ブライダルビジネスの構造と適切なKPI

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ブライダル/結婚式場の構造とKPI

今回は結婚式場を運営する企業目線でブライダルビジネスの基本的な構造と設定すべきKPIについて書きます。
結婚式にはウエディングプランナーをはじめ、ドレススタイリスト、フローリスト、サービス、キッチン、そしてマーケティング部門などの本社機能まで、多くのスタッフが携わっていますが、どの職種、どのレイヤーで仕事をしている人にとっても最も基本的で最も重要なことなので、少々長くはなりますが、ご覧ください。

結婚式までの基本的な流れ

結婚式までの流れと結婚式場の対応部門

上の図は、ごく一般的な結婚式場探しの流れを書いたもので、ユーザーの各フェーズについて詳細を解説します。

1.情報収集

結婚が決まったカップルの多くは、まず情報収集から始めます。一番有名なのはゼクシィですが、ゼクシィ以外にも25ans Weddingやレストラン&ゲストハウスウエディング、関西圏のレイウエディングなどの結婚情報誌、みんなのウェディングやウェディングパーク、ハナユメなどのウェブサイト、ゼクシィなびやマイナビウエディングなどの結婚式場紹介カウンターなど、数多くの収集方法があります。結婚式場のマーケティングの観点でいえば、まずはユーザーに自社の会場を知ってもらわなければならないので、それぞれの媒体に広告の出稿をします。規模の大きな会社であれば本社のマーケティングを管轄する部署が行っている場合が多いですが、少数会場を運営していたり会社の方針によっては会場のプランナーや支配人が直接各媒体とやり取りしているケースもあります。

2.問合せ

ユーザーが雑誌、インターネットなどでいろいろな情報を収集し、気に入った会場を見つけたら次は問合せです。問合せの方法としては「来館予約」「資料請求」の2つを設定している式場が多く、場合によっては「空き状況問合せ」を含めて3つのこともあります。来館予約は実際に式場の見学を予約すること、資料請求はその式場の資料を請求すること、空き状況問合せは希望する挙式日がまだ空いているのかを問い合わせることをいいます。問合せの種類も、電話で問合せる、インターネットで問合せる、最近ではFacebookやLINEなどのSNSでメッセージを送って問合せるなど、多様化してきています。問合せの対応として、コールセンター機能を自社で所有しているもしくは外注している場合はその部門が、そうでない場合は会場のスタッフが電話対応、メールの返信を行います。

3.見学予約の確定

ユーザーから問合せがあったとしても必ずしも来館の予約が確定するとは限りません(ゼクシィネットのリアルタイム予約は除く)。来館予約を受けた場合でもすでに希望の見学日時が満席だった場合は予約が確定しないこともありますし、資料を送付してもユーザーのイメージと違えば見学には来ませんし、空き状況問合せの希望挙式日がすでに予約で埋まっていればその式場が候補から外れる場合だってあります。このような場合、見学の予約にしっかり結び付けられるように、問合せ後追いの電話やメールでのやり取り、別の空いている日時の提案などを行います。

4.式場見学(来館)

ユーザーが実際に式場に来てくれることを言います。式場側の目線で言えば「来館」と同議です。見学予約が確定しても、急な用事が入っていけなくなった、ほかの式場で申し込んだのでキャンセルする、何の連絡もなく来ない、など様々な理由でキャンセルになることがあるので、必ずしもきてくれるわけではありません。
実際に来館した後は、分業制の式場なら新規プランナーが、一貫担当制の式場ならウエディングプランナーが接客をします。一般的な初回来館時の接客フローとしては、結婚式の有無などによって多少前後はしますが、おおむね以下のとおりです。

  1. アンケート記入
  2. ヒアリング
  3. 内覧(式場内を見学すること)
  4. 試食
  5. 見積り説明
  6. クロージング
  7. (ご成約の場合)契約書類記入/約款説明

所要時間として、だいたい3時間前後が一般的でしょうか。ブライダルフェアによっては模擬挙式をやったりウエディングドレスの試着ができたりと内容は様々ですが、この3時間の中でどういった案内をできるかによってユーザーが申し込んでくれるかどうかが決まります。

5.式場決定(成約)

式場見学の案内でユーザーに気に入ってもらえたら無事決定です。このタイミングで決まることは、申込日、挙式日時、挙式会場(チャペル)、披露宴会場(バンケット)、仮の見積り(いわゆる初期見積り)、です。1ユーザーあたりの式場決定までの平均見学会場数は2.5~3と言われており、これを裏返すと、1/2.5~1/3(33%~40%)が業界全体の平均的な成約率となります。

6.打合せ

会場に申し込みをしても、多くの場合すぐに詳細の打合せは始まりません。だいたい4ヶ月前~早くて半年前くらいから打合せ始まります。分業制の式場の場合は、初回見学時に担当してくれたプランナーと、実際に結婚式を一緒に創っていくプランナーは別になりますし、ドレスの担当者やフラワーの担当者、司会者、音響の方など多くのスタッフと打合せを行います。この打合せのフェーズをオペレーション観点で見ると、ドレスを決める、料理を決める、引出物を決める、当日の進行を決める、演出を決める・・・、など結婚式の詳細を一つずつ決めていくフェーズとなりますが、一方事業者側の業績観点で見ると、ドレスの単価を上げる、両氏の単価を上げる、引出物の単価を上げる、というようないわゆる「単価アップ」がメインとなるフェーズとなります。よくある「最初契約したときは200万円だった見積りが気付いたら300万円に・・・」という話はここで起こります。

7.結婚式

当日です。これまで打合せを重ねてきたものが一つの形となる日です。ブライダルの現場に携わるすべてのスタッフが登場します。

 

ブライダルビジネスでモニタリングすべきKPI

上の図は、ユーザーフェーズごとのKPIを表現したものです。少なくともこの7つについては必須で把握しておくべきものと思うので、これらについて一つずつ解説します。

1.広告宣伝費/ユーザーの情報収集

広告出稿にかかる費用です。雑誌への出稿やウェブ媒体への出稿など固定金額の契約の場合と、成約報酬型、来館報酬型などの成功報酬型の契約をしている場合があります。

2.反響数/ユーザーからの問合せ

会社によって表現は変わると思いますが、「ユーザーから問合せがあった数」です。上述の通り来館予約、資料請求、空き状況問合せなど複数の問合せ方法を設けている式場が多いですが、問合せ以降のKPIの数値に大きな差がある場合は合算で集計するのではなく別々で集計すべきです。

3.来館予約数/ユーザーの見学予約確定数

来館の予約が確定した数です。
反響数×来館予約率=来館予約数、となります。どの方法を反響として定義するかにもよりますが、おおむね70%~80%程度でしょうか。

4.来館数/ユーザーが実際に来館した数

式場に来館した数です。
来館予約数×来館率=来館数、となります。平均的には20%~30%程度だと思います。

5.成約数/ユーザーから申し込みを獲得した数

申し込みをした数です。多くの式場の場合、申込金の受領と申込書の記入、約款の説明をもって成約と定義しています。
来館数×成約率=成約数、となります。平均的には40%前後だと思います。

6.組単価/打合せを経た最終的な単価

1組あたりの最終的な見積りの金額です。結婚式の見積りは申し込み時から平均して80万円程度上がりますが、上がった後の金額です。
アイテムごとに細かく定義するなら、料理単価×数量+飲料単価×数量・・・となりますが、いったんここでは割愛します。

7.売上

成約数×組単価=売上、となります。

ここまでの各KPIをまとめると以下の通り。これらの数字の相関性は日常的に引き出せるようにしておくといいでしょう。

KPIの関係性

 

ブライダルビジネスのKPIツリー

ブライダルビジネスのKPIツリー

各KPIをツリー構造で表現するとこうなります。

「売上が下がってきているからなんとかしろ!」
ブライダルの現場で働く方にとってはこういった漠然とした指示が上層部から突然飛んでくることもあるのではないでしょうか?

売上を上げるぞ!と目標を立てたとして、何も考えずに「広告を改善して集客を増やそう」「研修を実施して成約率を上げよう」「社長からの闘魂注入しよう」など、数値的な根拠に落とし込まれていない場当たり的な施策をたくさん実施しても根本的な改善にはつながりません。
まず、具体的に「いくら売上伸ばしたいか」を決め、そのために「どのKPI」を「何%伸ばせばいいのか」をきちんとシミュレートを行ってからそのための施策検討に入るべきであり、ブライダル業界(特に結婚式場を運営している会社)はこのロジックの積み上げが弱いと感じています。

例えば下記のような状況の式場が売上を10%伸ばしたいという目標を立てた場合について考えて見ます。

KPI 現在
反響 100
来館予約率 80%
来館予約数 80
来館率 80%
来館数 80
成約率 40%
成約数 32
組単価 400万円
売上 1.28億円

これを元にシミュレートします(広告宣伝費を変えられず反響数は固定の前提とします)。

KPI 現在 シミュレート 差異
反響 100 100
来館予約率 80% +2% 82%
来館予約数 80 82
来館率 80% +2% 82%
来館数 64 67
成約率 40% +2% 42%
成約数 26 28
組単価 400万円 +2% 408万円
売上 1.04億円 1.15億円 +0.1億円

このように「組単価」「成約率」「来館率」「来館予約率」をそれぞれ2%ずつアップさせると、最終的な売上は10%上がることがわかります。
次に、来館予約率を2%上げるためにはどうしたらいいだろうか?来館率を2%上げるためにどうしたらいいだろうか?というそれぞれのKPIをシミュレートした数値分、向上させる施策を検討していきます。
具体的な施策論やその有用性についてはこの記事では割愛しますが、このようなKPIごとの数値のシミュレートをきちんと行い、「どのKPI」を「どれくらい」伸ばせばいいのか、その前提認識を関係者でそろえておくことが重要です。

 

まとめ

今回の重要ポイントは3点です。

  • ユーザーの結婚式までの基本的な流れを理解する
  • 各フェーズごとの数値とそのKPIの共通認識を社内でそろえる
  • 表面化している数値的課題に対して、「どのKPI」を「どれだけ」改善すべきなにかのシミュレートをきちんとする

 

おわり

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