更新日 2018年09月27日

【保存版】明日から使える!結婚式場の予算の作り方

結婚式場の予算の作り方

結婚式場の経営者や運営者、または経営企画の担当者は毎年予算を作っていると思います。特に上場企業では予算と決算の公表が義務付けられていますし、株主期待を裏切らないためにも精度の高い予算策定が求められます。高い目標を掲げて気合と根性と営業力で押し通すような会社もありますが、本来予算とはその数値に基づいて一つ一つの意思決定がなされていく基準となる数値であり、サービス提供を受けるユーザーに対してはもちろん、働く社員や様々なステークホルダーに対して真摯に正確に作られるべきものだと思います。ただ、正確に作るにも意外と大変なのでどんぶりで作っている会社も多いようです。そこで、今回の記事では具体的な予算フォーマットを作りながら、結婚式場の予算を作るときのポイントについてまとめてみます(今回の記事の対象はPLすべてではなく売上予算まで、です。)。

予算を精度高く作ることの重要性

冒頭でも書きましたが、上場か非上場化を問わず、予算は正確に作られるべきものです。もし低すぎる予算数値を設定すると営業メンバーのモチベーションへ影響があるのでは?と危惧するようであれば、予算とは別に営業用の目標を設定すればいいだけの話なので、それが理由になるわけではないと思います。正確予算を策定できると、期中実績が予算数値(年度が始める前に予測していた数字)と大きくずれないので、以下のようなメリットがあります。

  • 業績予測を精度高く行えるので、利益コントロールをしやすい
  • 投資の意思決定のスピードが上がる
  • 予算の見直しにかかる工数を削減できる
  • 採用を計画通りに進めることができる
  • 借り入れの財務施策を精度高く実行できる
  • 社員の評価を精度高くに行うことができる

他にもまだまだありますが、当該年度内にどのような売上や利益になるかの先が見えていると、主に投資や採用(これも人件費投資ですが)の意思決定スピードを格段に上げることができるだけでなく、予算見直し校数も削減できるなどメリットが大きいのです。逆に高すぎる目標を掲げて実際は全然届かず、一年中予算の見直しをしながら現場メンバーの未達を上層部が詰めているような会社は非生産的な時間を多く過ごしていると言えるでしょう。
このように、予算策定は事業運営において非常に重要なタスクであり、予算の出来次第で事業運営をスムーズに行えるかが決まってくると言っても過言ではないでしょう。
 

ブライダルビジネスの特徴

具体的な予算作成方法に入る前に、少しだけブライダル業界の特徴についても触れておきます。

マーケットの極端な変動が起きにくい

正直に言って、今のブライダル業界は年々市場がシュリンクしています。今後、海外の方が日本で結婚式を挙げるインバウンド需要が爆発したり、結婚率や披露宴実施率が劇的に改善するような文化レベルでの革命(言いすぎ?)が起こらない限り、今後もこの傾向は変わらないでしょう。逆に言うと、アプリやIT系のサービスと比べると、ある程度市場の推移が予測しやすいので、ベースとなる数字を前年実績から作り始めても大きくずれないというのも特徴です。

売上計上が1顧客につき一度きり、かつリピートがない

結婚式は基本的に一度なので、リピートが発生しません。また、支払いのタイミングが申込時、半金、残金、当日と別れていたとしても、基本的に売上を計上するタイミングは施行日で一括計上なので、月会費や月額課金など継続率を考慮したLTVの考え方も意味がないです(互助会系などの大規模なところは正確にはこれに近いのかもしれませんが)。このあたりはリピート率が重要KPIとなるEC運営や月会費や月額課金が重要KPIとなる結婚相談所やアプリなどの予算作成・マーケティング戦略とは異なる点です。

契約から売上計上までの期間が長い

結婚式は申し込み(=契約)から売上計上(=施行)までかなり期間が長いです。平均で半年~8か月程度で、長いと1年以上という方もいるでしょう。そうすると、申し込みは今期だが売上計上は来期、または申し込みは前期だったが売上計上は今期、ということもよく起こります(というかそれが普通です)。あるデータでは、当期に成約したお客様数は当期の全施行の半分にも満たない、とも言われていますので、この時間軸を意識して予算を作成することが重要になります。
ブライダルビジネスの特徴
 

ブライダル業界の売上ロジックの整理

具体的な方法に入る前に、もう1つだけ、ロジック整理についても触れておきます。ブライダル業界で結婚式場の売上予算を組む場合は、よほどの事情がない限り売上目標を先に決めた逆算方式ではなく、集客予測や営業KPIの予測値を積み上げて作る積み上げ方式で作るべきだと思います。その場合、予算策定の土台となるのが売上を構成するKPIツリーのロジック整理です。簡単ですが、以下の図にまとめました。
ブライダル業界の売上ロジック

  • 売上=施行組数×組単価
  • 施行組数=来館数×成約率
  • 来館数=来館予約数×来館率
  • 単価=値引き前単価-値引

 

ブライダル業界の特徴にあった売上予算の作り方

前置きが長くなりましたが、ここから具体的な予算作成について書いていきます。今回はエクセルで予算表フォーマットを作りながら進めていきますので、もし興味があれば記事を参考に作ってみてください。なお、予算作成の大まかな流れは、ロジックに基づくフォーマットの作成→具体的な数値のシミュレート、となりますので、それに沿って書いていきます。

ロジックに基づいた予算フォーマットの構築(来館予約~成約)

毎月の成約数の数値を出すところまでのフォーマットを作ります。
結婚式場予算フォーマット(来館予約~成約)
まず枠組みですが、左列にKPI項目、上段の行に月を入れています(2019年4月~2020年3月までを決算期の予算を作る場合です)。それぞれのKPIの欄に入力している数値は以下の通りです。

  • 前年来館予約数:前年の来館予約獲得実績
  • 変化予測:市場のシュリンク度合いの変化、または前年と出稿を変更する場合の予測数値
  • トピック:変化予測の根拠メモ
  • 来館予約獲得数=前年来館予約数×(1-変化予測)
  • 来館率:前年実績をベースに今期で予測するKPI
  • 来館数=来館予約獲得数×来館率
  • 成約率:前年実績をベースに今期で予測するKPI
  • 成約数=来館数×成約率

この数値、数式を2019年4月セルから2020年3月セルまでコピペすると、各月の成約数の数値が出ます。

ロジックに基づいた予算フォーマットの構築(成約~施行組数)

次に、この成約数が何月の施行になるのかの部分です。
結婚式場予算フォーマット(成約~施行)
先ほど同様まず枠組みから説明します。一番左の列に成約月、次に成約組数、上段の行に施行月を入れています。それぞれの枠に入力している数値は以下の通りです。

  • ①当期開始時点の成約済み組数(水色セル):2019年4月開始時点で成約済みの組数を入力
  • 2019円4月~2020年3月までの受注予測(白色セル):毎月の成約組数を施行組数ごとに振り分けた数値を入力(ロジックは後述)
  • ②当期中の成約予定の組数(薄緑セル):2019円4月~2020年3月までの施行月ごとの成約組数の合計
  • ③当期の施行組数合計(①+②)(緑色セル):当期開始時点の組数と当期中に成約予定の組数の合計

上記の表はブライダル業界では「階段表」と呼ばれることが多いですが、成約~施行(=売上計上)までの期間が長い業界では比較的よく用いられる業績予測手法・ツールだと思います。人材紹介業などでもよく使われていますね。
階段表を用いて施行組数を計算するには、成約月ごとの施行月の分布割合のテーブルを先に組んでおく必要があります。
施行月別の分布テーブル
こんなイメージです。基本的に過去事績をベースに組めば大きくずれることはないでしょう。エクセル上では、このテーブルの割合数値と毎月の成約目標数を乗じて、施行月別の組数を計算しています。手入力で組数を入れているケースもあるようですが、手計算でやるには結構考えなければいけないことが多いので、機械的に(ロジカルに)計算式で組んでしまったほうがいいと思います。
ここまでできると、当期内の成約組数と、その成約組数を達成した場合の月別の施行組数まで出すことができます。続いて、これを売上の目標につなげていきます。

ロジックに基づいた予算フォーマットを作る(施行組数~売上)

最後に、売上予測を計算します。
結婚式場予算フォーマット(施行~売上)
同じく枠組みと項目からです。左列にKPI項目、上段の行に月を入れています。それぞれのKPIの欄に入力している数値は以下の通りです。

  • 申込平均人数:過去実績または既に成約済みの施行データをもとに算出
  • 値引き前組単価:申込条件やアイテムごとの平均単価をもとに一定のロジックに基づいて算出した予測単価を入力(ロジックは後述のリンク記事を参照)
  • 平均値引額:過去実績または既に成約済みの施行データをもとに算出
  • 組単価=値引き前単価-平均値引額
  • 施行組数:先ほどの階段表から数式でつなぐ

ここでキーになるのは、値引き前組単価を計算するロジックでしょう。この記事での詳細説明は割愛しますが「成約時の申込条件によって最終単価の予測は可能である」という考え方に基づいて計算しています。詳細ロジックについてはこちらの記事を参考に見てみてください。

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さて、ここまでで来館予約から売上までがつながったエクセルの予算フォーマットができました。あとは、このフォーマットを用いて具体的な数値をシミュレートしていきます。ちなみに、ここまですべて1枚のエクセルシートの中で数式でつながれています。
結婚式場予算フォーマット

予算フォーマットを用いて具体的な数値を入れる

フォーマットが出来上がったら、次は具体的な数値を決めていく段階に入ります。今回ご紹介したフォーマットを用いて予算作成をした場合、シミュレートをする上で調整可能なKPIは以下の通りです。

  • 変化予測:市場のシュリンク度合いの変化、または前年と出稿を変更する場合の予測数値
  • 来館率:前年実績をベースに今期で予測するKPI
  • 成約率:前年実績をベースに今期で予測するKPI
  • 2019円4月~2020年3月までの受注予測(白色セル):毎月の成約組数を施行組数ごとに振り分けた数値を入力(ロジックは後述)
  • 申込平均人数:過去実績または既に成約済みの施行データをもとに算出
  • 平均値引額:過去実績または既に成約済みの施行データをもとに算出

これだけ、です。「予算を作る!」となると大変そうだと構えてしまいますが、基礎となるフォーマットさえ作れてしまえば、これらの数値以外は考えなくていいと言ってもいいでしょう。当期実施する施策がこれらのKPIにどのようなインパクトを与えられるのかを試算し、それぞれのKPIの数値を調整してくのです。ちなみに、これらを別シートでKPIテーブルとして切り出し、数式でつないでおくと、シミュレートするときにそのシートだけ調整すればよくなるのでエクセルの使い勝手が格段に上がります。
施策とKPI数値のリンク、とは具体的には以下のような例です。

  • 【施策】広告宣伝費を前年比10%増やす→【数値】変化予測を予測値より8%高めに設定する
  • 【施策】来館予約業務を専門コールセンターに委託する→【数値】来館率を2%高めに設定する
  • 【施策】新規時に付与可能な値引き額を前期より10万円増やす→【数値】成約率を1%高めに設定し、平均値引額を10万円増やす(単価が10万円下がる)
  • 【施策】少人数向けプランの告知を前期より強化する→【数値】成約率を1%高めに設定し、申込平均人数を3名減らす(単価が7万円下がる)

他にも考えられる施策は山ほどありますが、達成したい数値にシミュレートを近づけていくときは必ず施策とセットで考えていくといいでしょう。社員をハワイ旅行に連れていくのでモチベーションが上がって成約率が5%アップする、みたいなのでも施策と言えば施策ですが、実現可能性は著しく低いと思います。このように、まずフォーマットをきちんと作成し、そのうえでKPIを調整し、実現可能性と、会社・会場として目指していきたい数字の整合性が取れるラインをシミュレートして予算を作成していくといいと思います。

もっと精緻に立てるなら加えたほうがいい項目

今回のフォーマットでは基本的な項目しか含みませんでしたが、実際に業務で予算を作る場合はこちらをベースに以下のような項目も追加してもいいと思います。

  • 資料請求からの来館予約数または来館数
  • 来館予約が確定した月と実際に来館する月までのリードタイムの考慮(平均1~2週間)
  • 施行月ごとのバンケット別の施行枠の稼働率予測
  • 二次会の受注組数予測と売上の追加

いきなりすべてを含んだフォーマットを作ろうとすると複雑になりすぎるので、基本となるフォーマットをしっかり固めてから項目追加していった方がスムーズに進められると思います。
また、規模の大きな会社で複数会場分の予算を一括で作る場合は、まず1会場分のフォーマットと予測数値を入れた状態まで作った後に、そのシートをコピーして複製し(Ctrlキーを押しながらドラッグするとシートごとコピーできます)、会場ごとにシートが分かれるように管理するといいでしょう(以下の図のように)。フォーマット自体が1つになるので更新や数値シミュレートがやりやすく、全社計での数値調整がしやすいためです。
結婚式場予算フォーマット(複数会場のやり方)
 

まとめ

今回の記事では基本的な事項しか紹介しませんでしたが、実際業務で予算を作成するときはもっと様々なKPIや実績を考慮しながら作ることが多いでしょう。ただ、ブライダル業界の場合の基本はしっかり押さえておかないと、毎年作るたびにフォーマットも変わってしまい連続性のある分析や施策が打ちにくくなってしまいます。いきなりしっかりとした予算を組むことは難しいとしても、まずは自分で手を動かして作ってみることが大事です。紹介した方法で作ってみたことをきっかけに、しっかり予算が作れるようになっていただけると嬉しいです。
※2019.03.07追記
今回の記事で紹介したエクセルのテンプレートは、以下のページからダウンロードできます。
>> 結婚式場の予算作成テンプレート ダウンロードページ <<
 
おわり

市川 貴之

この記事を書いた人
市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル業界で働く人のよりどころに」をビジョンに掲げ、ブライダルコンサルティング、ブライダル業界専門の転職支援サービスを運営しています。お仕事の依頼は「お問合せ」、転職のご相談は「ブライダル専門の転職相談」からお受けしております。

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