げようと思ってもらえないからですね。

集客面でも選ばれる理由が必要ですし、来館後は接客やハード面でも差別化されていることが必要です。シンプルに言うなら「差別化=新郎新婦に選ばれる理由」と言えます。

 

差別化はなぜ重要なのか?差別化戦略で重要なこと

ブライダル業界に限らず、現代社会は「選択肢過剰の時代」と言われています。

スマホの普及によって情報へのアクセスが容易になり、様々な情報を簡単に収集できる時代になりました。そしてたくさんの情報があるがゆえに、選択肢が多過ぎて違いがわかりづらく、消費者としてはどれを選んだらよいのか迷ってしまう状況です。

数多くある選択肢の中から選んでもらわなければ、集客もできないし成約もできない、そして売上を得られないという状況になります。

差別化戦略を策定する時に重要なのは次の5つ。

  • 誰に向けたサービスなのかを考える
  • 何の課題を解決サービスなのかを考える
  • どのように解決するサービスなのかを考える
  • 商品やサービスのセールスポイントを明確にする
  • 商品が生まれた背景や作りたい世界観からストーリーを作る

とはいえ、結婚式場の数がこれだけ多くある現代で競合他社と圧倒的な差別化を図ることは難しく、ちょっと考えて1つのポイントだけで突き抜けることはかなり困難と言えます。

自社の結婚式場を他社とは異なる際立った存在として販売するのであれば、まずはどのような差別化ポイントを持っているのかを探ることが重要です。

 

結婚式場運営における差別化ポイント

では次に、上で書いたような差別化戦略を「結婚式場運営」で検討しようとしたら、具体的にどのようなポイントとなるのか、カテゴリごとに例として挙げていきます。

ハードの差別化

  • チャペルのバージンロードの長い
  • チャペルの天井高が高い
  • 大聖堂タイプのチャペル
  • バンケットの雰囲気がユニーク
  • バンケットに階段がある
  • バンケットの横にガーデンがある
  • バンケットの横にプールがある
  • バンケットが広い
  • オーシャンビューなど景観抜群
  • 他の花嫁とバッティングしない導線
  • 付帯設備が充実している
  • 親族控室がそれぞれである
  • 宿泊施設を持っている/提携している
  • ホワイエが広い
  • ブライズルームがある
  • 授乳室やキッズスペースがある
  • アクセス抜群
  • 駐車場がある
  • その他

ソフトの差別化

  • 料理の食材にこだわっている
  • ドリンクの種類が豊富
  • サービスマンのクオリティが高い
  • ここでしか扱っていないドレスのブランドがある
  • フローリストのスキルが高い
  • 司会・音響スタッフのスキルが高い
  • 会場装飾のクオリティが高い
  • 演出の独自性(プロジェクションマッピング、プラネタリウム、など)がある
  • プランニングのテーマ設計が上手
  • 一貫担当制
  • 打合せを遠隔でできる、打合せスケジュールの柔軟性が高い
  • 試食が何回もできる、どんな試食をするか選べる
  • 価格が安い
  • 持込料が無料
  • 披露宴時間が長いまたは選べる
  • ターミナル駅との送迎バスを運行している
  • その他

オペレーションの差別化

  • 資料請求してから届くまでの時間が短い
  • 来店予約後の対応スピードが速い
  • 新規接客の流れと時間が明確にマニュアル化されている
  • 新規接客のアサインルールと事前のシナリオがMTGまで含めて定型化されている
  • 新規接客後の振り返りのポイントと使用ツールが定型化されている
  • 打合せのアイテムごとの売値・原価と販売優先順位、トークスクリプトが明確化されている
  • 打合せプランナーのアサインルールと単価アップのためのシナリオ構築の業務が定型化されている
  • 打合せの振り返りポイントと使用するツールが定型化されている
  • プランナー個人のスキルアップ、キャリアパスが明確化されている
  • サービスの教育マニュアルや採用から現場までのフローが明確化されている
  • その他

3つの差別化ポイント

カテゴリごとの差別化ポイントとしてはざっとこんな感じかと思います。

101_結婚式場の差別化ポイント

上図の真ん中のところですね。

ハードとソフトの差別化ポイントは、ゼクシィなどの集客媒体に掲載することでそのまま顧客に訴求することができますが、オペレーションの差別化ポイントは媒体に掲載されることがないので発信が非常に難しいと言えます。

差別化戦略を考えるときは、これらをどのように組み合わせて、誰にどのように遡及していくのか、サービスそのものを設計していくかが重要になるわけですが、個人的な意見としては、差別化を考えるときの思考がハードに偏りすぎているように思います。

単純にチャペルが好きだからここで、という時代はもう終わりました。総合的な顧客体験をどうやって高めるか、そのためにどういうデザインをするかを考えることが求められるようになってきています。

 

結婚式場運営で差別化を考える時のコツ

カテゴリごとの差別化ポイントには以下のような特徴があります。

  • ハードはわかりやすいが、真似されやすく時代のトレンドの影響を受けやすい
  • ソフトも分かりやすく訴求しやすいが、根拠が乏しくよっぽど特徴がないと誰でも言える内容になってしまう(オリジナルウェディング、などもそう)
  • オペレーションは実はとても強みになるが、とても訴求しにくい

ハードで勝つのであれば、スカイツリーで結婚式、とか、富士山で結婚式、とかそれ自体で唯一無二になるくらい尖っていないとそれだけで勝つことは難しいでしょう。ソフトも同様に、料理にこだわっています!とか、ドレスにこだわっています!くらいであれば誰でも言えます。もちろん不要ということではないですが、それで勝ち切ると決めたのであれば相応の特徴をきちんと考えなければいけません。

一方、あまり差別化検討会議で議題に上がらないのがオペレーションの差別化。これは個人の意見ですが、誰もやっていない新しいことをしなくても、誰もがやっているオペレーションを他社の2倍の精度でやれば勝てると思います。いや、本当に。

以前働いていたブライダル企業の時も、人材紹介業の企業の時も、いずれもオペレーションを徹底的に磨くことで勝つことができていましたし、他社が見落とし気味なポイントであるがゆえに狙って整えに行けるポイントだと思っています。

オペレーションで差別化できれば(オペレーションの質を最大限高めることができれば)、

  • お客様に提供するサービスの質が安定する
  • スタッフのレベルが上がるスピードががる
  • 業績向上に対して行うべき事項の実行精度を高めることができる

つまり、間接的に業務クオリティを向上させることができるので、業績向上につなげることができますし、実際それで伸びてきている企業もあるので、もし結婚式場の差別化を考える際は、どこまでやり切れるのかというオペレーションの差別化、というポイントも選択肢の1つとして考えてみてもらえればなと思います。

ただ、一つ注意点として、結婚式場や企業の文化と著しく乖離がある場合は、その方針を打ち出すとスタッフとハレーションを起こすリスクが高いので、実施・浸透させていくためのスキームはじっくりと時間をかけて設計していくべきです。正しいことを決めたとしても、最終的にそれを実行していくのはスタッフとなるわけですから、そこは慎重に検討していきましょう。

 

結婚式場の差別化についてのまとめ

新規出店の打合せやリブランド、マーケティングの打合せをしていると、どうしても話題が「他社との目に見える違い」に終始してしまいがちなのですが、当たり前のことを他社よりずっと高い精度で行う、というのも十分に差別化ポイントになりうるよ、ということを伝えたくて書いた記事です。

特に、ブライダル業界は結婚式への思いが強すぎるがゆえにオペレーションが個人によってまとまっていない会社も多いですから、この機会に考えるきっかけになってもらえると嬉しいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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