更新日 2021年09月20日

結婚式はECで売れるのか?その可能性を考えてみた

0102_結婚式はECで売れるのか?

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

今の結婚式場探しはゼクシィなどのサイトやインスタグラムで情報を集めて、気に入った式場の見学予約をし、実際に来館して接客を受け、納得したら申し込む、と言う流れが一般的ですが、EC化率も徐々に高まりを見せており、様々な商品がオンラインで売買されるようになってきています。

今回の記事では、結婚式というリアルな商品をECで販売することは可能か?について考えてみます。

 

「結婚式をECで売る」とは?

102_「結婚式をECで売る」とは

結婚式を完全オンラインで販売することを意味します。具体的には式場、日程、見積り等の詳細な契約までをウェブサイト上で行います。

  • 結婚式:国内、リゾ婚という実施エリア、ご祝儀婚、会費婚、挙式のみなどのスタイル問わずすべての結婚式
  • EC販売:インターネット上で契約(申し込み)までを完了すること、申し込み後に来店して打合せを実施するかどうかは問わず
  • 売り方:自社のサイトを使う、既存のプラットフォームで販売するなど方法は問わず

 

結婚式をEC(オンライン)で販売するときの想定フロー

102_結婚式をオンラインで販売する場合のフロー
  1. 式場、披露宴会場などの情報が掲載されたサイト
  2. 日程、値引き、人数、金額等の条件を指定
  3. 必要な場合はオンラインで相談できる窓口も用意
  4. 条件を指定し、サイト内のカートに追加
  5. オンラインで決済、規約への同意、購入完了

基本的に会場探しから条件指定、契約完了(購入完了)までをすべてオンラインで完結できるような流れを想定しています。ただ、完全オンラインだと難しいところもあるのでサポート部門も用意することが必要でしょう。

最近では携帯電話の契約もオンラインで完結でできますから、技術的には可能だと思っています。

 

結婚式のEC販売できた時の事業者のメリット

102_結婚式をEC販売できた時のメリット
  1. 新規プランナー(営業)がいらなくなるので、営業にかかる人件費を抑えられて安価で販売できる
  2. 事業拡大に必要な人的リソースを考慮しなくてよくなるので、事業展開スピードが上がる
  3. 自社でECサイトごと運営できれば現在の媒体依存モデルから脱却できる

オンラインで結婚式の受注までを完結できるとしたら、一番大きいのは人件費の抑制でしょう。今は新規と打合せの分業制を採用している企業の方が多いですから、極端な話ウエディングプランナーの人件費を半分にすることができます。

また、それと同時に打合せのオンライン化(スカイプなどでリモートでも打合せができる環境を整える、など)もできれば、事業拡大におけるリソース現地採用などの課題は解決すると思います。

さらに、ECサイトを自社で運営できればゼクシィやみんなのウェディングなどの媒体出稿メインの集客モデルから自社集客モデルに転換できることも大きなメリットとなります。

 

結婚式のEC販売できた時の事業者のデメリット

102_結婚式をEC販売できた時のデメリット
  1. 打合せの難易度が上がり、品質の担保が難しくなる
  2. 受注状況や施行枠の在庫管理をデータベース化することが必須になる
  3. ECサイト運営など、ECに特化した専門知識やスキルを用意する必要がある

対面型の接客に比べて手軽に申し込みができるようになるため、お客様が事前に知っている情報が減ります。そうするとトラブルは増える可能性が高くなるでしょう。ある程度は慣れの問題として解決できそうな気もしますが、約款の説明やキャンセル料の規定をどうするかなども課題になりそうです。

また、受注状況や施行枠の空き状況、プライシングにかかる条件などはすべてデータ化してリアルタイムにサイトに反映させることが必要になるので、この辺りの整備もしなければいけません。

さらに、完全内製ではないにしろ、少なくともECサイト運営のノウハウを持つ人材を採用・育成することは必要ですから、これまでのブライダル企業とは異なる環境を用意しなければいけません。そうすると、これまでの社員や社内風土との調整なども課題になりそうです。

 

もし結婚式をオンラインで売るとしたら必要になること

102_結婚式をECで売る場合に必要な施策

  1. サイトに集客する
  2. 商品ページへ遷移させる
  3. カートに入れる
  4. コンバージョンする

ECサイトの基本導線はこのようになるので、オンラインで販売する場合は、集客できて、サイト内を回遊して高い確率で商品ページへたどり着いて、気に入った商品を見つけてカートに入れやすくて、決済しやすいフォームであることが求められます。

まず、サイトに集客するためには、SEOとSNSが最も重要となるでしょう。ウェブ広告を駆使して集めるという手法も取れなくはないですが、大手媒体と闘わなければいけないので損益分岐のCPAを考えるとそれだけで帳尻を合わせるのは厳しいと思います。

また、結婚式はリピートしないのでとりあえず囲い込んでCRM系の施策で顧客を育成する、という手法の効果が期待できないのも難しいところです。基本は豊富な商品量とSEO対策を施したしっかりとしたサイト構成、コンテンツ制作が重要になります。

商品ページへの遷移は、サイトが使いやすいことを前提として、売物となるウエディングプランを豊富にそろえておくことが必要ですし、常に更新されていることも重要となるでしょう。また、カート、購入も同様にサイトの使いやすさは必須です。

文化的に超えなければならない壁

基本的なECで成功するための必要なポイントを押さえたうえで、さらにブライダル業界独自の超えなければいけない壁もあると思います。

  • 結婚式場の実物を見ないで契約する
  • プランナーと会わずに契約する

スタンダードな結婚式探しと上の2点が大きく違うところであり、どんな会場なのか見てみないとわからなくて不安、どんな人と結婚式をつくっていくのかわからなくて不安という心理を解決しなければいけません。これはなかなかハードルの高いことだと思います。

ただ異業種では、ライフネット生命が生命保険のインターネット販売を実現したり、これまで対面販売が一般的だったビジネスモデルのインターネットへの転換が起こっている事例もあるので、絶対に無理!ということでもないと思います。

ただ、圧倒的に安い結婚式→しかもクオリティは変わらない→なぜならば余分な人件費を削減しているから→なぜこのサービスを立ち上げたかと言うと~、といった、創業ストーリーとともにブランディング活動も並行して行うことが必要になると思います。

 

今後、結婚式のECは広がっていくのか?

ここまで書いておいてこの結論を書くのもどうかと思うのですが、あまり積極的に取り組む人は出てこないんじゃないかなと思います。どの領域のプレーヤーがやるかにもよりますが、

  • 利益率が高くない
  • その割に工数大きいしこれまでのノウハウとは全く別のノウハウが必要
  • うまく認知されてもリピートしないので顧客が積みあがらずECの重要KPIであるリピート率が使えない
  • 結論、儲かりにくい

というネガティブ要素満載なので、難しいんじゃないかなと思います。

既存の結婚式場運営企業が新規事業として立ち上げるケース

この場合、販売商品となる結婚式場をすでに持っているので、オンラインの仕組みだけ作ればいいのが強みですが、既存事業との摩擦が起こるのは必至ですし、どうやってオンラインの仕組みを作るかによって成功/失敗が決まると思います。

ベンチャーなどの新興企業が立ち上げるケース

ネットに強い会社やすでにECの実績を持っているところがビジネスモデルごとブライダル業界にインストールするスタイルになり、オンラインの勝ち方を知っているのが強みになります。

ただ、ネットは制圧できるかもしれませんが、リアルまだ考慮したオペレーションを作れるかどうか、法人開拓営業にパワーをかけられるかどうかが微妙なところで、そこまでのノウハウを持っている企業だと逆にブライダルに切り込んでくる理由があまりないと思います。

もし実現するとしたらどんなケース?

大手婚礼企業がECが強いのネットベンチャーを買収するか、ウエディングのリアルとECの作り方を知っている会社が熱意を持って攻めるか、のどちらかかなと思います。と言いながらあっさり切り替わるかもしれないですが…。

ただ、業界の不透明感に対する世間の風当たりは年々強くなってきていますし、よく言われる「中間マージンが入りまくっているから高い、ぼったくりだ!」みたいな意見を解決するために中間をすべて排除した結婚式の直取引ECサイトを作って従来価格の半分にしました!くらいまで謳えると一気に世論は味方につけそうですね。

 

結婚式のEC化についてまとめ

結婚式のECの可能性についてまとめました。後半は個人の意見として好きなこと書いてしまいましたが、難しいのは分かりつつEC販売がもっと一般化したほうが業界にとってもいいと思っています。選択肢が多い方がユーザーにとってはいいことですし、そこまでこだわらなくていいから安く簡単に済ませたいというニーズも一定ありますから、それに応えるためにも必要なのではないかなと思います。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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